のどかな行軍
何事も起きません。ちょっとグダグダしてますので、ご了承ください。
視界が開けた草原を馬車が進む。
危険なモンスターが見当たらず、ただ何事もなく馬車に揺られている。
ティオも最初は張り切って外を眺めていたけれど、何時間も集中できるわけがない。
今は眠りそうになるのを耐えてしきりに目をこすっている。
「もうすぐ休憩するから、もう少しだけ頑張ってくれよ」
「了解です……」
返事をしながらも欠伸をして、景色が変わらない外を眺める。
エルサスの隣に座るハーメルは静かにしていて、時折地図を眺めては危険なポイントがないか確認している。
誰も喋らないまま、のどかな雰囲気が続く。
エルサスも無理に冒険者と喋ろうとせず、故郷でよく利いた歌を口ずさんでいる。
「お、なんだ?」
地面を強く蹴る蹄の音にエルサスが振り返ってみれば、2人の男が馬に鞭当てて駆けてくるのが見えた。
彼らはスピードを緩めると、馬車を引くロバの速さに合わせて近づいてきた。
馬に乗る2人は皮鎧を着こみ、腰にはハンデットソードを帯びている。
2人のうち灰色の髪を後ろに撫でつけ、顎髭を短く整えた男がエルサスに尋ねる。
「失礼、人を訪ねたいのだが、よろしいか?」
「はい、なんでしょうか?」
二人が乗っている馬は手入れがされて、尻に軍用の印がいれられている。
そして冒険者らしい格好をしているけれど、皮鎧は傷が1つもない新しいもので質も上等なものを使用している。
剣は鞘に収まっているからわからないけれど、きっと名工が創ったものだろう。
すぐに彼らが身分のある者と見抜いたエルサスは態度を低くして接する。
「うむ、20代後半の男で金色の髪を肩まで伸ばしていて、額当てをつけた我々と同じ格好をしている
人と話すのが好きな男で、一度会えば印象に残ると思うんだが……」
街を出てから誰ともすれ違っていないため、エルサスは申し訳なさそうにくびを横に振る。
「申し訳ございませんが、街に出てから人とすれ違っておりません」
「そうか……。わかった、邪魔をしたな」
「いえ、ご協力できずにすいませんね」
男は相方に声をかけると、また馬に鞭を当てて駆けて行った。
去っていく二人組を見送るエルサスは考えるように顎をさする。
「こりゃ、どっかの坊ちゃんが逃げ出したな」
「逃げ出した、ですか?」
「そうだ。よくあるんだよ」
あの二人と同じ経験をしたエルサスは苦笑いを漏らす。
「屋敷じゃ作法や算術、この国の歴史についての勉強をしたり、旦那様の手伝いだってしなきゃいけない。
そりゃ、外に出て息抜きもしたくなよな」
「なんか、やりたいことができなくてつまらなそうだね」
堅苦しいばかりの生活に同情してティオは悲しげに呟く。
「しょうがないな。いい生活をするためにはそれなりの犠牲が強いられるんだ」
「商売するって大変だね」
「おい、俺たちだって同情する余裕はないさ」
ハーメルが他人事のように言うティオに指摘する。
「俺たちだって自分の生活が一杯一杯だぞ。命がけのクエストか、安いクエストたくさんこなさないとすぐに金がなくなるんだからな」
「あ、そっか……」
ティオは自分たちの生活を振り返って項垂れる。
まだ冒険者になってから日は浅いけれど、それでも冒険者の辛さはわかってきた。
食事は宿で安くてボリュームのあるハンバーガーが食べられるけれど、食物繊維は草原で拾った薬草で取るしかない。
武器の研ぎもちゃんとした武具屋に頼まないといけないし、道具だってすぐに切れるから買わないといけない。
アルバージの店では欲しい道具は見つけたけれど、採取クエストばかりやっている彼に買えるわけがない。
「冒険者も楽じゃないよね……」
「お前、顔がころころ変わるな」
やれやれと肩をすくめたハーメルは振り返ってティオの頭をワシャワシャと撫でる。
「今は苦しいけど、頑張ればすぐにまともな金が入る。
だからそんな顔するんじゃないよ」
「な、なんか子供扱いされてない?」
「してるんだよ」
その言葉にエルサスは吹き出してしまった。
「まるで兄弟だな。まぁ、彼の言うとおり、だれだって頑張らなきゃいけないってことった」
なんだか二人に子供扱いされていることに納得できず、ティオはすねてそっぽを向いてしまった。
戦闘がないとうまく文章が進まない……。
私ってホント、バカ……。