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美女と害虫 ~妄想の輪舞曲~




「斉藤さん斉藤さん、いまお話いいですか?」


『どうかしらねぇ。できればやめてほしいかも』


「あのですね、僕は愛しい愛しい斉藤さんに結婚を申し込みたいと思ってます。いいですか?」


『さらっとシカトがデフォルトなあなたに最大の殺意を』


「そんな憎まれ口を感情たっぷりに言い下す斉藤さんに婚約指輪を」


『やめてよ。あなたもそろそろ自分の思考を本気で疑ったほうがいいわ。私はあなたとは絶対に結婚できないの。わかるかしら?』


「非常に良く」


『わかって言ってたのかよ』


「もちろんです。斉藤さんは僕の妄想の産物、いわば幻覚ですよね。僕には斉藤さんの存在が感じ取れる。姿かたちも、声もはっきりと認識できる。でも、他の人はまったく斉藤さんを感じることができない。……けど、考えてもみてください」


『なにを?』


「要するに斉藤さんは、僕だけの斉藤さんです」


『とってもタフでポジティブなあなたに鳥肌が総出で発生したのであった』


「そんなに感動してくれたんですか?」


『俗に言うドン引きというやつ』


「なんでですか。僕の斉藤さんへの愛情を理解してくれないんですか?」


『むしろ理解して。あなたは世間から見たらサイコホラー級の精神異常患者だと理解して』


「けど、じゃあ斉藤さんはなんで僕の前に現れたんです? 僕に恋心を植えつけた斉藤さんにはそれを説明する義務があります」


『おかしくない? むしろいきなりあなたの妄想上に召喚されてねちっこい恋心を延々とぶつけられる私のほうが被害者チックじゃないかしら?』


「はやくしてください。僕は斉藤さんがきちんと説明してくれるまで求婚をやめません」


『拗ねないでよ拗ね文句も思いっきり気持ち悪いから。……そうねぇ。なら、ここはあなたの自分探しに付き合ってあげましょうか』


「自分探し? そんなものになんの意味が?」


『ハイではまずあなたのプロフィールからいきましょうか。琥珀輝久こはくてるひさくん28歳独身無職の社会のクズ、と』


「意外と斉藤さんもさらっとシカトがデフォルトでちょっぴり傷ついた僕であった」


『傷ついたところが無視されたところだけなことがお姉さんは心配でたまらないわ』


「心配いりません。僕は女の子から貶められることで快楽指数にギアがかかるんです。つまり斉藤さんは僕の好みどストライク」


『おまわりさーん、助けてー』


「しかもしかも、斉藤さん背も低くて顔もお尻も小さくてとっても可愛くて、もう僕のエクスタシーを存分に増幅させてくれるわけですよ」


『おまわりさーんっ、マジで本格的に助けて!』


「女神のようなあなたに泥酔です。おっぱいもつるぺたでほんとたまらなくって……」


『あぁん? いまなんつった?』


「いえ、だからまな板のようなそのお胸が美しいなと……」


『うるせぇなコラしばくぞクソガキ』


「さ、斉藤さん。さっきとトーンが違ってるみたいですけど」


『胸には触れんなって何回も言ってるだろがゴミクズが。人のコンプレックスにずけずけと突っ込んでくるんじゃねぇ』


「そんな、すごくいいのに……」


『んな少数派なフェティシズムに求められたくらいで緩和されるほど柔な悩みじゃねんだよこっちは』


「おっぱいも膨らまず柔らかくないだけに?」


『あ?』


「ごっ、ごめんなさい! ……でもほら、少なくとも僕は斉藤さんの胸、好きですよ?」


『…………………………………………そ、……そうなの……?』


「えー、斉藤さん扱いやすすぎるよう」


『う、うるさいわね! ちょっとだけ嬉しかったのよ!』


「ぺったんぺったんつるぺったん」


『幼女、幼女、つるぺた幼女、って歌わすな!』


「乙女な斉藤さんも素敵です。結婚しましょう」


『絶対にしません。ていうか、話が脇道に逸れすぎてたわ、戻しましょう。あなたは人生で異性と交際したことがない。正しいわね?』


「痛いところを突いてきますね……」


『どうなのよ。正しいの? 正しくないの?』


「まぁ、概ね正解ですかね」


『概ね? なによ、少しでも彼女がいたことあるの?』


「斉藤さんが彼女、なんちて!」


『…………………………………………………………………………』


「……すみませんでした。次に行ってください」


『そうするわ。次に、あなたには異常なほどの妄想癖がある。正か否か』


「斉藤さんの存在が論より証拠じゃないですか?」


『そうね、愚問だったわ。最後に一つ。あなたには異性と付き合いたい……いえ、もはや異性を掌握して自分のものにしたい欲望、欲求がある。○か×か』


「なんか、そんな言い方されると僕が害虫みたいですね」


『みたいじゃなくて、まさしく害虫なのよ、あなたは。そしてその腐りきった性根が私という幻覚を生み出したわけ。理解した?』


「言いたいことはわかりました。でも、そんなことどうでもよくないですか?」


『どうして?』


「だって、僕はたぶん今後自分の部屋から出ることなんてトイレに行くときくらいしかないですし、自分を変えるつもりも毛頭皆無です。そして欲しくて欲しくてたまらなかった僕だけの女の子だって、斉藤さんがいることで達成されてます。もう僕の人生はお花畑です。過去を振り返ることに意味などありません」


『いいえ、あるわ。こうして説明義務を果たしたことで私があなたの求婚攻撃から免れられる』


「しまった問題ありまくりじゃねぇか! どうしようどうしよう!」


『いやもう本気で動揺してるあなたをどうしよう。放っといていい?』


「婚約指輪だってちゃんと用意したんですよ!?」


『はぁっ!? ろくすっぽ部屋から出ないクセにどうやって手に入れたのよ!?』


「Amazonで取り寄せたんですよ! ほら!」


『うえぇっ、ほんとに用意してある! 働いてもないのにどうしてそんなもの買えたのよ!』


「親の金に決まってるじゃないですか!」


『もう目も当てられないクズだよ! てかそんな大切なものネット通販で済ますなよ!』


「だってお外怖いんだものー! ていうか斉藤さん僕と結婚してよー! お願いー!」


『ちょっと近寄ってこないでよ! あと荒い鼻息と鼻水だらけの顔とワキワキと動かしている指を直しなさい! 気持ち悪すぎて耐えられないから! 地球外生物と同じ部屋にいるみたいでほんと辟易する!』


「好きだーッ、斉藤さーん! 大好きだーッ!!」


『いやああああああああっ!! 誰か助けてえええええええええええっ!!』








                                     了

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