乱戦
遅くなってごめんなさい。
仕事が大変だけど更新は止めないです。
だから失踪したかとか思わないでね(;ω;)
盾を並べたアイアン・ドールが歩を揃えて前進する。
「まずはこいつから倒す。魔物の足を止めろ!」
「はい!」
魔道士たちが両手を地面につけて魔法を唱える。
一軒家に届くほど高く分厚い壁が魔物との間に出来上がる。
次に指揮官のベルシグルに補助魔法をかける。
「パワー・チャージ! スピード・チャージ!」
ベルシグルの体を2色の光が包み込み、彼の身体能力を上げる。
魔道士は額に浮かんだ汗を拭う。
「あとはお願いします……」
「ああ、ご苦労だった――!」脳天目掛けて振り下ろされた斬撃を、顔の前に剣を翳すことで受け止めた。
そして剣を滑らせながら身をひねって、下から股間を狙うもう1つの剣も避ける。
ベルシグルとシルバ・ヘッドの体が入れ替わる間際、そっと鎧に触れる。
「マッド・ハンド」
地面から泥状の手が伸びてシルバ・ヘッドの足を掴む。
シルバ・ヘッドは脚を上げようとするが、いくつもの手が重なった泥から抜け出すことができない。
距離をとったベルシグルが叫ぶ。
「全員、攻撃しろ!」
彼の命令に魔道士たちは反応が遅れたが、すぐに得意の魔法を唱える。
雷が、炎が、氷が、植物が、身動きできないシルバ・ヘッドに容赦なく撃ち込まれた。
進行を阻まれた魔物たちは壁を見上げていたが、やがて指示を仰ぐために後ろを振り向いた。
魔物たちの視線を一斉に向けられたシルバ・ヘッドはしばらく壁を見つめていたが、やがて近づいて手で触れてみる。
鉄甲越しでなにがわかるのだろうか。
やがて壁から離れると、急激に体を旋回、遠心力を加えたモーニングスター――柄と鉄球を鎖で繋げた武器――を叩きつけた。
街中に砲撃と勘違いするほどの轟音が響く。
が、壁は壊れなかった。
モーニングスターが命中した箇所にはヒビが走り、土が剥がれているけれど、貫通できていない。
シルバ・ヘッドはモーニングスターを地面に垂らしたまま、アイアン・パペットに顔を向ける。
数体のアイアン・パペットたちが2体に手榴弾を手渡していく。
2体は両手一杯に手榴弾を抱えると、シルバ・ヘッドが傷つけた箇所に詰め込み始めた。
2体が詰め込んでる間に他のアイアン・パペットは盾を構えるアイアン・ドールのうしろに隠れ、シルバ・ヘッドも同じように身を伏せた。
手榴弾を詰めると、一体がその内の1つに火をつけて離れ、もう一体はしっかり手榴弾を押さえて穴から落とさないようにする。
連続した爆発が壁を粉砕した。
爆風で家が傾き、窓が割れる。
「か、壁が!」
壁が破壊され、その破片が魔道士たちに降り注ぐ。
「く、シルバ・ヘッドは……?」
ベルシグルは目を凝らしてシルバ・ヘッドを探す。
粉塵が舞うために視界が大きく妨げられたが、地面を這いずった跡を見つけた。
ベルシグルは悔しさに思わず毒づいた。
「くそ、逃げられた!」
「べ、ベルシグル様、うしろから敵が!」
壁が壊れた方を見れば、盾をアイアン・ドールを先頭に魔物の群れが突撃していた。
さすがにベルシグルもどうにもできないと覚悟し、隠れているネルに逃げるように叫ぼうとした。
けれど、彼が口を開こうとしたとき、魔物の列にナイフが降り注ぐ。
1体しか致命傷を与えられなかったが、魔道士たちへの突撃が止まった。
「どうして魔物がここにいるのか知らないが……」
頭上から聞こえる声に釣られて上を見上げれば、淡い水色のロープを頭から羽織った男が両手を広げて立っていた。
男の体が前に傾く。
「冒険者として見逃すわけにはいかないな」
軽く地を蹴って屋根から飛び降りた。
