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8 それでもわたしはやっていない

8 それでもわたしはやっていない


 ポチッ!

「このゲーム、つまんねーな。この三択の中に、首を吊って死ぬとか、山田の真似してショータイムで配信するとか、そんな選択入れるべきだよなー」

 山本和彦五十三歳は、誰もいない一人の部屋でつぶやいた。

「メンバー設定が悪かったのかな。北潟よりも萩野のほうがイジメがいがあったのかな」

 山本はコントローラーを捜査した。カーソルで【スタートに戻る】ボタンを選択して、Aと書かれた決定ボタンを押した。画面はゲームスタート画面に戻った。

 スタート画面には、上下二段にカラフルな衣装を身につけたLGTメンバーが映し出されている。山本は上段左から二番目の萩野ゆめを選択した。

「さて、俺のジャスティス魂見せてやるぜ。覚悟しろ、萩野ゆめ!」


 アメリカの大学の研究によって、ネットの中でフェイクニュースを作り上げたり、拡散したりする年齢は四十歳代から六十歳代が大多数を占めると導き出された。フェイクニュースだけではなく、ネット内での名誉棄損、侮辱、脅迫、威力業務妨害、偽計教務妨害に当たる行為をしている者も、四十歳代から六十歳代も少なくない。とネット犯罪を捜査する機関から発表された。

 これは、アメリカだけではなく、日本においても同じであると日本国内の調査機関が発表したことがある。

 そのような行動を起こす心理の多くが、自分の正義感を認知してほしいという心理や、自分の母性本能を認めてほしいという心理が、働いているのでは?と考えられている。

 しかし、原因のすべてが正義感や母性本能の承認欲求からくるものではない。半分は正義感と母性本能の承認欲求から行動していると考えられるが、後の半分はストレスの発散を目的としていると考えられる。そんな、四十歳代から六十歳代は、テレビゲーム全盛期のころに十歳代から二十歳代を過ごしている。

 ネットの中で他人をたたくことは、テレビゲームでキャラクターを捜査している感覚なのかもしれない。画面の中のキャラクターが傷を負おうが、死んでしまおうが、非現実の世界で何が起こっても自分の生活に支障がない。

 飽きてしまったら、リセットボタンでゲームを再起動させ、別のキャラクターを捜査して自分のストレスを発散させる。イメージを想起させた思考が、二次元のキャラクターと三次元のキャラクターを識別できなくなっている。

 二次元のゲームの世界では、キャラクターに対しての決定権と指揮、命令権を持っているが、三次元の世界では持ち合わせてはいない。

 三次元の世界。

 現実社会で同じような行動を起こして、容疑を掛けられたあとに口にするのは。

「わたしは、やっていない」

 指示や意見をしたのは自分であるが、行動したのは自分ではないと認知機能が事実からすり替えられてしまっている。いや、自らの意思ですり替えているのかもしれない。

 ログも保管しているし、スクリーンショットも保管している。情報開示請求により、氏名や住所、電話番号まで入手出来ていると伝えても、シラを切る。

「それでも、わたしは、やっていない」

 現実と仮想現実の区別がつかない世代は、高齢化している。

 何歳になっても、リセットボタンで全てが解決できると、ご認識したまま。


 ― 了 ―


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