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第四十九話 悪魔を退けるために

サブタイトルが!思いつかない!

第四十九話


 翌朝。

母親が用意してくれた朝食を、みんなで囲んで食べた。温かいパンとスープの香りに包まれて、昨日の晩と同じように和やかな空気が流れた。


食後、片付けを手伝っていると、レオが顔を上げて言った。

「ねぇ、せっかくだしセラフィリアに公国を案内しない?」


「いい考えだな」と、アイゼンがすぐに同意する。

「入国したとき、物珍しそうにキョロキョロしていたからな。そんなに興味があるなら、是非とも公国の技術を彼女に見せてやるべきだ」


セラフィリアは少し驚いたように瞬きをして、遠慮がちに微笑んだ。

「私などが……よろしいのでしょうか」


「もちろんだよ」僕は笑って返した。

「みんなで行こう」



街へ出ると、公国の象徴とも言える大時計塔がまず目に飛び込んできた。空を突くほどの高さで、歯車の音が規則正しく響き、太陽の光を反射して輝いている。セラフィリアは思わず立ち止まり、見上げながら小さく感嘆の声を漏らした。


次に訪れたのは技術ギルド。ギアフロントが例の事件で解体されて以降、公国最大手となったギルド“アイアン・タイタン”を見学。建物の奥からは金槌の音や、蒸気の吐き出す音が絶え間なく聞こえる。職人や技術者たちが忙しなく働き、子どもたちが目を輝かせてその様子を眺めている。

「ここでは、誰もが技術を学べる。生まれも種族も関係ない」アイゼンが説明する。

セラフィリアは真剣な眼差しで聞き、何度も頷いていた。


昼頃には屋台に立ち寄り、皆で串焼きや焼き菓子を分け合って食べた。香ばしい匂いが漂い、アネッサは「おかわり!」と元気に叫び、クラリスは呆れ顔で財布を押さえていた。僕も思わず笑ってしまう。ほんのひととき、戦いの影を忘れられるような平穏な時間だった。



――だが、その平穏は唐突に破られた。



「勇者殿」

背後から声をかけられ、振り返ると公国の兵士が立っていた。兜の下の表情は固く、周囲の賑わいとは対照的に緊張感が漂っている。


「大公閣下がお呼びです」


その一言で、胸の奥が強く締めつけられた。

屋台の賑わいも、甘い匂いも遠のくように感じる。仲間たちも自然と口をつぐみ、互いに視線を交わす。


――いよいよだ。

大公と、そして魔王を交えた話し合いが。


僕は深呼吸をして、兵士に頷いた。


 

 評議の間に足を踏み入れた瞬間、空気が張り詰めた。

広々とした石造りの部屋。長い楕円形の卓を囲む椅子には、すでに二国の要人たちが座している。


正面には大公エルドリヒ。その背筋は真っ直ぐに伸び、深い皺の刻まれた顔には威厳が宿っていた。その隣には参謀らしき老人。そして護衛として控える将軍ヴァルディスが鎧姿で立つ。


対面に座すのは魔導国。中央にいるのは漆黒の衣を纏う魔王ヴァレリア。その傲岸不遜な瞳の奥には測り知れない力が覗く。その背後には落ち着いた様子で手元の書類をめくる秘書ノワール。こちらに気がつくとぺこりと一礼してくれた。その隣にはロザリンドがいた。外交の場に連れてくるほどに信頼を得たようだ。そして壁際には、圧倒的な威容を放つ護衛のゴルド・レグナ。空気を吸うだけで喉が締まるような威圧感を放っていた。


