ティーガーvsシルバ・ヘッド
そろそろキャラクター紹介でも作ろうか。
出したキャラを忘れないためにも……!
脳天をかち割ろうとファルシオン振り下ろされる。
ティーガーは剣や盾で斬撃を受け止めず、相手の腕に手を当てて軌道をずらした。
そして股間を盾でカバーし、蹴りあげた足を受け止め、相手を押し倒す勢いで前に踏み出す。
バランスを崩したシルバ・ヘッドは倒れながらも地面に手をついて足払いをかける。
そしてティーガーが避けるためにわずかに身を引いた隙をついて、腕立て伏せの要領で体を起こすと同時に剣を振るう。
重量刀がティーガーの頭上をかすめ、ティーガーの突き出した剣はシルバ・ヘッドの兜を掠める。
ティーガーはシルバ・ヘッドの横を通り抜け、そのまま魔物から距離を取る。
「クレイ・トーテム!」
魔力を込めた踵で地面を叩く。
追撃しようとしたシルバ・ヘッドは振りかけた姿勢から飛びずさる。
それでもティーガーの足元から生えた土のトーテムポールが胴体を捕らえ、魔物の体を浮き上がらせる。
シルバ・へッドは吹き飛ばされても両足で地面に着地、接近しようとするティーガーにファルシオンを投げつけた。
「ッ!?」
なんなく盾でファルシオンを防御したが、その時には目の前にシシルバ・ヘッドが肉薄していた。
とっさに剣を振り払うが、突進してきたシルバ・ヘッドは身を低くしていたため当たらない。
腹部にシルバ・ヘッドの頭部がめり込む。
シルバ・ヘッドはそのまま突進を続け、背後の馬車にティーガーの体をぶつける。
衝撃で馬車の壁に大きな亀裂が生まれる。
背中に走る痛みに顔を顰めながらも、シルバ・ヘッドの顔に手を添える。
「アイシクル」
掌から生まれた氷柱がシルバ・ヘッドの顔に突き刺さる。
が、危険を察したシルバ・ヘッドが咄嗟に首を捻ったためにコアを破壊することができず、兜の半分を壊しただけだった。
「やっぱりアイアンとは違うな」
距離を取ったティーガーは腹をさすりながら呟いた。
「凄い、隊長と互角に戦ってる……」
信頼しているティーガーと五分の戦いをする魔物の実力にアイシャは驚きを隠せなかった。
「ああ、おまえはシルバ・ヘッドを見るのは初めてなんだっけ?
あれが小隊長みたいな存在だ。見ての通りまじで強いから倒そうなんて思うなよ」
おまえじゃ瞬殺されるから」
アイシャとしては馬鹿にされている感じがするが、2人の戦いを見ればわかる。
シルバ・ヘッド
アイアンドールと同じように全身を鎧で身を覆い、兜の隙間からは赤い光が見える。
兜には動物の捻れた角がつけられ、肩、胸、そして額についた動物の頭蓋骨の飾りは銀に装飾されている。
アイアンドールの群れを統率する者であり、危険度で星3つに分類されるほどの戦闘能力を持っている。
「ま、それでも隊長に勝てるわけないけどな」
シュミットはティーガーとシルバ・ヘッドの戦いを見ても動じていない。
反対になぜかフラウディアは不機嫌になっている。
そしていきなり肺一杯に息を吸い込んで叫んだ。
「なにをやっておる! 三番隊騎士団長を務めておる者が魔物一匹に手間取るな!」
「ひ、姫さま、叫ばないでください! 品がありませ――!」
「うるさいぞ。戦場でそんなことを考えていられるか! 主らもさっさとほかの魔物を倒しにかぬか!」
フラウディアの叱咤はちゃんとティーガーの耳に届いていた。
相変わらずの態度に思わず笑みがこぼれてしまう。
「俺だって別に手を抜いていたわけじゃないんだけどな」
自分の獲物を拾ったシルバ・ヘッドが再び斬りかかる。
「だが、このまま斬りあってても時間もかかるのも確か……」
また魔力を込めて地面を蹴り、地面から土のトーテム・ポールを3つ呼び出す。
シルバ・ヘッドは滑るように3つのトーテム・ポールの間を進み、ティーガーの首を刈り取らんと剣を横に薙ぐ。
が、避けたトーテム・ポールから植物が生えだし、シルバ・ヘッドの体を絡め捕る。
その隙にティーガ―は素早く魔法を詠唱する。
シルバ・ヘッドは一瞬だけ動きを止められたけど、力で体に巻きついた葦を引き千切り、今度こそ仕留めようと右斜め下から剣を薙ぐ。
「パワー・チャージ。スピード・チャージ」
剣と剣がぶつかって勢いに負けて弾かれる。
互いに必殺の1撃を繰り出し、受け止め、受け流していく。
力では五分。
しかし、明らかにティーガーが早く繰り出し、シルバ・ヘッドが防御に回るようになっていく。
その防御もだんだんと崩れていき、ついには鎧に傷が生まれていく。
「パワー・チャージでも力が互角か」
剣を繰り出しながらもティーガーは魔物の力に思わず羨んでしまった。
身体能力を上げる魔法で今のティーガーの筋力は倍以上の力を発揮している。
なのにシルバ・ヘッドは片手で彼の斬撃を受け止めている。
