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純子は電車を乗り継ぎ自宅のある岡崎市に帰ってきた。
駅前のコインパーキングで精算を済ませると車に乗り込む自宅へと帰っていった。
自宅に戻ると冷凍庫に置いてあった冷凍パスタを温めて簡単な昼ご飯にした。
彼女にとって食事は単なる栄養補給に他ならなかった。彼女は食事だけでなく様々な出来事に対して無関心だった。純子がこういった性格に変わったきっかけは元夫の不倫が原因だった。それまでは人並みにコミュニケーションが取れていたが愛する夫の不倫、そして夫を問い詰めるとあっさり離婚を切り出されてしまった。そこから純子は感情を失った様に様々な出来事に対して無関心になった。
1人息子の純平も夫が引き取りを拒否したので仕方なく純子が引き取る事になった。純子は夫の不倫が発覚してから純平に対して何一つ関心を示さなかった。しかし彼女に残っている倫理観が純平を育児放棄しなかった唯一の理由だった。
冷凍パスタを胃袋に詰めて洗い物を済ませると軽く昼寝をしようと布団に向かったすると突然携帯電話が鳴り出した。姉からの電話だった。
姉はよく出来た人間で3人の子育てを済ませ既に孫も産まれていた。
ただ純子は姉に対して劣等感など皆無だった。
その為姉とはLINEを通して息子に関する連絡はとっていった。
「もしもし、お姉ちゃんだけど純ちゃん今大丈夫?」
純子が電話をとると受話器の向こう側から姉の明るい声が聞こえてきた。
「うん、大丈夫だよ。」そう純子答えた。
「ありがと。それで早速だけど純平くんどうだった?」
姉は早速純平に関する事を切り出してきた。
「純平、どうやら癌みたいで余命半年なんだって…」
純子は淡々と答えた。
「あ、そうなんだ…」姉は言葉を繋げられなかった。
「でも、お姉ちゃん気にしないで、純平も受け入れていたし、私も受け入れているから。」
純子は姉の事を気遣ってそう声を掛けた。
ただ純子の口ぶりはショックを受けていながら気丈に振る舞うというよりかは本当に起こった事実を淡々と受け入れているそんな感じだった。
「純ちゃん、私ずっと思っていたんだけど、純ちゃんって純平くんに全く優しくないよね…
私だったらショックで電話も出られないよ。」
純子は驚いていた、姉がそんな風に私を否定してくるのが初めてだったからだ。
「純ちゃんが純平くんの事どう思っているかは分からない…不倫したアイツの息子でもあるんだから嫌いなのも分かるけども、それでもあの子にとってはあなたが母親なんだから純平くんに優しくしないといかんよ、そんな態度を続けていたら純平くんが死んだ時にきっと後悔するよ。」純子は姉からの忠告を黙って聞いていた。「じゃあ、もう切るね、また何かあったら連絡してね。」姉はそう言うと、純子も、
「うん、また連絡するね。」そう短くやりとりをして電話を切った。
純子はしばし考え込んだが私は純平にどう接すれば良いのか答えが出てくる事は無かった。