護衛クエスト
主人公がまたクエストを受けることになりました。
「なぁ、ティオ。ちょっとこのクエスト手伝ってくれないか?」
今日はどんなクエストを受けようか迷っていると、髪を手に持ったハーメルに声をかけられた。
アゾルに紹介された仲間の一人で1度、採取系のクエストをやったことがある。
その時はモンスターに襲われたんだけど、後方で援護してくれながら的確な指示をくれて誰も傷つかずに切り抜けられた。
「別にいいけど、どんなクエストなの?」
「簡単な護衛クエストだな」
そう言ってクエストの紙をティオに見せる。
薬の配達者をネネト村まで送ること。
依頼者はこの街の商人で体調を崩した母に薬を届けたいそうだ。
街から村までは危険なモンスターや強盗の被害は報告されていないが、貴重な薬を確実に届けてほしいため冒険者は2、3人で受けてほしいとのこと。
町と村までは用意した馬車で移動するけれど、距離が離れているために1日は野宿する。
報酬とは別に食事まで依頼者が出してくれるそうだ。
クエスト内容を読み終えたティオは頷いた。
「うん、これなら大丈夫そうだ。やるよ」
「よし、じゃあ受け付けに行こう」
ハーメルは受け付けにいた男性スタッフにクエストの紙を渡す。
「クエストは2人で受けるのかい?」
「ええ、俺とティオでやります」
ティオとハーメルが契約書にサインしている間に地図を見ていたスタッフは眉をひそめた。
「ちょっと待っててくれるか?」
「はい?」
なにか気になることがあったのか、スタッフは引き出しから冒険者が達成したクエストの書類を探し始めた。
大量にある書類から2週間前ぐらいに達成したクエストの束と4日前に達成した書類を取り出し、さらにその中から目当てのものを探す。
素早く紙をめくっていくと、すぐに探していた物が見つかった。
「二人とも、ちょっといいか?」
スタッフはティオたちの前に地図を広げる。
「クエストには危険なモンスターの報告はないって書いてあるけど、実はそうではないんだ」
「え?」
「実は2週間で2回、アイアンドールの討伐がこの付近で2回行われてるんだ」
「アイアンドールが!」
驚いた二人が同時に声を上げる。
頷いたスタッフは地図にある道に沿った位置にある林と、道から離れた草原の2か所に×印をつける。
「討伐した冒険者の報告が奇妙だったから覚えてたんだ。奴らはチーム組んでなにかを探してたみたいだ」
「チームを組んで……」
スタッフの言葉にハーメルは不安そうに俯いて呟く。
ティオも初めて戦った時の記憶が新しく、信じられないと長い溜息を吐いて両手で顔を隠した。
スタッフは一気にテンションを落とした二人を慌てて元気づける。
「だ、大丈夫だよ。どっちもベテランの冒険者が討伐してくれてるし、こっちが攻撃しなければ向こうも無視してくれるって!」
「本当に?」
「本当だよ。だからアイアンドールを見つけても戦おうとしちゃダメだ。とりあえず逃げてここに報告するんだ」
それで安心できるわけないけれど、1度負けた相手にいつまでもびびっていたら冒険者は務まらない。
ティオはもう一度息を吐いて、自分の頬をぺしぺしと叩いた。
「よし、アイアンドールがなんだ! あ、あんな奴倒してやる!」
「ティオ、言葉が詰まったらかっこ悪いよ」
「う……」
せっかく自分を励まそうとしたのに、ハーメルに静かに突っ込まれてしまい恥ずかしそうに俯いた。
「あー、とりあえずクエストは受けるんだね」
「は、はい。受けます」
「よし、それじゃあ依頼者に連絡するからそうだな……。30分後にまたここに来てくれ」
「わかりました」
契約書を受け取ったスタッフは依頼者に護衛ができたことを伝える。
受け付けのうしろに置いてある人の頭ほどもある水晶に触れて、微力の魔力を流す。
すると水晶は仄かに青く光を帯び始めた。
同じ頃、主に言いつけられて馬車のそばでバックに入れていた、拳より小さめの水晶が強く青色に光り出した。