いや、鎧語と断ち切る重量刀を片手で扱う魔物と撃ちあえるほどの力を発揮できるだけでもましなのだろうか。
どちらにしても魔力を馬鹿食いするため、勝負は短時間で決めなければいけない。
「これで決着だ!」
半壊した兜に突き刺そうと剣を引き――シルバ・ヘッドが刀身を掴んで、力任せに奪い取る。
そして奪った剣でティーガーの喉元に突き刺そうと振りかぶる。
「アイス・ノック」
氷に包まれた巨大な拳がシルバ・ヘッドのコアを破壊した。
シルバ・ヘッドの体が砕け散ってから溶けるように消え、ティーガーの剣は彼の頬を掠めて地面に落ちた。
「悪いな、お前の負けだ」
ティーガーは頬に流れる血を拭い、フラウディアたちに笑って親指を立てた。
が、その笑みが凍りついた。
「うむ、時間がかかりすぎたが、まぁ、よいわ」
敵のリーダー格を討ち取ってほっとしたフラウディアは馬車に近づく。
「ほら、出てこぬか。敵はあらかた討ち取ったぞ」
彼女の言うとおり、他のアイアンドールはコアを破壊されて消えてなくなっている。
兵士たちはまだわずかに残っている残存勢力を片づけながら、負傷した仲間たちを治療している。
なのに、隠れていた少女は馬車から出てこようとしない。
フラウディアの隣から覗き込んだアイシャは目を丸くして彼女に尋ねる。
「姫様、この子は……?」
「あの魔物どもに襲われておった」
フラウディアは悲しそうに少女を見る。
少女の体に傷はないけれど、肌と、肌を隠す布は血と泥で汚れている。
「よほど怖い目にあったのだろうな。こんな小さな子まで襲うとは、なんと血も涙もない奴らだ……」
兵士に治療してもらいながら、ティオはシュミットに尋ねた。
「アイシャたちって冒険者じゃないの? それにあの人のこと、姫って……」
「え、知らなかったのか?」
逆に聞かれたシュミットは意外そうな顔をした。
「まぁ、あれだ。説明すると、俺たちはこの国に使える騎士なんだよ。で、ティーガーさんは俺たち騎士団の隊長。
で、あそこにいるのが……。いいか、驚くなよ?
我らヴィナード王国第二王女フラウディア・ラグアティアルだ!」
シュミットは自分のことの世に誇らしげに語るが、ティオは思慮が凍りついてしまった。
「え、うそ、あの人、本当に姫なの……?」
「おまえ思った通りの反応返してくれるなー」
シュミットはティオの反応がおもしろくて、ついニヤニヤしてしまう。
ティオとしては初めて、しかもこんな状況で王族に会うと思っていなかったために混乱の極みにあった。
通りかかった兵士はまだ幼い冒険者がどうしたのか気になったが、あえて無視してフラウディアに報告する。
なにかまずいことをしていないか思い返し、パニックになっている。
が、おろおろと周りの兵士たちやフラウディアを見渡しているとき、彼も見つけてしまった。
林の中からわずかに身を晒しているアイアンドール。
持っているのはマスケット銃で、銃口は間違いなくフラウディアを狙っている。
狙われているフラウディアは気づいていない。
アイシャと一緒に、黙って下を向いている少女に優しく語りかけている。
危ない!
そう思った時にはティオは立ち上がって走り出していた。
フラウディアが必死の形相で走ってくるティオに気が付いて驚く。
彼が暴力を働くと勘違いしたのか、それとも反射的なのかわからないが、手が鞘に納めた剣の柄に滑る。
ティオは前に飛び込んで、今にも鞘から剣を引き抜こうとするフラウディアに覆いかぶさる。
銃弾がティオの背中を穿ち、血肉が飛び散った。
アイアンドールはすぐに胸の弾帯から紙で包んだ火薬を詰め込み、銃弾を取り出す。
「アイシクル」
氷柱がマスケット銃を破壊する。
アイアンドールは壊れたマスケット銃を持ったまま、氷柱が飛んできた方向に顔を向ける。
その瞬間に2発目の氷柱がアイアンドールの兜を貫通、中のコアを正確に破壊した。
「ティオ!」
100メートル以上も離れた位置から狙撃したティーガーは倒れたティオのもへ駆けだした。
「衛生兵! 衛生兵はどこにおるか!」
フラウディアは自分の身を盾にして守ってくれたティオを抱き起しめながら叫ぶ。
「ティオ! しっかりして、ティオ!」
アイシャが体を揺すぶって呼びかけるが、ティオは体を震わして口をパクパク動かすばかり。
「ねぇ、返事をしてよ! ティオってば!」
激しく体を揺すられながら、ティオは焦点が合っていない目をアイシャに向ける。
そして何か言おうと掠れた声を出そうとしたが、力尽きて気を失った。
シルバ・ヘッド
脅威度 ☆×3
アイアンドールと同じように重厚な鎧に身を覆う魔物。
兜に動物の捻れた角が生え、胸や肩を銀で装飾している。
戦闘能力が高く、アイアンドールの群れを統率している。
アイアンドールが10体以上いれば、間違いなくシルバ・ヘッドがいると考えるべき。