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迷子探してます

また携帯での投下です。

やばいな、また文章が短くなってる…(汗)

「あ、う……?」

目を覚ましたティオは寝ぼけている目を擦りながら、不思議そうに辺りを見渡そうとして、首に痛みが走って飛び跳ねた。

「え、なんで……?」

そーっと首に触れてみれば、どこも怪我はしていない。

なのに少しでも動かそうとするとズキリと痛んだ。


ティオはどうして首が痛いのか困惑しながら、首を動かさないように上半身を動かして辺りを見る。

清潔な白で統一された壁、ベッド、カーテン。

きれいに整えられたベッドが6つ並べられ、そのうち1つだけ誰かが寝ている。

そして僅かに感じる独特の匂い。

薄くてきつくないけど、すぐに研究所で嗅いだ匂いだと気がついた。


奥からは話し声が聞こえるけれど、カーテンに仕切られているために姿は見えない。


ティオは慎重に起き上がってカーテンに近づいた。向こうも気配で誰かが起きたのだと気付いたらしく、ティオが手を伸ばす前にカーテンが開けられた。

「お、目を覚ましたようね」

カーテンを開けた魔族の女はそう言って軽く息を吐いた。

「痛いところはある?」

そう言って優しく首に触れようと手を伸ばすが、拒むようにティオは一歩後ろに下がる。

「ご、ごめんなさい。いま首痛いから……」

「やっぱりね、じゃあちょっと待ってて」

女は棚から複数の薬品を取り出して、それを布に染み込ましていく。

そして短く魔法を唱えて布を冷やした。

「はい、張るから後ろ向いて」

ティオが言われた通りに後ろを向くと、首元が見えるように襟を引っ張られる。

「ちょっとヒヤッとするわよ」

「え、ヒャア!?」

布が張られた瞬間、言われた通り首がヒヤッとした。

その冷たさに霰もない声を上げて首を竦める。

ティオの反応に小さな笑みをこぼしながら、女は紙に処方した薬と魔法を書き込む。

「首を痛めてるから、しばらくそれをつけていてね」

「は、はい……」

冷たさに体がぞくぞくするけど、言われた通りに我慢する。


「と、ところでここは何処なんですか?」

「警察署の医務室。で、私はここの医者をやってるラクスよ」「医務室、ですか?」

ティオは珍しそうに言葉をもらす。

「魔族で医者なんですか?」

「ええ、珍しいでしょ」

「はい」

ティオは素直に頷いた。


村の医者から昔、話、いや、愚痴を聞かされた。

「魔法と薬草の知識に秀でたエルフは医術のエキスパートだ。だから街の薬屋もほとんどエルフなんだ。

ま、ドワーフや魔族は回復魔法が使えないし、俺たち人間も知識じゃ負けるからな……。

だかな、奴らは根が真面目だからしょうがないけどよ、いちいち薬の説明を長々としてきやがる。

俺だって医者やってんだからそのぐらいわかるってんだ!」

彼は街から帰ってくると、いつも同じ文句を垂らしていた。


それにティオも街で暮らし初めて何月か経つけれど、回復用の道具を扱う店――病院は行ったことはない――ではエルフか人族しか会ったことがない。

正直、魔族の医者とは初めて会った。

「魔族の医者って珍しいでしょ。でもね、考え方次第じゃ私達も活躍できるのよ」

ラクスは誇らしげに自分の胸に手を当てた。


ティオも感心して彼女を見ていたが、ふと疑問が浮かび上がった。

「なんで僕、医務室にいるんですか?」

「頭を強く揺さぶられて気絶したのよ」

そう言って、やれやれと呆れて溜め息を漏らし、黒髪をかき分ける。

「全く、馬鹿力なんだから少しは押さえろって言ってるのに……」

「え、どういうこと?」

なんで医務室に運ばれたのか記憶にないティオは不思議そうに首を傾げる。

「思い出せない? アレイゴのラリアットを受けて気を失ったんだけど……」

「ん―……」

言われても思い出せない。

ティオは困ったように考え込む。

思い出せるのはアレイゴの丸太。

風を乱して振り回される丸太。

いま思い返してみれば、どうして自分が何回も避けられたのか不思議だ。ティオの思慮が脇に逸れ始めたタイミングで、引き戻すようにサンドイッチを鼻先に突きつけられる。

「思い出せないなら、しょうがないわ。

それより、もうお昼だからお腹空いてるでしょ。

食べなさい」

「いいんですか!」食べ物を前にしたティオは目を輝かしてラクスに尋ねる。

その子供らしい様にラクスはつい笑ってしまった。

「ええ、もちろんよ」

「ありがとうございます!」

さっそくかぶりつこうと口を開ける。

