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乱戦

最近、眠れなくて辛いです……(ノД;)

まだ戦闘は続きます。ティオは活躍できるのでしょうか!?

人間と魔物が入り乱れる戦場。

アイアンドールは頭が潰されれば消えてなくなるけど、人間は死んでも消えないし小さな傷でも痛みを感じる。

四肢が千切れた兵士が悲鳴を上げて地面をのた打ち回り、内臓を潰された兵士の死体が湯気を立ててそばに転がっている。

「助けてくれ! 腕が、腕が千切れちまった!」

兵士が千切れた腕を指し出してティオに助けを求める。

ティオは顔の前に突き出された腕を凝視して固まってしまったが、アイシャにむりやり引っ張られる。

「しっかりして! ここで呆けていたら死ぬわよ!」

「で、でも、あ……」

振り下された剣が肩口から入り、そのまま臍まで切り裂いていく。

まず1人を殺したアイアンドールは死体から剣を引き抜くと、目の前の獲物に狙いを切り替える。

「くそぉ!」

人を助けることができなかった悔しさに怒りの声を上げ、ありったけの魔力を込めたアイシクルを撃ちこんだ。

高速で撃ちこまれた、西瓜よりも大きな氷柱がアイアンドールの腹を貫き、その巨体をうしろに大きく吹き飛ばした。

「え?」

撃った瞬間に全身から力が抜けて座り込みそうになる。

剣を地面に刺して崩れそうになる体を支えるけれど、膝が笑って今にもひっくり返りそうになる。

「魔力を込めすぎたのね。感情に任せて撃つからそうなるのよ」

「ご、ごめん――!?」

いきなりアイシャに突き飛ばされて倒された。

ティオの頭を狙った氷柱が髪の毛数本を千切るだけに終わり、地面にぶつかって2つに割れた。

氷柱を投げ返したアイアンド-ルは立ち上がって落としたクレイモアを拾い上げると、それを引きづるようにしてティオたちに近づいてくる。

「うそ、まだ動くの!?」

「当たり前でしょ! ほら、早く起きて!」

腹に空いた穴から大量の黒い煙が噴き出して上半身が隠れている様は魔物というより亡霊という言葉が似合っていると、ティオは場違いなことを思ってしまった。

急かされて起き上がるけれど、とても戦える状態じゃない。

「ど、どうしよう!?」

「どうしようじゃないわよ。い、いったん逃げるしかないでしょ!」

悔しいけれど今の状態では戦えない。

アイシャの言うとおり逃げようとしたとき、肩に優しく手が置かれた。

振り返れば、剣を片手に持ったフォーデルと目が合った。

「フォーデルさん!」

「様子は見てたよ。ティオ君だったかな? ここは私に任せなさい」

そう言って自分から前に進み出る。

アイアンドールが力任せにクレイモアを薙ぎ払う。

横薙ぎに叩きつけた大剣を、フォーデルは剣を垂直に立てて防いだ。

体が押されて横滑りする。

フォーデルは気合を込めて剣を跳ね上げる。

そしてがら空きになった胴体に1撃を入れようとしたが、それより先にアイアンドールのつま先が跳ね上がる。

すぐに反応して盾で受け止めたが、次に指がフォーデルの両目につき入られる。

首を捻ることで目を潰されることを回避したが、額に当たった衝撃で首が仰け反る。

「くっ!」

仰け反ったことをチャンスと見て再びクレイモアを振り上げる。

視界がぶれながらも脳天を狙う大剣を剣の腹で受け止め、角度を変えて受け流す。

重たい獲物を振り下ろしきってアイアンドールの体が前のめりになる。

フォーデルは素早くアイアンドールの背後に回り込み、その首を切断しようと――。

「フォーデルさん!」

アイシャが悲鳴を上げる。

フォーデルの背後から別のアイアンドールがメイスで襲い掛かる。

アイシャが叫ぶ前に気づいていたフォーデルは盾で受け止める。

さらに振り回されるメイスを盾で受け止めていくが、腕がだんだん痺れていく。

盾もいつまでも耐えきれず、受け止めるたびにへこんでヒビが生まれる。

もう1体のアイアンドールもフォーデルに斬りかかろうとしたが、2人の兵士が魔物の前に立ちはだかる。

「え、援護する!」

「おう、感謝する」

メイスを連続で受け止め、避け続けながらもフォーデルは感謝して笑って見せる。

「さ、おまえたちは姫を助けに行きなさい! こいつらは私たちが相手にしていよう!」

「わ、わかりました! ほら、行こう!」

「わ、わかった」

アイシャに引っ張られるようにして、ティオはその場を離れた。


「ほら、これ食べて! 少しぐらい魔力も回復するから!」

「ありがとって、苦い!」

もらった丸薬を口に入れて噛み砕くと、一気に苦味が口の中に広がる。

けれど、いくらか体の気怠さが消えた。

アイシャに引っ張ってもらわなくても自分の足でちゃんと走れる。

「でさ、姫って誰のこと?」

「あそこにいる人だよ! あの金髪のお姉さん!」

彼女が指さしたのはシュミットと二人の兵士に護られた、いや、押さえられている女。

歳は20歳ぐらいだろうか。他の兵士たちと同じように軍服を着こんでいる。

腰まで伸びた輝く金色の髪を邪魔にならないように編みこみ、身を守る鎧と兜はつけておらず、代わりに軍帽を被っている。

そして化粧を控えた顔は凛々しく、目は猛禽類のような鋭さを持っている。

彼女はサーベルを手にシュミットが相手をしているアイアンドールに斬りかかろうとしているが、2人が必死になって押さえている。


もしかしたら貴族なのかもしれない。

ティオは勝手に頭の中で考えた。

だからアイシャたちは姫と呼んでいるのだろうか。

それに常識も少し足らないのだろうか? 