それに気が付いた従者は読んでいた本をしまう。
「おい、ブド。護衛が見つかったみたいだから仕事に行ってくると旦那様に伝えといてくれ」
「わかった」
仲間に伝言を頼むと従者は素早く馬車に乗り込んで冒険者ギルドに向かう。
この水晶は魔力を通すことでセットになっている小型の水晶に光りを伝えることができるアイテムだ。
魔力の流し方によって色を変えることができ、今回は青に光れば護衛が見つかった。赤に光れば日を改めてくれという意味になっていた。
これは軍隊でも狼煙として利用されており、雨の火でも影響が出ないため重宝されている。
護衛対象が来るのを待っている間、ティオとハーメルは簡単な打ち合わせをしていた。
「それじゃあ、前衛はティオだけだけど、大丈夫?」
「うん、ちゃんと守るよ」
エルフ族のハーメルは弓矢を使う冒険者。
長身ですらりとしたエルフ特有の体系をしている彼はティオよりも体格に優れているけれど、なぜか接近した戦闘が苦手である。
が、弓矢だけでなくアイテムや回復系魔法を使ったサポートは得意なため、仲間たちから頼りにされている。
「うん、サポートはちゃんとするからお願いね」
「りょうかい」
他に二人が持っていくアイテムも確認していく。
ティオは前衛を1人で務めるためにアイテムは少なくした。
傷薬と砥石、閃光弾や爆竹、小型のナイフなど。
ハーメルは弓矢と予備の弦、複数の解毒剤と閃光手榴弾や爆竹の他に爆発するとモンスターが嫌がる臭いが混ざった発煙手榴弾も用意した。
発煙手榴弾を初めて見たティオは手榴弾の中から薬を少しだけ撮んでまじまじと眺める。
そして試しに嗅いでみたら、鼻腔内に一杯の香辛料を詰め込んだ痛みが走り、蒸せて椅子から転がり落ちる。
まさか発煙手榴弾の中身を嗅ぐとは思わなかったハーメルは呆れて肩をすくめる。
「なにやってるの?」
尋ねてみるけれどティオは何回も咳き込むばかり。
しょうがないので悶えているのを押さえて、むりやり水筒を飲ます。
水筒の半分を飲み干してティオもやっと落ち着いたけれど、顔は真っ赤で目は涙目になっていた。
「ど、どんな臭いかなーって思ったんだけど……酷い臭い……」
「当たり前だよ。モンスターを追い払うためのものなんだから……」
ハーメルの憐れむような視線に傷ついて落ち込んでいると、スタッフが護衛対象である従者を連れてやってきた。
「待たせたな、彼が護衛対象であるエルサスさんだ」
スタッフが30代の男を紹介する。
エルサスと紹介された男は笑って手を差し出す。
「薬を守るのがあんたらの仕事だが、一応でいいから私も護ってくれよ」
「ティオです。よろしくお願いします」
「ハーメルです。あなたもちゃんと守りますよ」
ティオたちも自己紹介して指し出された手を握る。
「よし、それじゃあ行こう。馬車は表に止めてあるんだ」
そう言ってさっそく2人を馬車に案内する。
こうしてティオは護衛クエストは始まった。
種族紹介
人族
人間のことです。
能力は平均的で突出した能力はないけれど、訓練と経験を積めばいろんな戦い方に対応できる。
魔法も攻撃魔法、回復魔法両方を使える。
エルフ
長身長躯で整った顔立ちをした耳の長い種族。
人間よりも身体能力が高く、生まれながらの弓の名手である。
が、魔法は回復魔法しか使えず、火薬を使った銃を嫌う者が多い。
ドワーフ
背丈が低く筋肉質な体躯で、素早く動くことは苦手だけど力はとても強い。
男性は髭を生やすことが伝統で、逞しい髭は彼らの誇りである。
魔法は使えないけれど、独自の技術で開発した銃の破壊力は圧倒的だ。
魔族
耳が尖り、金色に輝く目をもつ種族。
人間のように地域によって肌の色が違ったり、額に角や第3の目がある。
身体能力に優れ、魔法耐久力に優れている。
回復魔法はできないけれど、豊富な攻撃魔法を駆使する。
こういう設定ってまとめておいたほうがいいのかな?