ガルガ蜘蛛退治
いつも通りの冒険稼業に戻ります
町長は市民を安心させるために街の護りを固めた。
その内の1つが街の出入りをする馬車や人間の確認。
武器の持ち込みを禁止することはできないが、街中での抜刀をした場合は逮捕。
また、馬車の中を調べて違法、怪しい物がないか調べる。
そのために門の前で馬車や旅人が列を成すようになったが、彼らもしょうがないと諦めている。
幸いにも並んでいた人間が少なかったために、ティオたちの出番はすぐに来た。
「討伐のために外に出るから、受け付けお願いしまーす」
ティオが衛兵に依頼書を渡す。
「大蜘蛛の討伐か。毒の牙に噛みつかれないように気を付けるんだぞ」
もう、何回も顔を合わしている衛兵は親のように注意をしながら、ギルドの手続きがちゃんと行われているか確かめて、印を押して引き出しにしまう。
「わかってるって、俺たちだって冒険者っすよ」
「馬鹿野郎、そういう奴が痛い目に会うんだよ」
衛兵が顔を顰めて叱っても、アゾルはまともに話を聞こうとせずに口を尖らして拗ねる。
「そんな怒らなくてもいいじゃないっすかー」
「おまえみたいなのを見ていたら注意もしたくなるわ。
まったく、こいつの面倒、ちゃんと見てくれよ?」
「ええ、わかりました」
自分より年が高いアゾルが子供じみていることに、ティオは笑いを漏らす。
「なんだよ、なんで笑うんだよ!」
「だって、アゾル子供みたいなんだもん」
「うっさいっすよ! ティオのほうが子供なんだからな!」
ティオが思ったことをそのまま口にしてしまうと、アゾルはプイッと顔をそむけた。
「ふふ、処理は終わったぞ。気を付けていくんだな」
「うん、わかった」
受付を終えたティオは、未だにむくれているアゾルを引っ張っていった。
アラノ森に向かう間、ティオとアゾルの話題は街でも持ちきりになっている魔物の襲撃に関してだった。
「本当にさ、魔物と戦争が始まるんすかね。街じゃその話題でいっぱいじゃん。
でも、俺には信じられないっすよ」
「僕も信じられないや。魔物と戦争するなんてね……」
ティオは空を見上げて呟く。
実際に宣誓布告するのを聞いたけれど、とても信じられない話だ。
「ま、戦争になったら俺も戦うっすよ! 魔物の10体、20体倒して名前を上げるっす!」「うーん、戦争かぁ……」
やる気満々なアゾルに対して、ティオは他人事のように呟く。ティオの曖昧な返答にアゾルは首を傾げる。
「どうしたんすか。ティオも戦うっすよね?」
「いや、僕が戦えるのかなって思ってさ……」
ティオはそう言って自嘲気味に笑う。
まだ冒険者になってから日が浅いけれど、たくさんのモンスターと戦った。
戦って経験を積んで、腕が上がったし魔法を覚えた。
けど、それが自信に繋がる訳じゃない。
逆にティオは自信を無くしかけていた。
たぶん、自分が戦争に行ってもなにもできない。
自分を嘲る気持ちを紛らわすように、そばに寄るレビの頭を撫でる。
「なに行ってんすか。モンスター退治は冒険者の仕事っすよ!」
「そ、そりゃそうだけどさ……」
「自信がないんだったら今からバンバン戦って強くなればいいんすよ!」
「う、うん、わかった」
勢いよく話してくるアゾルに押されながら、ティオは頷く。
「それじゃ、強くなるために蜘蛛退治するっす!」
アゾルは拳を空に突き出して、1人やる気を出していた。
ティオはその様子につい笑みをこぼしながら、自分も気持ちを切り替えて剣の柄に手を置いた。
アラノ森に入れば、青々とした木が日射を防いでくれる。
ティオは地図を広げながら、今の位置と目的地を確認する。
「蜘蛛が確認されたのはもって東のほうだね」
地図に書き込んだガラガ大蜘蛛の目撃場所は高い木々がまばらに生えている場所で、そばに川が穏やかに流れている。
水を飲みに来た動物を捕食するためにここで糸を張り巡らしている。
ガルガ蜘蛛事態は脅威じゃないが、この糸が厄介である。
大型の動物すら捉える強靭な糸。
それに絡まれば冒険者は特殊なアイテムを使わなければ抜け出すことは難しい。
「ティオ、うっかりして糸に引っかかるなよ?」
「僕はそんなドジ踏まないよ!」
アゾルのからかいにティオが憤慨した振りをしていると、急にレビが吠えだした。
「どうしたの――!? アゾル!」
レビが吠えたてるほうを見たティオは顔を青くして叫んだ。
アゾルもレビが吠えていた原因を見て体を固まらしていたが、すぐにナイフを抜いて駆けだした。
彼らの先には、糸で胴体を縛り付けられた少年が蜘蛛に引きずられて森の奥へと消えていこうとしていた。
これからは少しでも主人公が強くなれるように書いていきます。
このままじゃ、ティオがどこかのガンダム主人公になってしまう!(・Д・;)