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チョコレートの魔術師


《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

東海林 鏡花(32)  パティシエ

東海林 弘樹(37)  会社員 鏡花の夫

渡辺 マリエ(24)  パティシエ

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長

 2月11日 久留嶋ホテル8階パーティ会場 海王の間 夜8時




 久留嶋ホテルでは、全国お菓子コンテストを海王の間で開かれている。

 全国お菓子コンテストは、認定されたパティシエがあらゆるデザートの材料を駆使して、一つの芸術作品を作り、高い芸術展を稼ぎ優勝を決めるというイベント。

 あるパティシエは、アイスクリームで南極の動物達を作ったり、また、あるパティシエは、ケーキで一枚絵を作り上げたり、飴細工で作品を作り上げたりする者がいた。その中で一番だったのが、冷凍した状態のチョコレートで彫刻を作り上げた東海林 鏡花だった。

 チョコレートの彫刻は、鉄のように硬い仕上がりであり、審査員が目で確認し、味わっている。

「ほぅ! これはまた素晴らしいですな」

 審査委員の一人が、鏡花の彫刻に魅了された。

「これがチョコレートの魔術師が織り成した技か! いや~想像以上に美しい!」

 鏡花は、審査員達に礼を言う。

「ありがとうございます」

 審査員長は、彫刻にすっかり魅了され、審査員を集めた。

「さて、審査員の皆さん別室でお集まりください。決定しましょう」

 参加者全員の作品に点数をつける会議を行う為に別室へと集まっていく。2、30分が経ち、別室から審査員達がぞろぞろと出てきている。

 東海林達、このコンテストに参加したパティシエ達が絶対に思ったであろう事は……




《結果が決まったか!?》であろう。




 報道陣、参加したパティシエ、そしてそれを応援してきた観客の目線が一気にパーティ会場に登壇した審査員長に向けた。

 ステージにあるマイクに審査員長は堂々としながら、白い紙を胸ポケットから取り出し、マイクに向けて声を出す。

「え~パティシエの皆さん、お疲れさまでした。どの作品も最高であり、順位を付けるには難しい大会でございました。ですが、決定いたしました。では、発表します。は……」

 審査員長の発表によってステージに上がるパティシエは決まっていった。銅賞、優秀賞、のパティシエは審査員長の口から呼ばれ、ステージへ登壇した。そして残すところは最優秀賞の栄冠。

 マイクを経由に、審査員長の口から発表された。

「最優秀賞は……東海林 鏡花さん! 《作品名 プレゼント》です! おめでとうございます」

 鏡花は自分の名前が呼ばれた事に驚き、反応するまでに数秒かかった。大会スタッフの呼びかけで我に戻り、早歩きでステージに登壇した。

 ステージで待っていたのは、審査員長だけでなく、報道陣のカメラフラッシュと鳴り止まぬ拍手。

 彼女自身、もう一生味わう事のできない喜びと感動を受けている。賞状とトロフィーを審査員長に手渡され、客席の方に向けるとしきりに報道陣のカメラのフラッシュで目が眩しくまともに見られなかった。

