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予想外!!

ガラガ大蜘蛛を倒したティオたち。果たして少年の家族は無事なのか!

森は花や草、動物、土などたくさんの匂いが溢れている。

人間のティオでも言葉に出来ない匂いが鼻をつく。

けれど、レビは僅かに残る人間の匂いをかぎ分け、迷うことなくその元を目指して走る。


ティオは改めて、動物の身体能力の高さに驚き、羨んだ。

もし、自分も身体能力が高かったら、みんなの邪魔にならないかも……。だが、今はそんなことを考えている場合じゃない。

ティオは今の現実に意識を戻した。


この辺りのガラガ大蜘蛛は捕らえた獲物を他より一際大きな木に吊るすらしい。

「レビ、匂いは近くなってる?」

試しに聞いてみれば、レビはそうだと自信ありげに吠える。

ティオはまた不意打ちを食らわないように、周囲を警戒することを忘れない。

「よし、どうか間に合ってくれよ……!」

ティオは神に祈る思いで小さな声で呟いた。


あれから走り続けて、すぐに目的の木に辿り着くことができた。

そこにはガラガ大蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされたーー恐らくは少年の家族だろうーー男女3人と、彼らに銃を突き付けるアイアン・ドールとアイアン・パペットがいた。

ティオはアイアン・ドールの背中が見えた瞬間に地面に伏せた。

(え、なんで? なんでアイアン・ドールがいるの!?)

レビがどうしたんだと腕に鼻を擦り付けてくるが、ティオはうるさく鳴る心臓の音を押さえようと胸に手を当てる。

幸い、2体とも3人を見ているためにティオに気づいていない。


どうにか不意を突ければなんとかなるかもしれない。

ティオは恐る恐る顔を上げて様子を伺う。


まず、少年の家族。

父親は痩せた小柄な男で、体に浅い傷がいくつも出来ている。

母親は父親と反対にふくよかな体型をしているが、目の前の魔物を前に怯えて縮こまっている。

最後に10歳にも満たない女の子は目を閉じてぐったりしている。

この状況に耐えきれなくて気を失ったんだろうか。


次に魔物たちを見る。

アイアン・ドールは片手斧と盾を持ち、アイアン・パペットは小銃を家族に突き付けている。


「頼む! 家族は逃がしてくれ!

お、おまえたちの目的は私だけだろ!」

父親が魔物たちに叫んでいるが、2体の魔物は聞こうともしない。

「家族はか、関係ない!

私だけ行けばいいだろ!」

「き、イリアは? イリアはどうしたんです!?」

そこへ母親も前に出て叫ぶ。

「あの子を残していけないわ!

この人になにをやらせるのか知らないけど、まずはあの子を連れてきなさい!」

「おまえは黙っていなさい! イリアとキノを連れて街に逃げるんだ!」

父親と母親が叫んでいる間も、魔物たちは微塵も動こうとしない。


そこでティオは思った。

アイアン・ドールたちはガラガ大蜘蛛がイリアを連れてくるのを待ってるんじゃないか?

