表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/56

クエスト終了

ゴブリンを見事に倒した2人、しかし喜んでいるのもつかの間……?

二人が喜んで手を打ち合わしていると、またあたりの草むらが騒がしくなり始める。

驚いて辺りを見渡せば、10匹以上のゴブリンがティオたちを囲もうとしていた。

仲間が3匹も殺されたことに腹を立てているようで、叫びながらしきりに武器を木や地面にぶつけている。

「や、やばそうっすね……」

「まずいよ……」

耳を澄ませば遠くからもゴブリンの会話する耳障りな声と武器をぶつける音が聞こえる。

ティオは目を囲もうとするゴブリンたちから離さないようにしながらポーチを探る。

焦っているために見つけるのに手間取ったが、なんとかこの場を打開できるアイテムを掴むことができた。

ゴブリンたちの気を引かないようにゆっくりポーチから取り出したティオは小声で呼びかける。

「数えるよ」

そう言ってアゾルに持っていた物を見せると、彼も頷いていつでも逃げられるように身構える。


ティオは3本たてた指を折り曲げる。

3……。

遠巻きに5匹のゴブリンがティオたちの離れた位置から弓に矢をつがえて引き絞る。

2……。

さらにその奥から群れのボスだろうか、赤い角のついた兜と傷だらけの胸当てをつけたゴブリンが現れる。

1……。

すったマッチの火で球体から伸びた導火線につける。

火花を散らして火が導火線を伝って球体に近づいていく。

その音がティオに心強く感じて笑みを――緊張で歪んでいるけれど――浮かべる。

ゴブリンは仲間が冒険者を囲んだことを確かめると、持っていた棍棒を木にぶつけて攻撃の合図を出そうと――黄色の球体が顔にぶつかった。

「逃げろ!」

ぐるりと回れ右してティオとアゾルが走る。

一瞬遅れてゴブリンたちが追いかけようとしたが、視界を眩い閃光に視界を潰されて悲鳴を上げる。

閃光手榴弾。

球体の中にある火薬が炸裂して閃光効果を数倍に高めた(どうやって高めるのかはティオも知らない)キイロデキノコに衝撃を与える。

すると眩い閃光が周囲の生き物の視界を一時的に麻痺させることができる。

その威力を証明する様に直視してしまったゴブリンたちは目を抑えてしゃがみ込んでいる。

視力が戻るには時間がかかるため、逃げる誰も二人を追いかけることはできなかった。

「よ、よし、うまくいった!」

「このままダッシュでにげるっす!」

眼瞼を強く閉じていたのに目が白黒にちかちかするけれど、2人は一目散に街に向かって走って逃げた。


冒険者ギルド。

「おかえりなさい。キノコは採取できた?」

「で、できました……」

あれから勢いに任せて街まで走り切ったティオとアゾルは疲れ切った状態でで冒険者ギルドに辿り着いた。

二人は採取したキノコをスタッフに渡す。

スタッフは受け取って契約書と見比べてキノコが全てそろっているか確認すると、満足そうに頷いて契約書に冒険者ギルドと自分の名前のハンコを押した。

「あとこれゴブリンの耳っす」

次に渡したのは切り取ったゴブリンの耳。

スタッフは平気な顔でそれを素手で掴むと、木箱に入れて別の紙になにか書いていく。

「よし、これで二人は星1つのモンスター討伐ができるようになったわ。おめでとう。

これ、報酬の1500エルクね」

そう言って1500エルクを代表してアゾルに渡した。

「はい、お疲れ様。次も頑張ってね」

「ありがとうございましたー」

報酬を受け取ったティオたちは疲れているけれど、満足した表情で建物を出て行った。


いやー、今日は疲れたッすね」

「そうだね、まさかゴブリンと戦う羽目になるなんて……」

冒険者ギルドを出た2人はそのまま宿に戻らず、道具屋をぶらついていた。

道具屋には今日の危機を救ってくれた閃光手榴弾の他に複数の調合された薬、モンスターに飲ませる毒などが売っていた。

興味に引かれるまま、ティオは使い道がわからない道具を手に取る。

「でも、倒せたからいいじゃん。これでモンスター討伐ができるっすよ!」

「あれ、アゾルって星1つのモンスター倒したことないの?」

「実はないんす。今まで採取クエしかやったことないんすよ」

そう言って恥ずかしさをごまかすように笑って頭を掻く。

「そうだったんだ、ほとんど僕と同じだったんだね」

「しょ、しょうがないっす! 俺だって冒険者始めてまだ一週間ぐらいだもん!」

アゾルの様子がおかしくて笑ってしまったが、一週間ぐらいしか経っていないならしょうがないかもとティオは勝手に納得する。

それよりも初めてのクエストで仲間と協力して――星1つとはいえ――モンスターを倒すことができたのだ。

それが嬉しくてまた1人クスリと笑ってしまう。

自分のことを笑っていると勘違いしたアゾルは目つきを悪くしてティオを睨み付ける。

その視線に気が付いたティオはすぐに謝る。

「ご、ごめん。えーっと、思い出し笑いしてた」

「なんすか、それ? まぁ、いいか……」

アゾルはどこか納得できなかったが、しつこく聞くのも悪いと思ってしぶしぶ引き下がる。

店の奥にかけられた時計をみて、晩飯の時間にまだ時間があることを確かめる。

そして、いい加減に荷物を置いていきたいので宿に戻ろうと思った。

「ティオ、俺先に宿に戻って荷物おいてくるッす。あとで飯食いに行かないすか?」

「あ、いいよ」

「ティオもギルドの宿にいるっしょ。 なら6時ぐらいに1階で合流しない?」

「わかった。それじゃ、またあとでねー」

「うぃーっす」

アゾルは1度大きく背伸びをしてからギルドの宿があるほうへ歩いて行った。


ティオは1人になると改めて今日の出来事を思い出すと、嬉しさのあまり一人でクスリと笑ってしまった

とりあえず初めてのクエスト終了。

やったね、ティオ! 受けられるクエストが増えたよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