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ケース3裏  side勇者タツヤ1 勇者パーティー召喚



 クリカラタツヤが異世界ルクシオに召喚されたのは、高校二年の進路を考え始めるような時期の事だった。

 

 


『あ、何か良い感じの子達見っけ。これで良いや、連れて行っちゃおう』




 クラスメイトであるリョウタとアヤハ、そしてミオ。

 下校中に偶然居合わせた四人が、そんな知らない誰かの声と共に光に包まれて──目を開けたら、召喚されていた。



 そりゃあ、驚いたよ。

 気が付いたら目の前にゲームとかアニメで見るような、いかにもファンタジーな衣装を着た人達に囲まれてたんだから。




「勇者様、どうか世界をお救い下さい!」




 何だこれ、いわゆる異世界ものってやつ?

 さっきまでただの高校生だったのに、いきなり勇者だなんだと言われて、流石に戸惑った。


 でも、魔王を倒さないと元の世界へと戻る為の扉は開けない。帰れないって言うんだ。

 文句を言っていてもしょうがないし、四人で魔王を倒すための旅に出る事にした。


  


***




 俺は勇者。

 リョウタは盾騎士。

 アヤハは魔法使いで、ミオは賢者。


 


「うっわ、何これ! こんなのゲームみたいじゃん!」

「すっごーい! ワクワクするね!」



 

 そりゃあ最初は、まるで本当にゲームか何かの主人公になった気分で、ワクワクしていたさ。

 けど……それも最初の内だけだった。



 魔物とはいえ、生きているものを殺し続ける事。

 回復魔法で回復するとはいえ、傷付いて傷付いて、それでも立ち上がらなきゃいけない事。


 それまで虫程度しか殺した事がない、喧嘩すら碌にした事もないただの学生だったのだ。

 勇者パーティーの魔王を倒す為の旅は、想像以上に大変だった。


 それはそうだ。

 このファンタジー世界に住む人達が、自分達じゃ無理だって思うような事なんだから。



 それでも、頑張らなきゃ元の世界には帰れない。

 

 こういう時、仲間が居て本当に良かったって思った。

 頑張ろう、あともうちょっとだ。そう励まし合って、旅を続けた。





 ──そんなある日の事だった。




「……ねえ、皆……。私達、本当に帰れるのかな」




 不安げにそう零したのは、ミオだった。



「どうしたんだよ、ミオ」

「……結婚しろって言われた」

「誰に!?」

「…………さっき寄った聖教会の司教様」



 聞けば、前々からミオはその強力な回復魔法の力を見込まれて、聖教会から『聖女』にならないかという打診があったらしい。

 

 この世界で聖女は世界の平和の象徴であり、各国の王にも並ぶ権威を持つ称号である。


 魔王を倒した後は元の世界へと帰る自分が畏れ多い、と固辞し続けていたミオだったが、最近になって聖教会に立ち寄る度に、とある司教に熱心に口説かれているのだという。

 


 ──この世界に残って、私と添い遂げてはくれませんか。

 ──そしてどうかこの世界の……そして何より、この私の光となって下さい。




「えっ、何それ。オッケーしたの?」

「する訳ないじゃない! 結婚なんてまだ考えられないし……それに」



 ミオは身を乗り出したアヤハに首を横に振って、チラリとこちらを窺ってくる。

 俺と視線が合ったミオは、何故か慌てたようにワタワタと狼狽えた。

 


「とにかく! 元々私達は魔王を倒したら元の世界に戻るって話をしていたでしょ? でも、この世界の人は……本当にそういうつもりでいるのかなって」

「……どうにかして、この世界に残らせようとしているって事か?」



 

 

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