魔物を恐れないのは凄いけれど、無防備すぎないだろうか?


「えっとあの人のこと?」

「そ、あの人が傷つかないように守ってあげなきゃいけないの」

「やっぱり、あの人って貴族?」

「あー、うん。そんなところかな……」

なぜかアイシャは目をそらして誤魔化すように半笑いするが、すぐに表情を元に戻す。

「それよりも私たちも行くわよ!」

「うん!」

シュミットはアイアンドールと距離を保ちながら魔法で攻撃しているが、アイアンドールがかざす盾に阻まれてダメージを与えられない。

それに被弾することを恐れずにがむしゃらに近づこうとするので、強力な1撃を放つほどの魔力が集中できない。

シュミットは苦々しげに舌打ちを撃ちながら、牽制を込めて雷を放つ。


「ファイアスロアー!」

ティオもシュミットを助けようとファイアスロアーを唱えた。

掌から射出された炎がアイアンドールの体を飲み込もうと牙を向く。

けれど、アイアンドールが盾をかざせば、それだけで炎は阻まれて霧散する。

「あ、あれ!?」

「おい、少年! こいつらの盾は魔法防御に長けてる。体に当てなきゃいけないぜ!」

「なら、囲んでふるぼっこにするだけよ!」

アイシャがアイアンドールの横に回り込んで槍を連続で繰り出す。

頭のコアを破壊することが目的ではない。

バランスを崩す。または自分に注意を引かせるために穂先ではなく石突きで胴体を突いていく。

「アイシャ、無理するなよ!」

シュミットも電気の球体を撃ちながら、剣を片手に接近する。

アイアンドールは炎で鎧が焼かれるのも構わずに電気魔法を盾で防御。

さらに踏み込んで自分から間合いに踏み込んだシュミットの心臓を貫こうと剣を突き出す。

シュミットはわずかに横に移動して剣先を避けたが、その瞬間に薙ぎ払いに転じた動きに反応できず、側頭部を強く殴りつけられる。

「シュミットさん!」

アイシャがシュミットを心配して呼びかける。

「危ない!」

ティオが叫ぶ。

敵を前にしながら余所見をするという致命的なミスをした。

そのためにアイアンドールの蹴りをまともに腹に受けて、その華奢な体が吹き飛んで地面を転がる。

「おまえぇ!」

ティオが怒りに駆られるままアイシクルを発射する。

発射した氷柱は全て盾に防がれてしまうが、ティオは構わずに撃ち続ける。

2発、3発と撃つたびに体の力が抜けていくのがわかる。

けれど、崩れそうになる体を叱咤して、もう1つ氷柱を形成して放つ。

「くっそ、今のは利いた……」

よろけながら立ち上がったシュミットが呟きながら立ち上がった。

アイアンドールは全てを盾で防ぎながら、立ち上がるシュミットを今度こそ仕留めようとする。


「どけ、妾も戦う!」

止めようとする兵士を振り切って姫がアイアンドールに斬りかかる。

アイアンドールはシュミットから正面から斬りかかってきた乱入者から排除しようと剣を振りかぶる。

ティオも彼女を助けようとしたけれど、ついに魔力が底を尽いた。

腕を上げる力も無くして地面に座り込む。

アイアンドールが彼女の体を両断しようと剣を振り下ろす。

盾を持っていない彼女に剣を防ぐ方法はない。

人間の体が縦に両断される!

最悪な展開を予想したティオはきつく目を閉じて顔をそらした。


そして、乾いた破裂音に驚いて飛び上がってしまった。

姫――フラウディアの拳銃が刀身を半ばで圧し折る。

剣を無くしたアイアンドールは盾を前にして突撃――フラウディアを捕らえずに終わる。

そしてフラウディアは細身の剣を顎下から突き刺した。

剣は通り過ぎようとしたアイアンドールのコアを正確に居抜き、兜を貫通して後頭部から突き抜けた。


「え、あ、あれ……?」

なんだか予想外の強さにティオは茫然としてしまった。

「冒険者殿、よく頑張ってくれたな。あとは妾達が戦うから、あなたは後ろに下がりなさい」

フラウディアはその肩を優しく叩くと、うしろで慌てふためいている兵士に彼の看護を命じた。

「ふ、フラウディアさま、危険ですので今のような……」

「うるさいぞ。それよりお主らは負傷者の治療をしろ」

兵士はまだ言いたそうだったが、ジロリと睨まれてしぶしぶ引き下がる。

「ま、まって。アイシャは? アイシャは大丈夫なんですか?」

アイシャがアイアンドールに蹴られて何メートルも蹴り飛ばされたのを見た。

ティオを落ち着かせるように額に痣を造ったシュミットが答える。

「大丈夫だよ。彼女も今は治療中だ。それに……」

そう言っていじわるそうに笑って見せた。

「蹴られただけで死ぬような淑女に見えるか? 彼女はぴんぴんしてるよ」

「うるさいですよ、シュミットさん。動けるようになったら覚悟していてくださいね」

シュミットが言うとおり、アイシャは大丈夫だった。

上半身を越した彼女は兵士に回復治療をかけてもらいながら、恨めし気にシュミットを睨み付ける。

「アイシャ! だ、大丈夫……?」

「うん、なんとかね。おなかが痛いけど、すぐに治るわ。それより、隊長は?」

「隊長か? あの人ならシルバ・ヘッドを相手にしてる……」

次はティーガーの戦闘を描いていきます。

アドバイス・コメントがありましたらよろしくお願いいたします。

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