「そのためにアレイゴに買わせたんだもの」

「――!?」

予想外すぎる発言に噛みついた所で固まって目を丸くする。

「だって、私の仕事を増やしたのよ? ご飯を奢るぐらいいいじゃない」

そう言って彼女もサンドイッチを食べ始める。

「サンドイッチを食べたら、帰って休みなさい。

怪我人なんだから大人しくしてるのよ」

「は、はい」

ティオは急いでサンドイッチを頬張った。


サンドイッチを食べ終えたティオはラクスに礼を言って医務室を出た。

制服をきた人間がきびきびした動きで廊下を歩く中、ティオはぶつからないように気をつけながら、天井に吊された案内板に従って出口に向かう。

入口はギルドよりも長いカウンターがあって、それぞれ担当の課が書かれている。

職員は奥から出てきたティオを一瞥すると、すぐに自分の仕事に戻る。

この雰囲気に居づらさを感じながら、ティオは足を早めながら警察署を出て行った。


警察署は灰色の大きな二階建ての建物で天辺にヴィナード王国の国旗と警察の旗が飾られている。

入口の脇には2つの掲示板が立てられていて、それぞれに探し人や犯罪者の紙が張られている。

似顔絵の下に髪の色や顔にある特徴が書かれ、心当たりがある場合はすく警察に報せるようにと書いてある。


なんとなく見てみれば、賞金額が何十万もかけられたら連続殺人者や出て行ったきり帰ってこない老人の探索届け。

さらには猫を探している報せもあった。

「いろいろあるなぁ」

10軒連続の食い逃げ犯が食べた量に驚きながら、次の紙に視線を移して違和感を感じた。


その紙には自分より幼い少女の似顔絵が書かれていた。

銀髪の髪は腰まで長く、目は幼いながらも強気に尖ってる。

やけに少女の美しさを褒め称えた文章を見ながら、ティオは考えるようにその絵を凝視する。

その顔に見覚えがある。

けれどそれがどこで見たのか思い出せない。

喉元まで来てるのに思い出せない気持ち悪さにティオは不満そうに唸った。

「確かに見たことあるのに……。どこだったかなぁ?」

呟きながらもう一度書かれていることを読み直す。


腰まで伸びた銀髪。

なかなか鋭い目は澄んだ青色。

エルフのように整った顔立ちで肌は健康的な白さ。


そして一番最後に控えめに、元気ありすぎて少々問題あり。とあった。


「あ、あの子だ!」

何回か見返していたティオは思わず声を上げた。

アイアンドールに襲われたあの少女。

たしかアイシャは知り合いが見つからなければ孤児院に預けると言っていた。


さっそく紙を剥がして、出てきたばかりの警察署に戻る。

そしてカウンターにいた職員に紙を見せた。

「すいません、この子を知っているんですけど……」

「本当ですか?」

声をかけるまで無表情だった職員が驚いた顔でティオを見上げる。

が、すぐにホッとした表情を浮かべた。

「正直、助かります。探している人が毎日来て騒ぐんですよ。多分、時間的そろそろ来ますよ」

そう言って入口を覗けば、言葉通りに人が入ってきた。

職員は目で「ほらね」とティオに伝える。


入ってきたのは軽装の鎧に赤いマントを羽織った男だ。

赤色の髪をうしろに撫でつけ、髭を整えている。

難しい顔をしながら、大股でティオたちに近づいてくる。


職員は明るい笑顔を浮かべて立ち上がる。

「ベルシグルさん、こちらの方がお嬢さんの事を知っているそうですよ」

「本当ですか!?」

ベルシグルと呼ばれた男は目を大きく開いてティオを、そして手元にある紙を見る。

「あなたがネル嬢を知っているのか?」

ベルシグルがズイッと顔を近づける。

ティオは顔を引きつかせてうしろに下がる。

「あ、あの兵隊に保護されて、こ、孤児院に預けられたそうです」

「そうか、孤児院にいたのか……」ベルシグルは長く息を吐いて緊張を弛めると、カウンターに寄りかかる。

そしてもう一度息を吐いて足元に視線を落とす。


職員はファイルを取り出して、この街にある孤児院の数と場所を調べる。

「じゃあ、ネルちゃんがいる場所を調べて来ますので、すいませんが、2、3時間、どこかで待っていて貰えませんか?」

「了解した。では、少年、その間に話を聴かしてくれないか?」

「わかりました」

ベルシグルに連れられて、カフェに入った。


席に座ったベルシグルはコーヒーとドーナツをいくつか注文した。

「さて、ティオ君。ネル嬢の所在を教えてくれてありがとう。」

そう言ってテーブルに手をついて深く頭を下げる。

ティオも嬉しそうに笑う。

「良かったですね。ずっと探していたんでしょ?」