アイアン・パペットがマスケット銃を撃つ。
距離はわずか数メートル。
だが、アイアン・パペットが引き金を引く時には男は魔法を唱えていた。
「ウィンド・コート」
男の体から吹き荒れる風が銃弾を横に反らした。
そして着地した瞬間に怒り狂って吹き荒れて、100キロを超える巨体を吹き飛ばす。
離れていたために吹き飛ばされなかったアイアン・パペットが拳銃を構える。
その姿を視界に捉えた男は軽くつま先を蹴ると、鳥の羽のように宙を舞った。アイアン・パペットが発砲するが、銃弾は検討外れの方へ飛んでいった。
宙で一回転した男がアイアン・パペットの隣に着地し、懐からナイフを抜き取りざまに投げつける。
そして目の前で剣と拳銃を構える2体のアイアン・パペットのコアを射抜いた。
「おい」
襲撃者に対応しようと後ろを振り返ったアイアン・ドールに声が掛けられる。
振り返ったアイアン・ドールは盾を掲げてコアを護ろうとしたが、薙払った戦斧は頭を狙わず、膝を破壊する。
体重を支えられずに巨体が前のめりに崩れる。
手をつこうと伸ばした盾を持った腕が切断される。
「ったく、魔物風情が調子に乗るなよ」
下から切り上げた一撃がとどめを刺す。
頭を破壊されたアイアン・ドールが煙になって消えた。
戦斧を担いた女は好戦的な笑みを浮かべ、自分に剣を向ける魔物を眺める。
離れた位置から見ていた市民たちが歓声を上げる。
戦斧を担いた女は好戦的な笑みを浮かべ、自分に剣を向ける魔物を眺める。
離れた位置から見ていた市民たちが歓声を上げる。
「レグスタ―だ!」
「黒鷹だ! 黒鷹のレグスタ―だ!」
「あっちはティティオだぞ。女戦士が来てくれたんだ!」
「おい、危ないから下がってな」
腕の立つ冒険者の登場に喜んでいると、うしろから服を掴まれて引っ張られた。
市民は文句を言おうと顔を向けたが、相手を見ると言葉を失う。
いつの間にか冒険者が集まっていたのだ。
みな、自分の得物を手に獰猛な笑みを浮かべている。
「俺たちの街で暴れたんだ。どうなるかわかってるよな?」
「1匹も逃がさないからね」
「バラバラに切り刻んでやるよ!」
「……殺」
冒険者たちが魔物の群れに斬りかかる。
魔物も奇襲されても混乱せず、態勢を整えて迎え撃つ。
魔法とマスケット銃が獲物目掛けて火を噴いた。
あまりにも近いために防御することも、避けることも出来ず、血を吹き出して倒れ、破壊されて塵となる。そばで味方が倒れても一瞥もせず、目の前の敵と切り結ぶ。
冒険者が繰り出す剣を銃剣をつけたマスケット銃で受け止めるアイアン・パペット。
アイアン・ドールは魔法を盾でガードすると一気に冒険者に接近し、剣を腹に刺す。
刺された衝撃に目を開く相手の顔を覗きながら、内臓をかき回すように捻ってから引き抜けば、冒険者は前のめりに倒れた。
冒険者と魔物の戦いの中で、シルバ・ヘッドはその性能の高さを発揮していた。
レグスタ―とハルベルトの使い手を相手にしながら、なにかを探しているのか、やたら首を動かしている。
「俺を前に余所見するとは、舐めやがって!」
冒険者が罵声を吐きながら前に出ようとしたが、モーニングスターが踏みだそうとした足を狙って打ち込まれる。レグスタ―とハルベルトの使い手を相手にしながら、なにかを探しているのか、やたら首を動かしている。
「俺を前に余所見するとは、舐めやがって!」
冒険者が罵声を吐きながら前に出ようとしたが、モーニングスターが踏みだそうとした足を狙って打ち込まれる。
「うお!?」
なんとか飛び上がって避けられたが、シルバ・ヘッドも動きを予想していた。
一気に肉迫して肩からぶつかる。
