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17時までのアルバイトを終えると休憩室でスマホゲームで時間を潰した。
15分くらいしてスタミナが全て消化出来ると居心地の悪い休憩室を出てコンビニへと向かった。
秀悟が仕事を終えるのが17時。そこからこのガソリンスタンドに着くまでに最低30分は掛かる。そこでコンビニに寄る事で純平自身の徒歩での移動時間も含めての時間潰しという訳である。
もちろんあの休憩室に残っていても良いのだが他の従業員もひっきりなしにタバコ休憩を取るのでタバコ臭い上に居心地も悪い、その上トイレは和式で臭い。
やがてコンビニに着いたので純平はトイレを借りて用を足した。
そして何も買う事はせずガソリンスタンドへと向かっていった。
ガソリンスタンドに着くと秀悟が店長と談笑していた。
「おーい純平〜来たぞ!」秀悟の明るい声がガソリンスタンドに響いた。
秀悟は身長は純平と同じくらいだが純平とは対照的にずんぐりむっくりな体型をしている。
そしてよく通る声でいつも笑顔なので周りからの信用は厚かった。
「ごめん、お待たせ。ちょっとコンビニでトイレ行ってた。」純平がそう秀悟に言い訳をした。
「梶原〜ここのトイレそんなに汚いか?」店長がそういたずらっぽく純平に問いかけた。
2人だけの時はこんな事は言わないが秀悟が居るだけで心なしか純平にもフレンドリーに接する様になる。
この現象はこの店長に限らず高校時代でもそうだった。純平が喋る時は十中八九隣に秀悟がいる時だ。
「店長〜俺この前ここのトイレ使ったんですけど普通に汚いですって、だから純平は正しい事をしています。」秀悟がそう店長に返した。
「やっぱそう。今度バイトの子達に言っとくわ。ところで今日は洗車してく?」店長は秀悟に営業を掛けた。
「すいません。今から純平と飲み行くんでまたお願いします!」秀悟は店長の目を見て申し訳なさそうに言った。
「オーケーオーケー、また来てね。今日の飲み会楽しんでね。」店長はそう明るく返した。
「じゃ、純平横乗れよ。とりあえずヒガオカのコインパーキングに停めるからよ。」ヒガオカとか東岡崎駅の地元民独自の略し方だ。
東岡崎駅周辺には飲み屋が何軒かあるし、近くにはカラオケBOXもあるので夜を明かすにはもってこいだ。
純平は車に乗り込むと、「じゃあよろしく。」と秀悟に声を掛けた。
「オーケー、じゃあ安全運転で行きますか。」秀悟は正面を向いていたがその横顔は微笑んでいた。
車のエンジンをかけるとガソリンスタンドを爽快に後にした。
…(にしてもなんで性格が正反対なあの2人は仲良いんだろう?)店長は昔からこの2人の関係性が疑問でしょうがなかった。
フレンドリーで誰とも仲良くなれる森と人間関係に臆病な梶原。この2人はまさに対照的な性格だ。
それでも2人は仲が良く今でも飲みにいっている。
「店長!お客様のクレジットが使えないんですけどどうします?」バイトの子の切羽詰まった声で店長は我に返った。
「今から行くわ。」店長の頭に浮かんだ疑問はどこかへ飛んでいった。