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追い詰めの鍵

《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

東海林 鏡花(32)  パティシエ

東海林 弘樹(故人)  会社員 鏡花の夫

渡辺 マリエ(24)  パティシエ

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長

 警視庁刑事部捜査一課



 鏡花の店から戻り、徳永は自分の椅子に座り、少し考え事をしている。

「う~ん」

 高山は今まであんまり見たことない光景を目の当たりしながらも訊いてみることにした。

「どうしたんですか? 警部?」

「いや、東海林 鏡花の事なんだけど、余裕な面持ちだった」

「具体的な証拠が出て無いからじゃないですか?」

「証拠ね~。状況証拠の塊だけじゃ、なんとも言えないよな。あ、加藤に渡したチョコレートは何処に?」

「あ、それならちゃんと鑑識のところにありますよ。ずーっと私の携帯からかけてくるんですから、うるさいったらありゃしないんですから……」

 そう言いながら高山は、自分のデスクに座り、溜まった書類をずらしながら、パソコンを開いて、業務をこなす。

 徳永は眼鏡を外して、目を覆うように両手を当てて考える。

「なぜあんなに余裕なんだろうか?」

 ちょっとの間、考えてみるが、答えは出そうにない。

 なぜあんなに東海林鏡花は余裕だったのか? なぜ凶器が見つからなかったのか? そして彼女が渡してきたプレゼント。

 これは一体何の意味があってのものなのか? 単純に食べてもらいたかったのか……それとも……

 鑑識に自分のチョコレートを取りに行くのを忘れていたのを徳永は思い出した。

「取りに行かないとな」

 彼は眼鏡を掛けなおし、鑑識に向かう。

「あっ、警部!? どこへ?」

「えっ? 加藤のところだよ。チョコレートを取りに……」

「分かりました。私も行きますよ」

 高山は席を立ち、徳永の後を追う。

「そう言えば、君、管理官に呼ばれたんだろう? どうしたんだい?」

「ああ、いえ。特に、嫌味でしたよ。警部に対しての。特に『なんとかならんのか?』とおっしゃっていましたよ管理官」

 その言葉を聞いても落ち込む素振りも見せず警部は適当に言葉を返した。

「あ、そう。それならいいんだけどね」

 徳永は、そのまま歩いて鑑識の職場へ足を運んでいく。





  警視庁鑑識課



 加藤は別の事件でできた証拠の指紋を採取している途中だった。

「もうちょっと……もうちょっと……よしよし! 出てきた出てきた!」

「お邪魔かな?」

 徳永と高山は鑑識の奥の遺留品置場で、一つの大きめのダンボール箱を取り出した。

 ダンボールの表面にマジックで記録されている。


 《2月21日 東京都別荘 被害者 東海林 弘樹》


 東海林弘樹の遺留品を確かめた。

 警部は、弘樹が持っていた携帯を取り出して再度、電話の着信やメールの履歴が残っているかを確認してみる。その隣で高山は別の所持品を確認していた。

 加藤は2人の仕事をよそ目に、指紋取りをしている。

「ああ、すぐ終わるからちょっと待ってろよ」

「お構いなく、そっちの仕事終わらせてからでいいよ」

 履歴には、仕事の同僚の連絡や上司、大学の友達やお店の連絡を取っていたのが理解できる。


 1件だけ除いて。


 徳永は首をかしげた。

「あれ? この電話番号?」

 電話番号の表示にどこか見覚えがあった。

「これ、東海林鏡花さんのじゃないですか?」

 日にちは2月の11日。

「これはもう一度、話を聞かないといけないかもね」

「ええ、みたいですね」

 加藤は指紋取りの作業を終えて、徳永のほうへ視線をやった。加藤は腕組みしながら立っている。

「で、お2人さんは来るのが遅いんだよ」

「立て込んでてな。お前に付き合っているほど暇じゃなかったんだ。すまないな」

「お前、今度助けてやらねぇからな。そんなこと言っていると」

 鑑識課長と警部の間の抗争を割って止める高山。

「まぁまぁ、抑えてくださいよ! ケンカするなら外でお願いします。逮捕しますから」

 警部は彼女の言葉を聞いて、眼鏡を外してレンズの埃をはらう。

「まぁ、すまない。ちょっと、イライラしていた」

「ああ、こっちも悪かったな」

 加藤も腕組みをやめ、自分の机の上に鎮座しているデスクトップパソコンの画面を確認する。

 徳永は丸眼鏡をかけた。

「それで、チョコレートは?」

 加藤は細い左人さし指で冷蔵庫のある方向へ指し示す。

「ああ、あれなら冷蔵庫の方に片付けた。そこにあるだろう?」

 徳永はゆっくりと冷蔵庫を開けて、チョコレートを取り出した。

「ああ、そういや、そのチョコレートにルミノールつけてみたんだが、面白いことにさ。見てくれよ」

 徳永はチョコレートを見てみると、確かにルミノールが血液含有反応を、分かる様にする特有の色が、チョコレートの表面に見られていた。

「これ?」

 巡査部長の言葉と同時に加藤は口で示した。

「ああ、血が入ってたってことだろうな」

「高山君。もし仮にだ、仮にだよ。君がもらったプレゼント覚えているかい?」

「え、ええ。少々、苦かったですけど、美味しかったですよ」

「仮にだけど、君がもらったプレゼントが凶器に使われたものだとしたら?」

「ええ!?」

 職場内に響く女性刑事の声。

 警部の耳には、高山の驚愕した声が響いていく。

「ああ、その可能性は高いだろうな。異常すぎる成分値だったしな。あのチョコ」

「いこう。高山君。彼女の犯行を暴く時だ。そのチョコ借りるぞ」

「おお、行ってこい行ってこい!」

 徳永はさっきまでの物思いにふける様な姿はしておらず、自信に満ちていた。

「ああ。今度こそ大丈夫だよ」

「あ、待ってくださいよ」

 また徳永の後を追って高山は、鑑識の職場から出ていった。


第11話 今回の話はいかがでしたでしょうか? さて、ちょっと更新までの時間が遅れてしまいました。


すいません!!


次回をお楽しみに!!



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