僕たちが席につくと、大公が口を開いた。

「それでは――会議を始めよう」


静まり返る室内。息を呑む音すら響く。


 大公エルドリヒは玉座に似た椅子へ身を預け、鋭い眼差しを僕たちに向ける。


「――では、第一の議題に入る。此度の戦の影に潜んでいた存在、悪魔族とやら。その真の目的を、改めて明らかにしてもらおう」


低く威厳のある声に促され、セラフィリアは一歩前に出た。

彼女の白い指先はわずかに震えていたが、唇を結び、覚悟を決める。


「……はい。悪魔族の目的は、この大陸を――そのすべてを、悪魔族に変えてしまうことです」


場の空気が一段と張り詰める。

エルドリヒの目が細められ、ヴァルディスは腕を組んだまま目を少し見開いた。

ヴァレリアは興味深げに視線を向け、ノワールとロザリンドは無言のまま筆記と観察に集中する。


セラフィリアは続けた。


「……彼らは繁殖という営みを持ちません。その代わりに、瘴気――彼ら自身のオーラを異種の者に注ぎ、魂や姿を変質させることで、同じ悪魔族に変えてしまうのです。かつて彼らのいた大陸は……すでに、すべての生き物が悪魔族に塗り潰されました」


声が揺れ、言葉が詰まる。苦い記憶を思い出し、言葉を紡げないでいるのだろう。

沈黙が落ちかけたその時――


「だから、放っておけばこの大陸も同じになる」

僕はすかさず言葉を継いだ。

「僕らが生きてきた文化も歴史も、種族の違いも、全部……消えてなくなる」


ヴァルディスは重々しく息を吐いた。

「……まったく、背筋が凍るな。この大陸で内輪揉めなんかしてる場合じゃないってことか」


エルドリヒは深く頷き、低く呟く。

「余の治める地も、余の民も……全てが奪われる。断じて許すわけにはいかぬ」


ヴァレリアはふっと笑みを漏らした。

「悪魔族……まるで寄生虫のごとき在り様だな。関わりたくなどないが……放置しては我が魔導国も呑み込まれる。つまらん奴らよ」


ノワールが静かに補足する。

「つまりは、種の存亡を賭けた戦争……否、侵略の完遂が目的ということですね」


ロザリンドが淡々と告げる。

「彼らは滅ぼすのではなく、同化する。その結果、こちら側が『滅びた』と誰も認識できなくなる。それが最も恐ろしい」


エルドリヒの鋭い視線がリアンへと戻る。

「……承知した。余もまた、余の民を護るために、この脅威を真に受け止めねばならぬ。ならばどうやって防ぐか、それが肝要になろう」


空気はさらに重く沈んだ。

だが、共通の敵の恐ろしさが全員の胸に刻まれたのは間違いなかった。

 評議の間に重苦しい沈黙が落ちた。

だがそれを破ったのは、ヴァルディスだった。


「……瘴気とやらで仲間を増やす、ねぇ……。厄介だな。どう防ぐ? 無策のまま挑むわけにはいかんでしょう」


豪快ながらも冷静な声が場を震わせ、エルドリヒも頷いた。

「確かに、余も同感だ。真の敵が見えた以上、次に語るべきは如何にしてそれを防ぐか……この大陸を守る術よ」


ヴァレリアが唇に笑みを浮かべ、椅子に背を預ける。

「その通り。侵略など断じて許さん。魔導国の当代魔王として、国民を守るのは余の役目だ。――さて、何処から語るべきか」


ノワールがすかさず静かに補足した。

「現状の情報を整理すべきでしょう。彼らは瘴気を媒介に変質を強いる、とセラフィリア殿は申された。ならば、瘴気を遮断する手段が有効になるはずです」


ロザリンドは腕を組み、理知的な声で続ける。

「その瘴気とやら、悪魔族の全員が放つことができるのか?それとも選ばれたものだけか?……兵站を断つのと同様、瘴気の源を叩くことが急務となる。戦場での小競り合いに終始すれば、逆に数を増やされかねない」


リアンはセラフィリアに視線を向ける。

彼女は小さく頷き、勇気を振り絞って口を開いた。


「……はい。瘴気はすべての個体が放てますが、力の弱い個体は相手を弱らせる、体調を崩させる程度の影響しか与えられません。魂を変質させられるほどの瘴気を放つのは悪魔族の中でも上位の者たちです。ですから、変質を防ぐには……まず、上位個体討つことが最も効果的です」


