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最も賢い者達

作者: 小雨川蛙

 とある種族の歴史を紐解いていくと面白い存在を見つける。


「これが『最も賢い者達』ってやつ?」


 学校の中で生徒達が教科書を見て話し合う。

 まだ授業で習っていない箇所を教科書を見て先読みをする。

 まるで異世界の冒険のようだ。


「そうそう。こいつらは自分達が滅びに向かう種族であるといち早く理解したんだって」

「へー。同じ種族なのに?」

「そうみたい。この種族は好き勝手生きてさ、世界の寿命を喰らい続けたんだ。だからある時にどうやっても滅びる運命になっちまったんだって。そんな時に彼らが生まれて……」


 授業開始5分前。

 教師が教室に入って来る。


「はい。五分前だよ。ちゃっちゃか席に着く。席に。おい! そこの三人組! 早く席につけ……って」


 教師はそう言いながら教科書を見ていた三人に近づく。


「ほう。教科書を読んでいるのかい? 関心感心」

「あっ、先生」

「だが、あと五分で授業だぞ。席につきなさい」


 そう言いながら教師は教科書を見て笑う。


「なんだ。最も賢い者達について見ていたのか」

「はい」

「なるほどなるほど。だがな、これは質の悪い引っかけ問題でな」


 教師はそう言うと教科書のページを一枚めくる。

 すると前ページで『最も賢い者達』とされていた者達を『最も愚かな者達』として紹介がされていた。

 生徒達が目を丸くする。


「ほら。こうなっているわけさ。何故こんな悪質なことをすると思う?」

「え? どうしててですか?」


 教師はくすりと笑うと教壇につく。


「せっかくだ。今日の授業とは少し離れるが皆に『最も賢い者達』について説明をしよう。彼らは自分達の種族が滅びることを予見しそれ故に努力をするのを放棄して怠惰に過ごした。その結果、彼らは自らの生においては最も楽に過ごせたと言えるだろう。だが、彼らは未来を放棄したのだ」

「ですが先生。この種族は結果として滅びているじゃないですか」


 教師は笑みを深めながら頷く。


「順序が逆なのだ。彼らは世界が滅びると予見したが実際にはまだ滅びていなかった。つまり、成長を放棄した彼らこそが未来を滅ぼした……とも言い換えることが出来るのだ」


 理解した生徒と混乱する生徒がいる。

 当然のことかもしれない。

 この内容を勉強するのはもう少し先なのだ。


「ではより理解しやすくなるために順序良く勉強していこう。さぁ、教科書の17ページを開いて読み上げてくれるかい?」


 生徒の一人が返事をして文頭から読み上げた。


「『人類はかつて繁栄した種族の中では最大のものでした』」




はるか未来の出来事など知るはずもなく、現代においてニュースが流れていた。


『無気力な若者が増加。一体何故……景気低迷、実力主義、娯楽の増加……』

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― 新着の感想 ―
小雨川蛙さん、こんにちは。 「最も賢い者たち」、拝読いたしました。  怠惰なニートさんたちは、何かと理由をつけて働かないことで、自分は最も賢い者たちなのだと主張しているのだと推察致します。  昔の名言…
 このアンチテーゼを誰に向けているのか、受け手により強烈にも感じるだろう話とは思えるものの、きっと本人に自覚は無く、蔑みに冷めた目で物を言う自身を利口と酔い、カルトに入信したかに目を覚ます事は無いので…
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