「ぐふっ!」
冒険者の体が吹き飛んで家の壁にぶつかる。
「あらら、1人になっちゃったよ」
原を狙うモーニングスターをステップで避け、動きを封じるためにナイフを投げる。
が、蛇を連想させるしなやかな動きでモーニングスターに阻まれてしまった。
さらにそのまま大きく弧を描いてレグスタ―の頭上から襲いかかる。
これもステップすることで避けていくが、モーニングスターはしつこく後を追いかけてくる。
地面を陥没させ、壁を壊す。
レグスタ―が避ける度に物が壊れて破片が飛び散る。
また、頭を狙った一撃をしゃがんで避けると、モーニングスターは背後の土の壁にぶつかった。
壁の欠片が飛んで、家の窓を割った。
中から悲鳴が上がり、次いで女が誰かを呼び止めようとする。
ドアが開いて小さな男の子が飛び出してきた。
突然、表れた子供に驚きながら、カーブを描いて下から飛んできたモーニングスターを避ける。
「なにやってる! 早く家に入るんだ」
「あ、ぅあ……」
レグスタ―が怒鳴っても、子供はシルバ・ヘッドを見つめたまま動けないでいた。
遅れて家から出てきた母親もシルバ・ヘッドに固まった。
シルバ・ヘッドもレグスタ―に攻撃を続けながら、子供を見つめ続けている。
が、髪の毛が茶色で男だとわかると興味を無くしたように視線を逸らした。
そこで金縛りが解けたように子供は泣きながら走り出した。
が、その先は冒険者と魔物が殺し合っている。
間違いなく小さな体は踏みつぶされるだろう。
今まで隠れていたネルが飛び出した。
横から少年の体を突き飛ばす。
少年はいきなり押されたことに驚いて、口を開けたままネルを見上げていたが、ネルはなにも言わずに走り去った。
ネルを見つけた魔物たちが冒険者の存在を無視して彼女に襲いかかろうとしたが、魔道士たちがネルの周りに魔法壁を張る。
「お嬢様、無茶はしないでください」
ベルシグルが厳めしく顔を歪めて彼女を見下ろす。
が、ネルには怖い顔をしても効果はなく、面倒臭そうに溜め息をつかれた。
「あの子を助けたかったもん」
「あなたは自分の立場を理解していない」
屋根から飛び降りたアイアン・ドールがベルシグルとネルの背後に着地する。
「あなたの存在は何百人もの人を救うことができる。
たった数人を助けるために犠牲になってはいけない」
アイアン・ドールが着地した衝撃から立ち直る間も与えずに、振り返り様に剣を振るって、首を跳ねる。
「もっと考えて行動しなさい。お父上も悲しまれる――!」
魔法壁が打ち砕かれる。
壁を破壊したシルバ・ヘッドがネルを殺そうとモーニングスターを振りかぶる。
「させるか!」
ベルシグルがネルの前に分厚い魔法壁を展開する。
それも楔型に展開することで、モーニングスターの破壊力を殺した。
シルバ・ヘッドの赤い目がベルシグルに向く。
まずは障害から消すことがいいと判断したらしい。
手首を捻ってベルシグルの体に鎖を巻き付け、一気に締め上げた。
「なっ!? が――!」
肉が圧迫され、骨が折れる。
その痛みを知覚する前にベルシグルが遠くに投げ飛ばされる。
「ベル!」
地面に叩きつけられて転がったベルシグルはすぐに起きあがろうと手をつくが、痛みに呻き声を漏らすだけで動けない。
「させるか!」
レグスタ―がナイフを投擲、自身も剣を手に接近する。
が、ナイフは腕を払うことで簡単に払われ、レグスタ―も複雑な動きをするモーニングスターに阻まれて近づけない。
レグスタ―を牽制しながら、拳を魔法壁にぶつける。
1回だけなら魔法壁も十分に耐えられたが2回、3回と拳をぶつけられるたびに壁は震え、ヒビが走る。