「上位個体を、か」

ヴァルディスが低く唸る。

「ならば少数精鋭で上位個体を狙った討伐戦になりうるな。敵兵の攻撃はこちらも部隊規模で防ぎつつ、腕の立つ連中を討伐に送り込む……というのが理想か」


エルドリヒは顎に手をやり、深く考え込む。

「……防衛線を築きつつ、討伐部隊を運用する形か。だが、果たして討伐の役を担える者は、どれほどいるか……」


ヴァレリアが僕たちへ視線を向ける。

「結局は、そなたらのようなある程度戦えて、身軽に動ける者が必要となるわけだな。余の軍の中にも適任はおろうが……」


「戦術を誤れば取り返しがつかない」

ロザリンドの声は冷静そのものだった。

「敵はただ滅ぼすのではなく、取り込み増える。小さな敗北が大きな敗北に直結する。ゆえに、従来の戦争とは全く異なる思考で挑まねばならない」


エルドリヒは重々しく頷き、場を見渡した。

「……よい。此度の敵に対しては、従来の枠に囚われぬ策を練らねばなるまい。余の民も、決して瘴気の餌とはさせん。ゆえに、この場にいる全ての力を借りることとなろう」


評議の間に緊張が再び張りつめ、会議は「いかに戦うか」へと深く沈んでいった。

 

 ヴァルディスが肘を卓に突き出すようにして言った。

「で、瘴気で変わった連中の強さは、どう決まる? 元の力を保つのか、それとも瘴気の量で強弱が変わるのか――それによっちゃあ、戦法すら変わってくる」


皆の視線がセラフィリアへ向く。彼女は少し肩をすくめ、言葉を選ぶように口を開いた。


「……元の特徴は、かなり色濃く残ると考えてください。つまり、もともと力のある者が瘴気を注がれれば、それだけ厄介な敵になります。元の強さがそのまま敵となって襲いかかると思っていただいて差し支えありません」


老練な参謀が穏やかに眉を寄せる。

「なるほど。では、もし瘴気を注がれた者が元に戻る術はあるのか。治療法や解呪の類は――」


セラフィリアの頬が一瞬落ち込み、声に濁りが混じる。

「私の知る限りでは、元に戻す術はありません。瘴気は魂や姿形を深く変質させる。もしかしたら私のように運良く堕天で済むものもいるかもしれません。……ですが、完全に元通りにする方法は、私たちにも見つからなかったのです」


その告白に、卓の上に沈黙が重く落ちる。

 

「……一点、誤解なきように申し上げます」


セラフィリアが胸の前で両手を握りしめ、勇気を振り絞るように声を出した。

「瘴気、それは悪魔族そのもののオーラ……彼らの“存在”に宿るものです。ですから、接触しない限り悪魔化の心配はありません。直接、彼らが瘴気を注ぎ込むことでしか、他の種は悪魔族にはならないのです」


「ふむ、ならば接触を避ければ民の安全は保たれるか」

老参謀が腕を組み、重々しく言う。


セラフィリアは小さく首を横に振った。

「……理屈の上では。しかし、実際はそう単純ではありません。彼らは数がとても多いのです。そして、統率は一枚岩。全ての者が同じ種族であり、同じ目的のために動きます。かつて私が暮らしていた大陸は、既に悪魔族に統一されています。一つの大陸すべてが敵、ということです」


空気が張り詰めた。ロザリンドが息を呑んだのがわかった。

「全て……?」


「はい」

セラフィリアの声は震えていた。

「人も、亜人も、獣も、精霊も、そして我々天使族も……誰一人残っていません。瘴気を注がれ、姿を変えられ、魂すらも塗り潰されて……」

そこまで言うと、彼女は言葉を飲み込んだ。


静寂を破ったのはヴァレリアの低い笑みだった。

「なるほど。つまり奴らは、散り散りの群れではなく、秩序を持った“軍勢”というわけだな。しかも無尽蔵に近い数……骨が折れる」


「ただの数の暴力ではありません」

セラフィリアが必死に付け足した。

「彼らには常套手段があるのです。強者に対しては、まず雑兵を大群でぶつけます。目的は討ち取ることではなく――瘴気を浴びせ、吸わせ、じわじわと弱らせること。そうして力を削ぎ落としたところに、上位の悪魔族が現れ、直接瘴気を注ぐ……気づけば味方の最大戦力は、敵の手に落ちている。そうして……私の一族も滅ぼされました」


