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オペ開始

今回は治療するだけのお話です。

え、回復魔法で1発じゃないのかって? そんなわけないじゃないですか! ……たぶん

「どけ、この小僧が撃たれたんだな?」

兵隊の中で歳を取った衛兵が抱きしめていたアイシャから奪うようにティオを地面に寝かせる。

「妾の命の恩人だ。なんとしても助けてくれ」

「わかりました」

そして鎧を外して服を脱がせると、破裂したようにズタズタに裂けた傷が露わになる。

「彼は助かるか?」

そばに駆け付けたティーガーが冷静に尋ねる。

「このくそったれな銃を討った奴は倒したんでしょうな?」

「ああ、新で消えるのをこの目で確かめた」

「なら……」

いきなり銃弾で空いた穴に指を突っ込んだ。

気絶しているティオの体が跳ね上がる。

「ちょっと何をするのよ!?」

アイシャが顔を青くして叫ぶが、衛兵は傷の中で指を回して銃弾の有無を調べる。

「よし、銃弾は残っていない。 すぐに治療できるぞ」

銃弾が残っていないことを確認した衛兵は近くにいた兵士を呼ぶ。

「手足を温めろ! おまえは川から水を汲んで熱するんだ!」

鞄から清潔な布に薬品を染み込ませて傷口の周りをふき取る。

そして覗いてみれば、悪い意味で衛兵の思った通りだった。

筋肉が裂けているだけでなく、骨も砕けている。

「くそ、だから銃傷はやり難い」

ピンセットを取り出して砕けた骨を取り除いていく。

「なんで回復魔法使わないのよ!」

「素人考えで言うな」

彼が回復魔法で折れた骨ごと傷を治さないのは理由がある。

このまま回復魔法を使って治してしまえば、骨の破片が残ってしまう。

溢れる血を拭いながら治療を続けるが、それまでこの若者の体力が持つのか不安になる。

「ティオ、しっかりしてよ!」

アイシャと水で濡らした布で血を拭う兵士がしきりにティオを励ます。


衛兵はなんとか骨の破片を取り除いたが、まだ問題がある。

「くそ、なんでこんなひどいんだ?」

何回か銃傷を見てきた衛兵であるが、これだけ傷が抉れているのは初めて見た。

他の兵士の傷も見たけれど、どうしてアイアンドールの銃はこれだけひどい傷を残せるのだろうか?

とりあえず余計な考えは捨てて次の処置に移る。

手間が掛かる骨抜きが終わったが、次は丁寧に、それでいて急がないようにしなければいけない。

指先に魔力を集中させて回復魔法を唱え、傷口に慎重に突っ込む。

まずは折れた骨が微量ながら修復し始める。


ティオが身じろぎしてうめき声を漏らす。

「おい、俺の鞄に嗅ぎ薬があるだろ。もう少し眠らせてやれ」

「わかった」

兵士の1人が言われたとおり、鞄から青い液体の入ったビンを取り出す。

そして布に垂らして染み込ませてからティオの鼻にあてる。

何回が呼吸して吸い込み、険しかった表情が和らいでいく。

「ねぇ、なんでそんなゆっくり回復させていくの?」

衛兵が時間をかけていくのにじれったくなったアイシャは衛兵に尋ねた。

「しょうがないだろ。さっきの戦闘で無茶したんだ。一気に回復させたら体力が持たん。だからゆっくりやっていくしかないんだ」

「そう、なんだ……」

「まぁ、安心しろ。この小僧は絶対に助ける」

片手で回復魔法を当てながら、安心させるようにアイシャの肩を叩く。

「でも、マスケット銃の銃弾だろ。そんなにひどいのか?」

「ええ、確かにそうなんです。そのはずなんですよ。ですが、これは一般的なものより傷口が酷過ぎる」

「奴らの銃は俺らのとは作りが違うってのか?」

「そうみたいです」

衛兵の答えにティーガ―は顎に手を当てて考える。


少女が未だ治療されているティオを見ていた。

フラウディアはその肩にそっと手を置く。

「彼は身を挺して妾達を守ってくれたのだ」

「アー、ウ?」

少女は何を言っているのかわからないと言いたげに首を傾げる。

フラウディアは驚いて固まったが、悲しげに顔を曇らせた。

なにせ、アイアンドールの群れに襲われたのだ。恐怖で話せなくなってしまったのだろう。

体を見れ怪我はないけれど、血塗れになっている。

もしかしたら誰かが彼女を護るために犠牲になったかもしれない。

1人勝手に想像して、少女の不幸に心を痛めた。

フラウディアはしゃがんで少女の視線に合わせる。

「とりあえず今は早く元気になるように祈ろう」

「うー?」

フラウディアが手を合わせて神に祈りをささげると、少女も意味は分かっていないのか、不思議に思いながらも手を合わせる。


「よし、とりあえず骨はOKだ。あとは肉体をやれば完了だ」

数十分後、汗だくになった衛兵が長く息を吐いた。

「だ、大丈夫なの!?」

「とりあえず難しい作業はすべて終えた。あとはどこか衛生的な所で治療をしよう」

「なら、近くに村があるからそこで休ませよう」

ティーガーの意見にフラウディアも頷く。

「兵士たちも負傷している者が多い。そこで治療できるなら助かるな。それに……」

気づかないように、どこか遠くを眺めている少女に視線を送る。

「この子の連れも探さないといけないだろう」


はたしてこの少女は自分の状況が理解できているのだろうか?

いや、できていないだろう……。

なぜ、アイアンドールのマスケット銃は威力が高いんでしょうね?

みんなも考えてみよう! (>ω・)b


ヒント;形

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