「うむ、魔物の群れに襲われてな。戦ってる最中に彼女の姿を見失ってしまったのだ……」

ベルシグルは悔しそうに呟いて、両手を強く握り締める。

「同士も1人亡くし、そのうえ、お嬢様の身に何かあっては、主に申し訳がつかん。私達は必死の思いで彼女を探したのだ」

「も、もしかして、あの子って貴族ですか?」

話を聞いていたティオが尋ねてみれば、ベルシグルは首を振って否定する。

「貴族ではない。少しばかり、お嬢様の父上は特殊なのだ」

どう説明すればいいのか、ベルシグル自身も言葉が浮かばず苦笑してしまう。


そこへウェイタ―がコーヒーとドーナツを運んできた。

ベルシグルは嬉しそうに笑みを浮かべて、さっそくドーナツを手に取った。

「おお、とりあえずは食べようか。

私は甘い物に目がなくてな、ここのドーナツは美味しいぞ!」そう言って大きく口を開けて頬張る。

「それじゃ、僕も頂きます」

ティオは話が逸れてしまったと思いながら、目の前の甘い食べ物に手を伸ばした。


だが、ベルシグルは口の中の物をコーヒーで流し込むと、自分がそらした話を引き戻す。

「とりあえずはだ。我々は主の命に従って、お嬢様をある場所にまで送り届けなければいかん。

いろいろと予定はずれたが、まずはお嬢様と合流しなけれはな」

そう言ってから、声を潜めて魔法を唱えた。

「召喚、プーリャ」

ベルシグルの頭上に黄緑色の

魔法陣が浮かび上がり、そこから三つに分かれた長い尾とフサフサした胸が特徴の鳥が表れた。


初めて召喚魔法を見たティオは驚きに声を漏らす。

召喚魔法は服従の契約を結んだモンスターを自分の元に召喚することができる。

召喚魔法は召喚するモンスターの大きさで消費する魔力が変わり、魔法を使えるようになるにはかなりの練習と勉強が必要だ。


召喚されたプーリャはベルシグルの肩に止まって、彼の頬をつつく。

「グリコたちに、2時間以内にここに来るように伝えてくれ」ドーナツについていたクルミを与えると、プーリャは翼を広げて開いていた窓から飛んでいった。

「さて、我々はもう少しここで時間を潰すか」

ベルシグルはプーリャが飛んでいった方向から視線を戻すと、通りかかったウェイタ―にコーヒーのおかわりを頼んだ。ベルシグルはプーリャが飛んでいった方向から視線を戻すと、通りかかったウェイタ―にコーヒーのおかわりを頼んだ。


******

建物の影に隠れた薄汚れた裏通り。

1人の少年が暇そうにあぐらを掻いて地べたに座っている。

物乞いではない。

通りかかった人が見れば、関わるのを避けようとするだろう。


長い深緑の髪を三つ編みにして、目は猫を想像させる。

来ている物はゆったりしたズボンに、袖無しの服とラフな格好。

そして手首と足首それぞれに金の輪をつけ、両耳と唇にもピアスをしている。

さらには右頬から胸を走って右腕にまで伸びた赤い竜のタトゥー。

まともな人間なら関わるのを控える姿だ。


少年は涎を垂らして眠っていたけれど、何かに気がついて目を覚ました。

寝ぼけたまま見上げれば、空から見張りに出していた召喚獣のインプが戻ってきた。

「お、おかえり」

少年は緩い笑みを浮かべてインプを迎えた。


インプは慌ただしく主人の回りを飛びながら、自分が見たことを報告する。

「オーケーオーケー、お疲れさん」普通なら耳障りな声は人間には何を喋っているのかわからないはずだが、少年はしっかりと理解していた。


少年は頷きながら地面に置いていた肉片をご褒美としつ与える。

さっきまでキィキィ鳴いていたのに、嬉しそうに笑い声を上げてどこかへ飛んでいった。


「さてと……」

埃を払いながら立ち上がる。

お前ら聞いてたよな?」

そう言って、自分を囲う魔物の群れを見渡した。

魔物たちは返事をしない。

ただ、じっと赤く光る目を少年に向ける。


「とりあえずガキか護衛、どっちか見つけたらぶっ放せ。

死んでもいいけど、俺にわかるように派手に暴れろよ?」

見上げるほど背の高い魔物たちに命令しながら、楽しそうに笑みを浮かべる。

「わかったら、さっさと行けよ」


魔物たちが散開する。

人の目を盗むように裏道を歩き、見晴らしのいい屋根に登っていく。

さらに用意していた馬車に乗り込んで堂々と街道を出る者までいた。


「化け物が、今度こそ殺してやるから待ってろよぉ」

鋭い犬歯を剥き出して、少年は笑った。

勤務先が茨城県に決まりました。

茨城県か―どんなところなんだろ?

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