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4-4、詐欺ではありません、当然の権利です



 ──そして、約束の日がやって来た。


  

 召喚被害者らの魂の受け渡し場所として指定したのは、異世界同士を繋げる門がある次元の狭間だ。

 墜ち神化の可能性が高いという事で、瘴気が我々の世界に影響を与える事を懸念して、この場所での受け渡しとなった。


 我々の世界の門の前に異世界対策課一同が並び、マルクダーマ側の門の前にマルクダーマ神が眷属であろう従者を引き連れて立っている。




「例のものをここに」




 マルクダーマの指示に従い、こちらに近付いてきた従者が差し出したのは封印処置がされた魂だ。




「とりあえず、かき集めるだけかき集めてみたが」




 それらを受け取り、一つ一つ確認する。


 五体無事なものなど一つとしてなかった。

 どれも酷く傷付き、その多くは墜ち神化している、もしくはそのなりかけで、封印越しでも仄かに黒い瘴気を纏っているのが分かる。


 

 ……助けるのが遅くなって、本当にすまないね。

 あまりに痛ましい状態を見取って、心の中でそう謝罪した。




「……確かに確認しました」




 そう言って、白矢凪さんと新堂くんに視線を向けた。

 二人は頷き、魂達にそれぞれ再度封印処置を施して、門の中へと運んでいく。……向かう先は、勿論鎮魂課だ。




「魂は返した。約束だ」

「……約束?」




 代わりの人間を催促するマルクダーマ神は、当然だと言わんばかりの態度だ。

 自分の要望が受け入れられると、欠片も疑ってはいないのだろう。

 

 こちらの目的は果たした。 

 だから、私はにっこりと笑ってこう告げた。




(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)?」




 ハッと息を呑んだのは、従者だった。

 マルクダーマ神は一瞬虚を突かれたような顔をして、それでから盛大に顔を顰めた。




「……面白くもない冗談を言うな。こちらはちゃんとそちらの要求を飲んだのだ。早く新しいものを寄越すがいい」

「ええ、勿論こちらも冗談を言っているのではありません。そのような約束をした覚えはないと言っているのです」




 私は『魂の返還をすれば新しいものと交換する』などとは一言も口にはしていない。

 ただ、『魂の返還をするのであれば、交渉の余地があるか検討する』と言ったのだ。


 検討した結果、やはり駄目だった。

 ただそれだけの話である。


 淡々とそう告げれば、マルクダーマ神は顔を真っ赤にして激昂した。




「戯言を! ただの詐欺ではないか!」

「詐欺だなんて人聞きの悪い。我々は攫われた同胞を返してもらっただけです。そもそも、他所様の世界の住人をさも自分の所有物のように扱うのは如何なものかと思いますよ。仮にこちらが同じ事をしたら、あなただって烈火の如く怒るでしょうに」




 最早気を使う必要はないので正論を突き付ければ、目の前の顔は憎々しげに歪む。


 そうだよね、流石創世神かつ唯一神。

 自分の思い通りにならない事が少ないから、こういう状況に慣れてないんだよね。


 ……でも、そういう顔をしたいのはこっちも同じなんだ。




「何度も伝えた筈ですよ。我が国民を攫うのは止めてくれと。しかし、あなたは聞かなかった。三度の面談を終えて尚、反省する様子すら見えない」




 被害者の回収を終えた今、最早マルクダーマに用は無い。

 害悪でしかない隣人に見切りを付けるには、充分な理由だ。むしろここまで我慢した事を褒めて欲しい。




「──これで安心して、ご縁が切れるというものです」






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