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4−3、来たる決戦の日です

週一更新継続中。

大丈夫そうだったら、もう一話あげるかも。



 ──そうして、決戦の日がやって来た。




「何故こうして何度も呼び出す? 私も暇ではないのだが」




 常世管理局、水鏡通信室にて。

 水面に映る長い黒髪の中性的な神──マルクダーマ神はうんざりしたように言った。

 まるでこちらが悪いとでも言わんばかりの態度に内心ムッとするも、努めて平静を装う。



「そうは言われましても、こちらの事情と要望も何度も伝えている筈ですよね?」

「こちらも何度も言っていると思うが。有象無象の中の、たかが数人だろう。何をそんなに目くじらを立てる必要がある?」



 あまりに不遜すぎる物言いだ。

 記録係の見守くんがギリィと歯を食いしばるのとほぼ同時に、念話で複数の『チッ』という舌打ちが頭の中に響く。恐らくは隣の小部屋で待機している香山達だろう。


 うちの部下達、血の気が多すぎでは……?

 内心少しだけハラハラとしながら、私は答えた。



「当然でしょう? 彼らは我が国民達です。その彼らが見知らぬ世界でただ消滅するのを黙って見ていられる筈がありません」



 魂の返還すらない事を遠回しに刺せば、マルクダーマ神は訝しんだ。




「どうせ堕ちていたり、欠片程しか残っていない者も多いぞ。そんな塵芥、利用価値など無かろうに」




 当然のように言い放った彼に、机の下に隠れた拳を強く握り締める。

 しかし、沸々と煮えたぎるような怒りを感じる一方で、心の中はどこか凪いでいた。


 それは異世界対策課の課長であるという矜持があるからこそかもしれないし、先程から頭の中に、五月蝿いほどのマルクダーマ神に対しての部下一同からのブーイングが響いているからかもしれない。



 ……うん、まあ自分より怒っている人を見ると、不思議と冷静になる時ってあるよね。今とってもそんな気分。



 しかしこれ幸いと自分の感情は心の底へと押し込めて、出来うる限り相手に悟られないように穏やかな表情になる様に心掛ける。


 そして、こう告げた。




「──『リサイクル』という言葉をご存知ですか?」




 唐突の話題の変化に、マルクダーマ神が眉を顰めた。




「我々の世界には『輪廻転生』という仕組みがあります。人は死に、また生まれ直す。それを延々と繰り返して、世界は循環しています。我々はそれを『魂のリサイクル』と称している訳ですが……。そういった仕組みがある以上、その循環を滞らせる事だけは避けたいのです」



 何を言いたいのか分からないとでも言うかのような顔をしているマルクダーマ神に、もう少し分かりやすい言葉で伝える。



「あるべきものをあるべき場所へと還して頂きたい。私達にとって、それだけが何よりも変え難い(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)なのですから」

「……唯一の道理、だと?」



 そこで、何かに気付いた様子のマルクダーマ神が面白そうに片眉を上げた。




「つまりは何か。塵芥さえ返しさえすれば、新しいものと交換は可能という事か?」

 



 ──(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)!!!


 その問いには明答せずに、口角を引き上げる。




「それすらも慮って頂けないのであれば、こうして交渉の場を設ける必要も無くなるとだけお伝えしておきます」



 

 こちらの要求を突っぱねるのであれば、それで良い。

 ただし、それならばこちらも頑として譲らないし、こういった交渉の場を設ける事も二度としない。


 交渉の場に上がる事が許されるのは、攫った魂をこちらに返還した時のみだ。


 そう強く固辞すれば、マルクダーマ神は顎元に手を当てた。

 ───そして一言。




「良いだろう。そちらの要求を飲む」




 ニヤリとした笑みを浮かべたマルクダーマ神に、こちらもニッコリと満面の笑みを浮かべた。




「ありがとうございます。交渉成立ですね」



 

 ─────さあ、別れの準備を始めようか。




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