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幸せの代償は  作者: 藍霞
1/1

【1】

「―――お別れ、だね」


 その一言で、彼の表情は強張った。そして、しばしの沈黙が流れる。


 …私は耐えきれなくなって、彼とは反対の方向を向いた。そこには窓があって、街の様子が伺える。


 街は今日もたくさんの人で賑わっていた。まるでこの病室とは正反対だ。


「…恵理」


 彼の声が聞こえたけど、私は振り向かなかった。


「お願いだから、出ていって。…他人でしょ?」


「俺は…!」


 座っていた彼は思い切り立ち上がると、私の手を握った。


「っ…」


「…俺はまだ、他人じゃないと思ってる。実はそんなこと言って、俺の心配ばっかしてんだろ?」


「…ばか。あなたのそんなプラス思考も、眩しい笑顔も全部全部―――嫌いだよ」


「またそうやって墓穴ほってる」


 …彼の言う通りだった。


 本当は全部反対で、彼が大好き。でも、私にはもう時間がないから、あなたを幸せに出来ないから。


 いつの間にか、私は俯いていた。頬に、何か暖かいものが流れている。


「…恵理。お願いだからこっち向いて?」


「…変な顔してるから嫌だ」


「そう言うと思った」


 彼は急に私の顔を覗きこむと、いつものように笑った。それで余計に、私は悲しくなる。


 ―――私はもう、この顔を見ることは無いんだ。


「なーんだ、いつもの綺麗で可愛い恵理の顔じゃん。でも俺は、笑ってる顔の方が好きだけどなー?」


「…ふふっ、何言ってるの? 綾斗のクセに」


「よっしゃ笑ったな? 俺の勝ちだな!」


 何の勝負をしていたのかは分からないけど、どうやら私は負けたらしい。


「意味が分からない…」


 ボソリと呟いた私に、綾斗は満面の笑みのまま、私の涙を拭った。


「恵理…勝ったご褒美に、俺の願いごと聞いてよ」


「またお願いするの? 今度は何…」






 …彼の口から出た言葉。


 それを私は、信じることが出来なかった。

誤字やその他もろもろ、報告を下さったら嬉しいです(^^)

しょっぱなから終わり方を迷っている始末…orz

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