卓の上に冷気が落ちたような気がした。僕の胸にも重い圧迫感がのしかかる。

(つまり、強い者ほど狙われ、悪魔に取り込まれる可能性がある……!)


ヴァルディスが腕を組み、険しい表情を見せる。

「厄介だな。つまり我らの主力が、奴らの策略の矢面に立たされる。疲弊させられたうえで、上位者に喰われる……それじゃあ守るどころか、逆に戦力を奪われるぞ」


「だが、避けては通れまい」

ロザリンドが冷静に応じる。

「雑兵の群れを突破せずして上位個体には届かない。結局、戦術と戦力配分が鍵になる」


ノワールが静かに言葉を継ぐ。

「ならばこそ、“少数精鋭”が必要です。雑兵の群れに囚われず、上位個体を迅速に討つ機動部隊。瘴気に長時間晒されるのを防ぎ、悪魔化のリスクを減らすために」


僕はセラフィリアの横顔を見た。彼女の唇は震えていたけれど、その瞳には確かな光があった。

「……それが、唯一の対抗策です。上位個体さえ討てば、悪魔化の決め手は受けません」


エルドリヒが深く頷き、重々しく声を落とした。

「敵を知ると知らぬでは大きな差がある。よい情報だ。ならば、まずは情報網の強化。そして、討伐部隊の編成を二国で行うべきだ。雑兵の群れに押し潰されぬよう、国ごとに役割を分担し、互いに支援する体制を築かねばならぬ」

 

 僕たちの席の向こうで、ヴァルディスが荒々しく笑うように言う。

「あとは防衛戦だな。向こうの頭数を増やさせない意味も込めて、民を守るための防御ラインを作る」


ロザリンドは地図を広げ、ペンを持ってセラフィリアに尋ねる。

「セラフィリア殿、敵の移動手段についても聞かせてほしい。我々の防衛線は、どこに張ればよいかを決めるために」


彼女はやや間を置き、そして答えた。

「彼らは歩いたり飛んだり以外にも、空間を裂くような術で移動することができます。ただ、それは綿密な準備を要します。空間の裂け目を作るには、入口、出口共に座標を正確に指定しなければなりません。短時間で無作為に現れる種族ではないのです」


ヴァレリアが興味深げに顔を傾ける。

「ふむ。準備がいるとなれば、侵入点は限定されるな。現時点では王国は確実だが、王国領は広い。一箇所ではないだろう。出口候補となる場所にはなにか特徴があるのか?」


セラフィリアは唇を引き結び、低く言う。

「……彼らの術は空間を開いたあと、すぐに元通りにはなりません。先日の王国の空にもひび割れが残っているように、領内を探せばそのような場所が見つかるかもしれません。また、出口側に建造物があると上手く空間を開くことができないので、侵入箇所は屋外に限定されるでしょう」


 老参謀が重く頷く。

「なら、まず王国領内のひび割れをくまなく探す必要があるな。これは人海戦術しかないじゃろう。次に公国と魔導国が共同で、王国領の国境警備を強化し、侵入が予想される地点を集中監視する。加えて、情報網を強めて準備活動の兆候を捕捉する」


ノワールが冷静に補足する。

「情報網であれば我らの伝令にお任せを。『ハヤブサ』部隊であれば王国から魔導国まで一昼夜です」


ロザリンドが淡々と返す。

「具体的には――①ひび割れを捜索するための歩兵及び発見の報告を行う伝令②上位個体の討伐を担える少数精鋭部隊③戦場となるであろう王国の国民を適切に避難、誘導する部隊④民心を保つための治安部隊と医療班。これを連携させる必要がある」


