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成分表から示すもの。

《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

東海林 鏡花(32)  パティシエ

東海林 弘樹(故人)  会社員 鏡花の夫

渡辺 マリエ(24)  パティシエ

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長

 同日 警視庁  午後2時  



 捜査本部の立ち上げと会議が終わり、徳永と高山は鑑識課の仕事場に来ていた。

 加藤は、パソコンの画面の表示を目で通しながら、遺留品の確認をしている徳永に言う。

「やれやれだ。管理官も頭抱えていたからな」

 徳永は高山と共に弘樹が遺した遺留品や所有品を空いている机に置いて、それを確認しながら反応した。

「ただでさえ、面倒な事件だからだろうね。それに凶器は持ってかれているし、何より、鑑識、頼みだろうからね。期待してるよ。係長さん」

 わざとらしい警部の反応に加藤は、嫌な顔をしていた。

「そのわざとらしい言動やめてくんねぇか?」

 高山は加藤に励ます形の言葉をかけた。

「まぁ、警部が頼りにしてくれているんですから、いいじゃないですか?」

 加藤はため息を吐く。

「ド新人に言われるなんてな……」

 高山は加藤の言葉を訂正した。

「ド新人じゃないですよ! 新人です」

 徳永は、五十歩百歩のやり取りをしている公務員2人に呆れて、右手親指で自分のこめかみを押して、思いやられるような軽い頭痛を抑えようしている。

「そろそろ手を動かしてくれないかな~2人とも……」

 加藤は元の作業に戻ってパソコンの表示を印刷し、プリンターから出た紙を徳永に手渡した。

「やれやれだよ。ほれ、それが現場で、発見されたあの砂の成分表だよ。意外なやつだぜ」

 徳永は丸眼鏡越しから成分表を凝らして見てみる。

 そこには細い字とパソコンがよく表現するワープロ型明朝体で事細かに成分について記載されていた。



   《成分表》

 

 たんぱく質 脂質 炭水化物 カルシウム 鉄


 レチノール ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンC ビタミンE


 食物繊維 ナトリウム 食塩 カリウム コレステロール 水分 糖分


 成分表から出された結果:チョコレート


 

     ――――――――――――



 徳永は、成分表の結果を見て、加藤の顔を凝視するが、加藤の顔は面倒くさそうにしているのがあからさまに見て取れる。

「チョコレートですか?」

 高山は眉間にしわを寄せて、確認した。

「そう。あの、微量な砂はチョコレートだとよ。最初は砂と思っていたのが、チョコレートだ。面白くなってきたな」

 成分表を、遺留品の箱の隣において、遺留品を再び探りながら訊く。

「被害者の胃については分からなかったのか?」

 加藤は顎をさすりながら、徳永に返した。

「検死報告と胃の内容量については、あっちに訊かないとわからんなぁ。ただ、お前が見つけた砂は、チョコレートだったって事!」

「なるほど」

 徳永は加藤の言葉を聞きながら、今度は、弘樹の情報が書かれた経歴と家族情報、個人情報がたっぷり詰まったリストをパラパラとめくり始める。




《被害者、家族情報、身辺情報》



 東海林 鏡花 洋菓子店ロイシェ オーナーパティシエ 

 6年前に被害者と結婚。しかし、現在、離婚調停中。 原因は弘樹の浮気によるもの。




 渡辺 マリエ 洋菓子店チューリップ 所属パティシエ

 弘樹の浮気相手、2年前から交際を開始、現在に至っているもよう




     ――――――――――――




 高山はリストの名前と遺留品から見つかった写真を見ていた。写真の内容は弘樹と隣に写っている女性の大自然を背景にしたツーショットの写真である。

 事件後にこれを見ると写っている女性に同情を傾けそうになったが、すぐに我に返って、仕事中の自分に戻った。

「警部、そのリスト見せてもらえませんか?」

「ん? いいよ。はい」

 徳永から手渡され、家族の情報から弘樹の妻、鏡花のページに入ると、高山の記憶の断片が大きな爆発を起こした。

「あ! この人、ちょっと前、テレビでやっていたお菓子コンテストで優勝を勝ち取った人ですよ!」

「へ~そうなの?」 

 車とは別に興味なさそうに徳永は答えた。数時間前のやりとりと全く逆の立場となっている。

「そういえば、この人、確か《チョコレートの魔術師》と呼ばれていて、チョコ菓子では誰にも負けないんですよ! この人のお菓子、一度食べてみたいなぁ~」

 高山巡査部長による女子トークが加藤、徳永の両名にはっきり感じる事ができ、加藤は2人のやり取りをため息つきながら聞いて、パソコンと対抗していった。

 下唇を左中指でなぞりながら徳永は考え、彼の頭に1つの考えがゆっくりと横を通過していく。

「チョコレートの魔術師か。高山君、この東海林 鏡花さんについて会いに行く必要があるね」

 高山はリストをしまい、丸眼鏡が職場の窓から映える日光で白く写っているのを目で見ながら訊いた。

「えっ!? 本当ですか?」

 彼女がちょっと喜んでいるのが徳永には容易に理解できた。

「ああ、行こうか。高山君。道、分かる?」

「え、ええ、一応は」

 徳永は遺留品の箱を元に戻して、加藤の職場を後にしていく。

「じゃあ行こうか。また来るよ。係長」

「おう、忙しい時に来るなよ! 暇な時に来てくれ」

 と加藤は返してパソコンの画面をずっと見ていた。

 高山は静かに軽く一礼して職場を後にして、警部の背中を追う。

「最初の、東海林 鏡花に対する聴取は誰が訊いたの?」

 高山は手帳をめくって、答えた。

「確か中丸さんと吉崎さんのコンビじゃなかったですかね?」

 高山の言葉を徳永はうんうんと軽く首を縦に降って反応し、呟く。

「あ~あの2人か。それなら多分、大丈夫だろうけど、念のため再度、訊いてみるかな。東海林鏡花に」

 2人は、エレベーターに向かって歩き、高山がボタンを押した。

「なにか思いついたんですか?」

 徳永はにっこり微笑んだ。

「いや。分からない。全くね」



第3話です! 今回も久しぶりの展開話でした。さて次回はどうなっていくのでしょう!! ではでは。次回をお楽しみに!

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