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情報整理!

《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

東海林 鏡花(32)  パティシエ

東海林 弘樹(故人)  会社員 鏡花の夫

渡辺 マリエ(24)  パティシエ

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長

 ― 徳永の車内 ―




 徳永と高山は再度、鏡花のいる店へと向かう為に車を走らせていた。

 彼女はその隣で車を運転している徳永に視線を向ける。

「警部。どうしてチョコレートを凶器に使ったんでしょうか?」

 ハンドルを回しながら徳永は答える。

「これあくまでで推測にすぎないが、彼女は凶器にあのトロフィーを使ったんだ」

「チョコレートですか!?」

 隣の巡査部長の驚きを隠せないのが運転しながらでも良く分かる。

「鏡花さんはおそらく事前に別荘に弘樹さんを呼んでおき、別荘で彼を殺したんだ。恐らくそうだろう。それに凶器の件もある」

「凶器ですか?」

「ああ。多分、君が食べたチョ……」

 徳永は鏡花がくれたプレゼントであるチョコレートを食べた高山を思い出し、話を止める。隣で反応を見た高山が気づいた。

「ま、まさか!? 私が食べたあの……あの……」

 彼女は、驚きを隠せなかった。

 それもそのはず、巡査部長が鏡花にもらったプレゼントに、凶器のトロフィーを溶かしたチョコが含んでいるなんて、気付きもしなかったから。

 徳永は苦笑いを助手席の女性に向けて見せ、自流の言い回しで落ち着かせる。

「君が食べたアレがそうだと思うよ。まぁ、害はないから大丈夫でしょ。おかげで僕の分が加藤が吹きかけてくれたルミノールでとんでもない色になってくれたから。良かったよ」

「そんな。そんなー!! 私、凶器を食べちゃったんですか!?」

 高山の落ち込み具合は半端ない。

 凶器を食べた刑事。色々と始末書がきそうな案件ではあると感じて、高山は頭を抱えた。そんな女性を置いて徳永は告げた。

「うん。そう。で、彼女はチョコレートのトロフィーを使って殴り殺したっていうのはどうだい?」

 警部に言葉を返されて、落ち込みと戸惑いに両方、襲われている巡査部長。次の発言をする言葉を探すが見つからない。

「どうって言われても」

「そうか。じゃあ、君はどう思うんだ? 犯行は? 誰が犯人だと思う?」

「犯人ですか? うーん」

 高山は口ごもっている。

 車内では静かな時間が流れている。2人の間では、沈黙が起きた。聞こえるのは、愛車の走行音とつけていたラジオのDJスピーチ。

 その車内の空気を破る様に再び、口を開いたのは、警部だった。

「じゃあ、もう1回最初から考えるけど、黙って聞いてくれ」

「はい」

 徳永はハンドルとアクセルを操作しながら、持論をもう一度、展開する。

「犯人は、弘樹さんを別荘に呼んで、背後から殴り殺した。床にはチョコの破片が落ちていた」

「ええ」

「ここで考えて欲しいのは、外部犯の犯行か? 内部犯の犯行か? この2つの選択肢から考えることができるのは、内部犯の犯行が高いだろうという事だ」

 巡査部長は黙って話を聞いている。徳永は続けて持論を言っていく。

「だって、そうだろう? 遺留品はあった。財布や携帯、全部だ。それに、外部犯なら、窓ガラスを割って侵入するし、痛いだって隠滅するだろうと思う」

 高山は「確かに……」と頷いた。

「それに、ご丁寧に犯人は、別荘の鍵を開けたまま帰った。もし仮に窓から入ったとするならそんなことしないで窓から出ていくだろう? でも、今回は窓も開くこともなく割ることもなく綺麗だった果たしてそんなに几帳面な強盗がいるかい?」

 車は信号につかまり、徳永は信号が青になるまで待っている。持論を展開し、その内容に触れた高山は納得している。

「なるほど。確かにそうですね」

「ただ、気にかかるのは凶器だよ。犯人はどうやって弘樹さんを撲殺し、隠滅したか? それが、今回のポイントだね」

「凶器ですか? 警部はチョコのトロフィーだと考えているんですか?」

「うん。そうだと思っているよ」

 高山は警部に向けて言った。

「でも無理があるでしょう。お菓子の材料であるチョコで出来たトロフィーが、人間の後頭部に強い衝撃を与える事ができるものなんでしょうか?」

 徳永はハンドルを回して、車を右折した。

 鏡花のいる家まで近くの所に着こうとしている。

「おそらくだが、チョコのトロフィー自体、彼女が仕込んだ何かしらの仕掛けがあるはず。それを証明するのは難しいけど、そのコーティングとして使ったチョコは見つけたじゃないか?」

 高山は気付き隣の男に向けて答えた。

「あ! もしかしてルミノールの?」

 徳永は笑顔で高山に告げる。

「ご名答」

 2人の乗った車は駐車場に入り、ゆっくりと駐車ペースへと止めた。刑事2人は、車から降りてドアを閉め、ゆっくりと鏡花の自宅へと向かって歩いていく。

 



 鏡花の自宅


 


 鏡花は徳永と高山の両名が自身に対する訪問が迫っている事は知らずに、ソファーで横になり、休んでいる。

 これまでの事件の行動を、省みて考えた。


 順調。ただそれだけ。それだけしか浮かばなかった。


 しかし、彼女には1人だけ厄介な相手がいる事を感じている。

 

 そう。その1人が警視庁の徳永。

 

 彼女自身、今まで刑事達と事の話をして、厄介な質問や外れたことを訊いてくるあの丸眼鏡の刑事にだけ危機感を覚えていた。

「あの徳永という刑事をどうにかしたいわ」

 鏡花はそう感じているが、これ以上罪を重ねていたとしても良い事はない。あの男を葬る事もできたし、後は、どうやって逃げ切っていくか。今後の生活についての方針を考えていく。

「海外に進出かー。それもアリかもしれないわね」

 軽い笑みをこぼしてソファーに体をあずけた。



 徳永との対峙まであと数分……。



第12話です。物語も大詰めになってきましたね。さぁ、次回の展開はどうなっていくのでしょうか!? 次回をお楽しみに!!

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