僕は、それを聞きながら目の前に浮かぶ現実を噛み締めた。

(……僕達はただ剣を振るうだけでは足りない。情報を掴み、精密に動き、民を守る。全部が同時に動かなければならないんだ)


僕はそっと目を上げ、皆を見渡した。僕達にもきっとできることはあるはずだ。

「僕達もできる限り協力します。ひび割れの探索の部隊に加えてください」


ヴァレリアが冷ややかに笑った。

「もちろんそのつもりだ。魔導国は匂いを追うことに優れた犬族と狼族の亜人部隊を動かそう。公国は地上部隊と工房の技術を提供せよ」


 全体を見渡しながら、静かに付け加える。

「われわれ同盟国が協力しなければ、これを防ぎえぬ。よって余は、討伐部隊の共同編成を提案する。詳細は追って詰めるが――まずは偵察網の強化と、王国領内の異常地点の特定にお互いの力を尽くそうではないか」


議場に重苦しい沈黙が流れたあと、大公エルドリヒが深く頷き、静かに口を開いた。


「……さて、敵の性質と戦術は理解した。ならば、いかにしてこれに立ち向かうかを定めねばならぬ。討伐部隊の編成こそ急務であろう」


その言葉に場が再び緊張感を帯びる。真剣な眼差しが互いを見渡す中、ヴァレリアが腕を組み、唇の端を持ち上げて言い放った。


「討伐隊、か…。ならば、その隊長には余から推薦したい者がいる。先の戦争で誰よりも暴れ、王国の誇る最後の剣を屠った猛将――……」


言葉を切った彼女の赤い瞳が一人を射抜く。


「……ゴルド・レグナよ。お主を討伐部隊の指揮に据えるのが妥当だろう」


場の視線が一斉に黄金の戦士へ集まる。ゴルド・レグナは堂々と立ち上がり、腕を組んだまま短く答える。


「……構わん。相手がいかなる怪物だろうと、この槍で貫くのみだ」


その言葉には一切の虚勢も迷いもなく、ただ揺るぎない闘志のみが宿っていた。


続いて、エルドリヒが力強く言葉を重ねる。


「よかろう。しかし我らは同盟国。魔導国の将一人に任せきりにするわけにはいかぬ。余の軍から副官を出そう」


すると老参謀が一歩進み出て、エルドリヒに進言する。


「大公。副指揮官には、わが公国最強の将を推挙いたします。戦場において勇と智を兼ね備えたる者……ヴァルディス将軍こそ相応しゅうございましょう」


エルドリヒは重々しく頷くと、ヴァルディスを見やった。


「ヴァルディス。余の名において命ずる。討伐部隊の副指揮官を務め、ゴルド・レグナと共に戦え」


豪快な笑みを浮かべたヴァルディスは拳を胸に当て、即座に答える。


「御意! この身が砕けようとも必ずや任を果たしてみせましょう!」


場に力強い声が響き渡る。その瞬間、重苦しかった空気に、わずかだが確かな希望の光が差した。


ノワールが控えめに言葉を添える。

「……これで討伐部隊の柱は固まりました。あとは二国から精鋭を募り、規模と編成を整える必要がございます」


ロザリンドも冷静に頷き、低く言葉を重ねた。

「指揮官に猛将、そして副に大局を読む将軍。理想的な布陣だ。あとは兵の質をどう揃えるか、そこが肝要だろう」


エルドリヒが締めるように宣言する。

「よし。ゴルド・レグナを討伐部隊の総指揮官に、副にヴァルディスを任ずる。これを以て決定とする。細部は両国の参謀で詰めよ」


議場に頷きが広がり、会議は次なる段階へと進んでいく――。

読んでくださってありがとうございます。

軍事や戦術などは専門の方やマニアの方が見ればなんじゃこりゃとなるかもしれません。趣味なのでフワッとしています。許してください。

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