1.檄文を発する。
人類が滅びて数千年、人に似た原種が再び現れる。
人間に近い進化の行程を辿り、急速な変化で文明を築いた。
その種族の集団を、アンソロポスと呼んだ。
しかしいくら文明が発達しても、アンソロポスには天敵がいる。
【神だ】
我々を家畜のように扱い、優しい顔で共存だとぬかす。
神とは、悪魔らしき生き物なのだ。
我々にも、我慢の限界がある。
我慢というのは、越えるのは一瞬だ。その時が、遂にきてしまった。
赦し難き神々へ、アンソロポスは宣戦布告する。
神に戦を仕掛けた発端は、巫女を含む幼子を連れ去り、慰み者にしたのだ。
しかし我々は、神に敗れた。
私たちは、時を繰り返す。
太古の魔法、リセットでだ。
リセットの魔法が発動すれば、時が遡り人々の記憶や、出来事全てがなかったことになる。
私たちの道を指し示す座標は、予言の書である。
予言の書とは、リセットの影響を受けない。私たちの失敗と未来を書き記された本である。
何度も挑み、失敗を積み重ねる。
何が間違いなのか?どうして勝利を収めることができないのか?
やはり神とは、アンソロポスの敵う存在じゃないのかもしれない。我々は、神に挑むべきではなかった。
しかし暴虐なる神を、このままにしてはいけない。次世代へ連なる子たちのためにも、神を絶たねばならぬ。
そう、私の世代で終わらせる。
尺が余ったので、私たちに関する予備知識を書いておこう。
神の姿形は、アンソロポスとあまり違いはなく、我々のような特殊な力はない。
なら何故勝てないのか?その理由は、神を異形へと姿を変える、玉水という化学兵器の存在が大きい。
玉水の製造法は不明、混ぜ物の粗悪品が流通しており、服用すれば死を招く。
神側、アンソロポス陣営の二つ以外にも、どちらの派閥にも属さない、放浪民族が大陸各地に住んでいる。
放浪民族は、争いを嫌い。自然と共に生きるという矜持を持っている。
アンソロポスは、理の力を操ることができる。理の力を操ることで、超能力のような特殊な能力を体現する。
おおよそのアンソロポスの人口は、五十七万人だ。
アンソロポスには、官位という位階があり、最高位の白、準伯位の黒、星点の赤と。わかりやすく、色で序列が分けられている。
ちなみに私は、黒が好きだ。しかし公の場では、身なりや外観が、別の官位の色を含んではならないため。変えられない色は、隠すしかない。
最後に私は問いたい。歩き疲れたらどうすればいいのか?
休む場所もなく、座ることや眠ることも許されない。野晒しで、雨と風の罵声を浴びる毎日。
愚問だったかな。
私は、あなたが弱いことを知っている。そしてあなたの強いとこを知っている。
我々、アンソロポスを舐めるなよ。
私たちは、ラストナンバーズ。
by 片月歳蓮