 審査員長は鏡花に向けて訊いた。

「東海林さん。今のお気持ちを!」

 鏡花はマイクスタンドの前に立ち、賞状とトロフィーを持ったまま、立っている数秒間、ちょっと黙っている。

「まずは、応援してくれた方々に感謝とお礼をありがとうございました。最後に一言だけ、チョコレートは冷やして食べてね!」

「ありがとうございました!! 東海林さんに大きな拍手をお願いします」

 拍手と白い光を放つフラッシュ音が鏡花を包み込んだ。




 久留嶋ホテル8階 選手控え室 東海林鏡花の控え室




 コンテストは終了し、既に片付けに入ろうとしていた。

「あとは、片付けね」

 鏡花はカバンから携帯を取り出し、電源を入れる。

 電源を入れた後で、画面表示に着信履歴の表示が電話機の表示と共に③と示していた。

 電話の相手は、《東海林弘樹》と示されており、鏡花はそれを見て、うんざりしている。

 そう彼女と弘樹は夫婦関係であり、現在、離婚調停中。離婚の理由は、同じパティシエである佐久間マリエと弘樹はよからぬ中だったそうで。

 鏡花が離婚を宣言し、離婚届という夫婦関係に終止符をうつ市役所へ叩きつける紙を弘樹の元に送っていた。印鑑とサインをしてから……

 鏡花はうんざりと怒りが混じりながらも携帯の通話ボタンを押し、弘樹に掛ける。

 20秒ほどして、男性の声が聞こえた。

『鏡花か?』

「もうあなたとはやっていくつもりもありませんし、今後、電話しないでほしいんです」

『待ってくれ! 頼む話を聞いてくれ』

 必死に止めようとなっている弘樹に少し鏡花は戸惑いながらも態度は変わらなかった。

「もう会いたくないの。分かる?」

 弘樹は鏡花の威圧感ある言葉が心を刺しにかかってくるが、彼は引き下がろうとしない。

『もう少しよく話したいんだよ! 頼むよ! そうだ。お前の時間に合わせるから話そう』

「でも、困るの」

『わかっているよ。でも話したい事があるんだよ。なぁ、頼むよ……』

 押しの強い弘樹の言葉に嫌気が差したのか。鏡花は1つの提案を弘樹に提示した。

「わかったわ。ただし、こっちからも提案があるの」

『ありがとう!』

 鏡花は弘樹の言葉の後で提案を告げる。

「2月14日の午後1時に別荘で話したいの」

『分かった! 必ず行くよ』

 弘樹はそう言った。そのあとで鏡花はなんの躊躇いもなく、電源ボタンを押して、通話を切った。

「何が『必ず行くよ』よ……」

 彼女は心で重苦しい何かが漂い始め、次第に怒りへと駆り立てていった。




 2月14日 東京都内、東海林家別荘 午後1時




 鏡花は白のワゴン車で移動し、夫婦時代に購入した別荘へ向かいながら彼女は、あの時は良かったなと後悔している。

 車は勢いよく走り、20分もすれば別荘に到着していた。

「やっと着いたわ」

 鏡花は運転席から降り、トランクから大きめのクーラーボックスを取り、紐を肩にかけて持ち上げた。彼女は歩きながら別荘の駐車場に1台、鏡花の車とは対照的に色が黒のスポーツカーが置かれているのに気づく。

 軽く目で見て、弘樹が既に到着しているのを確認し、鏡花は玄関まで歩いた。

 2人で買った別荘。懐かしい雰囲気が出ていたのを感じるが、鏡花はそんな過去の思い出など断ち切った。

 インターホンを押し、誰かが出てくるのを確認している。

 別荘の中から男性の人影がドア越しのすりガラスから見え、ドアが開いた。

「待ってたよ。さぁ、入ってくれよ」

『ええ』

 弘樹がドアを開け、鏡花は中に入ってそのまま奥のリビングへと進んでいく。別荘の中は綺麗に掃除されて、埃や汚れを感じさせない。

 彼女はクーラーボックスをフローリングの床に置いて、リビングと玄関の廊下につながるドアの横にずらし、その後で、鏡花はゆっくりとソファーに近づき、座った。

 弘樹は玄関のドアを閉め、鍵をかけ、リビングに入る。

「呼び出してすまなかったな」

 もはや弘樹を他人という扱いを考えていた鏡花は敬語で話し始めた。

「気にしないでください。で、話はなんでしょうか?」

 弘樹は対面に座り、鏡花の言い方を耳にして、重く感じ、苦い顔をしている。

「そんな言い方やめてくれよ。まだ夫婦だろ?」

「あなたを夫とは思っていないですし、あかの他人だと思っています。正直、迷惑なんです」

 鏡花は思いのままに弘樹に告げた。弘樹は己の反省をしている事を告げる。

 弘樹はソファーから横のフローリングに膝をつけた。

「すまなかった。この通りだ!」

 ひたすら、弘樹は彼女に謝った。数分、顔も上げず、鏡花に向けてフローリングの床に頭をつけて何度も詫びる。

 ひたすら頭を床につけて詫びる弘樹を見て、鏡花の心は苦しくなり、一言告げた。

「もう。やめて!」

 彼女は弘樹に向けて言う。

「分かったわ。あなたを許すわ」

「本当か!?」

「あなたに負けたわ」

 鏡花は立ち上がり、持ってきていた冷たい箱の蓋を開けて大量の氷に包まれた細いものを取り出した。

 弘樹は安堵し、鏡花が座っていたソファーに座って、落ち着いている。

「ありがとう。ありがとう……」

 鏡花はゆっくりと弘樹の背後に近づいて、クーラーボックスに入れていた物を思い切り、弘樹の頭に思い切って振り、頭に直撃させた。

 一瞬の瞬間、弘樹は自分の身に何が起きたのか理解できず、そのまま床へと倒れていき、目をつぶる。倒れた弘樹の頭からゆっくりと赤く、赤く、綺麗な色をした液体が滴り流れていく。綺麗な茶色の床を綺麗な赤色で混ざり、染まっていこうとしている。

 鏡花は、我に返り、倒れた弘樹を見つめている。彼女自身、直撃させた瞬間、重苦しい心の中に快感という重苦しいものと違った癒しを感じた。

「許すわけないじゃない! 私はあなたを愛していたのに……死んで当然だわ」

 弘樹の呼吸する音と動きがないのを確認した鏡花は、ゆっくりと物を元のクーラーボックスにしまい、踵を返し、ゆっくりと歩いて玄関へと向かう。

 あの刑事が帰ってきた。というわけで物語がスタートになります。


お久しぶりでございます。

下手くそな文章超展開はご了承くださいませ~

話は続きますよ~!!

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