修行開始!
「とにかく、お前も能力者の仲間入りだ。良かったな、生きてて」
「は? 悪いけど、俺は兄貴のパンチ一発じゃ死なないぞ」
いや、もし兄貴が本気でパンチを放ってきたら、下手を打つと死ぬかもしれないな。
「いやいや、さっきの拳撃ではなくデットのことだ」 兄貴は縁側に座り、俺の腹を指差す。
「おい、どういう意味だよ」
「死ぬんだよ。デットを受け入れる器が無ければな」 兄貴は俺に首のうなじ部分にあるデットを見せてきた。何故そんなところにデットをつけたのか知りたいものだ。
「ちょい待ち。そういうのはデットつける前に言うもんじゃないのか?」
「……今度は能力の使い方だな。どんどん仕込んでやろう」
「無視すんなぁ!」
俺はとりあえず、殴りかかりたい衝動を抑えておくことにした。
――せめて、能力を覚えてからにしよう。兄貴に対抗できる可能性を少しでも上げるために。
「あまり騒ぐな。これからの為に体力は少しでも残しておくことだ。それに無視したのは、答える必要性が無いからだ。この私の弟に、能力者としての器が無いなど有り得んからな」
この凄まじいまでの自信に文句をつけたくなるが、実力に伴った自信には言葉も出ない。
俺は一つため息をつき、
「わかったよ。じゃあその弟に修行を施してくださいよ」
兄貴を見据えた。
「よし、始めよう。まあ、むしろこれからの修行で死ぬ可能性の方が高いくらいだがな」
この馬鹿兄貴はさらっととんでもないことを言いやがる。
――俺のせっかくの決心がメトロノームのように揺らいでしまった。
ここでお話はちょっとした区切りです。次回より修行後まで話が飛びます。楽しんでいただければ幸いです。