ヒビはだんだん大きくなり、10回目を超えるときには亀裂となった。
そして大きく振りかぶって殴れば、魔法壁はガラス質の音をたてて割れる。
ネルが逃げようと、身を翻す。
シルバ・ヘッドは標的を逃すまいと、ネルを捕まえようと手を伸ばす。
レグスタ―はモーニングスターの届く距離から離れて小石を拾う。
「やらせるかぁ!」
いきなり表れたティオがシルバ・ヘッドの腕にしがみつく。
シルバ・ヘッドは腕を振り回してティオを剥がそうとするが、ティオも離してたまるかと必死に掴む。
剣は宿に置いてきてしまったし、魔法を唱える余裕なんてない。
「早く、早く逃げて!」ティオの言葉に驚いて固まっていたネルハッと我に返った。
すぐに剥がせないと判断したシルバ・ヘッドはティオがしがみついたまま、ネルを殴ろうと振りかぶる。
「エア・シュート」
レグスタ―は拾った小石を親指で弾く。
小石は銃弾にも勝る速度で発射して、シルバ・ヘッドの兜を貫く。
コアを外れたけれど、兜から血のように黒い煙が吹き出し、巨大がぐらつく。
すぐに2つめを指に乗せて弾く。
今度は首筋を貫通、シルバ・ヘッドの首が大きく傾げる。
少し呼吸を入れて狙いを付けてから3発目を発射。
今度は確実にコアを貫こうとしたが、シルバ・ヘッドが手をかざして受けた。
指2本が千切れ飛ぶ。
弾道がずれた小石は兜を削っただけに終わった。
レグスタ―は舌打ちをして落ちている物を拾おうとしゃがむ。
シルバ・ヘッドは未だ自分の腕にしがみついているティオの首を掴んでむりやり引き剥がす。
「この――!」
ティオはまだ掴もうと手を掴もうとしたが、抵抗も虚しく投げ飛ばされた。
ネルを狙ったのだが、彼女はあっさりと避けてしまった。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫」
ぶつけた箇所を押さえながらも、なんとか立ち上がる。
「ほ、ほら、早く行こう」
ぶつけた背中をさすりながら、急かすようにネルの背中を叩く。
二人が逃げるのを確認したレグスタ―はモーニングスターの猛攻を避けることに専念しながら、フェイントをかけてシルバ・ヘッドを牽制する。
手持ちのナイフは残り3本。
これがつきたら剣だけで戦わなければいけない。なんとかナイフがある内に終わらせたい。
鎖を鳴らしながら地面を跳ねるモーニングスターを避けながらチャンスを待つ。
そのとき、戦場の音も蹴散らす警笛が響いた。
冒険者たちが驚いて振り向けば、盾と槍で武装した軍警が整列していた。
それも魔物の群れを挟み込む形になっている。
整列した隊員たちの後ろで馬に乗った士官がサーベルを突き出して命令を出す。
「全体、前進!」
「おう!」
隊員たちが一歩、また一歩と右足を前に出して前進する。
数体のアイアン・パペットが並んで、威圧するように前進する軍警に向けて撃つ。
軍警たちは盾を斜めに構えて銃弾の弾道をずらし、腕にかかる衝撃に耐える。
さらにアイアン・ドールが切りかかれば、一斉に槍を突き出して近づいたアイアン・ドールを刺した。
「きみたち、大丈夫か?」ティオとネルの元に2人の隊員が声をかける。
彼らは負傷者や非戦闘員を非難させることを命じられている。
隊員は素早くティオの体を確かめる。
「腰を打ったようだな。歩けるか?」
「はい、大丈夫です」
「なら、こっちに来るんだ」
隊員は2人を奥に連れて行く。
だが、銃弾がネルのそばに着弾して、彼女の逃亡を許さない。アイアン・パペットたちがマスケット銃に銃弾をカルカでこめ、もう一度狙いを付ける。
「くそ、早く来るんだ!」
隊員が自分の体でネルを守るように抱きかかえる。