ゆっくり、視線を走らせて周囲の地形を把握して考える。

「よし、レビ。さっきの大技、もう1回撃てる?」

試しに尋ねてみれば、とりあえず静かにしなければいけないと理解しているレビは吠えずに鼻をティオの腕に擦り付ける。

「よし、それじゃあ、こっちに来て……」

音をたてないように茂みに気を付けながら、静かに移動し始めた。


2匹の魔物は人間たちが騒ぐのに構わず、自分の役割を果たす。

アイアン・ドールは人間たちの回りをゆっくり回りながら、彼らの逃亡を防ぐ。

アイアン・パペットはその場から動かず、小銃を構えて周囲を見張っている。

周囲に動きがあるたびに小銃を向け、なにもないと判断したら銃を降ろす。


ティオはまず、アイアン・パペットから倒そうと、家族に害が及ばないようにレビを誘導する。

幸い、アイアン・パペットは一歩離れた位置にいるため狙うのは難しくない。

「レビ、あいつを狙うんだよ」

ティオがアイアン・パペットを指差せば、さっそくレビは口先に電気を集める。


その時、ティオはその時に初めて、大事な事を忘れていたことに気づいた。

電気が集まる音が派手な音をたてる。

電気が弾ける音は魔物たちにも聞こえた。


レビが今さら気付いても遅いと、構わずに電気の球体を撃つ。

球体は真っ直ぐにアイアン・パペット目掛けて撃ち出された。

アイアン・ドールがアイアン・パペットを押し退けて球体を盾で受け止める。

ガラガ大蜘蛛を1撃で黒焦げにした球体はアイアン・ドールの翳した盾に阻まれて弾けた。

だが、その破壊力を完全に押さえることはできなかったようだ。

盾は焦げてひしゃげ、アイアン・ドール自身も受け止めきれずに尻餅をついた。

「くそ、失敗した!」

ティオは立ち上がってアイアン・パペットに肉薄する。


アイアン・パペットはどっちを狙うか、一瞬の迷いもなく銃口をティオに向ける。

一撃必殺の銃弾が飛び出す穴を向けられてティオの心臓が大きく撥ねたが、構わずに剣を手に前へ踏み出す。

「うぁああ――ッ!」

あと少し、ティオは叫んで剣を振り上げた。

彼の横をレビが走りぬき、アイアン・パペットの腕に噛みつく。

レビが噛みついた衝撃で引き金に駆けていた指に力が入った。

火薬が炸裂して銃弾が撃ち出される。

噛みついたレビの体重を支えられずにアイアン・パペットの腕が下がったが、銃弾が外れるにはあまりにもティオは近すぎた。

銃弾がティオの腹部に食い込み、内臓を掻きまわしながら背中から突き抜けた。


「……ッ!?」

ティオは血を吐いて前のめりに倒れた。


友が倒れたことに驚いたレビがアイアン・パペットの腕を離して駆け寄ろうとしたが、地面に着地した瞬間に腹を蹴られて木に叩きつけられた。

「キャアア!」

「そんな……!?」

父親はなにが起きたのかわからないまま、目の前で倒れたティオを呆然と見つめ、母親は悲鳴を上げて顔を隠す。


アイアン・パペットは人間に止めを刺そうと小銃に銃剣をつけて近づく。


レビが吠えて飛びかかろうとするが、アイアン・ドールが前に立ちはだかる。

ひしゃげた盾と斧を構え、レビが自分を無視すれば容赦なく斬る構えだ。

レビは唸りを上げて威嚇をするが、アイアン・ドールは飽くまで迎え撃つ構えだ。


アイアン・パペットはティオの脳天を刺そうと小銃を振り上げーー両足を切断されて崩れるように倒れた。


起き上がったティオは顔と胸を血で染めながらアイアン・パペットの顔を掴む。

アイアン・パペットもやられまいと背中を仰け反らした姿勢からティオの頭を殴り付ける。

額が切れ、鼻からも血が流れるが、ティオは剣をアイアン・パペットの頭に突き立てた。

だが、コアを壊すことはできなかった。

顔を守る鉄仮面を壊されながらも手を伸ばしてティオの剣を握る腕を、もう片方の手で喉を掴む。

そのままティオを窒息、いや、首の骨を折ろうと手に力を込める。

「こ、の……!」

呼吸ができず、痛みも相まって意識が遠のきそうになるが、残っていた左手でアイアン・パペットの兜に触れる。

「ファイア・ボール……!」

掌で小さな火の玉が弾ける。

アイアン・パペットの兜が火に包まれ、中のコアごと丸焼きにした。

頭を無くしたアイアン・パペットの体が砕け散り、黒い煙となって消えた。


レビと対峙していたアイアン・ドールが何が起きたのかと顔だけティオに向ける。

「どうだ、僕だって、戦えるんだ……!」

ティオは息も絶え絶えに、なんとかアイアン・ドールに笑って見せた。

まずはアイアン・パペットを撃破! だが、アイアン・ドールは倒せるのだろうか!

無理だな!!(おい

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