ティオも腕を掴まれたが、その手を払ってネルたちの前にでる。
「おい、なにやってる!」
隊員が慌てて肩を掴むが、ティオは魔法を唱えることに集中していた。
銃弾を防ぐ壁。
魔法壁はまだできないから、できる魔法で応用するしかない。
ティオは両手一杯に魔力を集め、想像したことを具現化させる。
「アイシクル!」
ティオの背より大きな氷塊が地面に突き刺さり、銃弾を全て受け止めた。
その大きさに冒険者たちは驚き、軍警も足を止めた。
「や、やった……!」
ティオは満足げに笑おうとしたが、崩れるように倒れてしまった。
魔力を過剰に使ったために体を支えることが出来なくなったのだ。
「お、おい、しっかりしろ!」
隊員がティオの体を安全な場所へ引きずっていった。
引きずられるティオの頭に大きな手が置かれる。
「まったく、魔力を戦闘中に使い切るとはだらしねぇな」
「アレイゴさん……」
残り少ない気力を使って頭を上げれば、巨大な槍を持ったアレイゴがいた。
アレイゴはふんっと鼻を鳴らす。
「まぁ、いい。とりあえずは下がってろ。あとは俺が――」
銃弾がアレイゴの肉体に当たった。
ティオは驚きで目を開く。
銃弾が異常に発達した筋肉を貫くことが出来ず、ポロッとこぼれて地面に落ちた。
魔法を、使ったのだろうか?
ティオが唖然と見ている前で、アレイゴは首を鳴らして歩き出した。
アレイゴを撃ったアイアン・パペットたちはすぐに銃弾を込めようとしたが、間に合わないと判断した1体が拳銃を抜いて撃った。
距離はわずか数歩、銃弾はアレイゴの胸に当たる。
が、これも筋肉を破ることが出来ずに地面に落ちた。
「ナマクラなんざきくかよ」
アレイゴは小馬鹿にしながら、無造作に槍を振るう。
3体のアイアン・パペットが胴体を千切られて宙を飛んだ。
2体のアイアン・ドールとアイアン・パペットが離れようとしたが、返す刃が2体を捕らえた。
アイアン・パペットが前の3体と同じように胴体を千切られ、アイアン・ドールも鎧ごと腹の半ばまで刃が埋没した。「ヌゥン!」
そのまま腕に力を込めて持ち上げ、振り回して分投げた。
アイアン・ドールの巨体が乱戦を繰り返す冒険者と魔物を巻き込んでいく。
「おい、危ねぇじゃねぇか!」
「こっちに投げるな!」
巻き込まれた冒険者たちが口々に文句を言うが、アレイゴに睨まれただけで黙って視線を逸らしてしまった。
アレイゴは槍を両手に持ち直しながら警告する。
「怪我したくなかったら下がってろ。今度は死ぬかもしれんぞ」
そう言ってバットを振る感覚で、顔面目掛けて飛んできたモーニングスターを弾き返す。
鉄球は高く打ち上がったが、すぐにアレイゴを粉砕するべく戻ってきた。
2撃目も槍で受け止め、むりやり横に流す。
そして鉄球が動く前に蹴り飛ばす。
「次はボスの登場か」
アレイゴは槍を肩に担いで相手を睨みつける。
視線の先にはモーニングスターを投げられるように、鎖を回すシルバ・ヘッドがいた。
そのそばでは仲間に支えられているレグスタ―の姿もある。
モーニングスターを受けた左腕がおかしな角度に曲がって血が流れている。
レグスタ―はアレイゴをちらりと見る。
「なんだ、随分遅かったな。鬼教官」
「あとは俺がやる。おまえは下がってろ」
「ああ、お言葉に甘えてそうするよ」
レグスタ―は仲間に連れられてシルバ・ヘッドから離れる。
シルバ・ヘッドもアレイゴと戦うつもりらしく、逃げるレグスタ―には見向きもしない。
「よし、それじゃ始めようか」
アレイゴがぼそりと呟いたのが合図のように、シルバ・ヘッドが鉄球を投げた。
そろそろ、この戦闘も終わらせないと……(汗