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ケース1裏 side プリンセス鬼小折2 立派な神様になりたい





「まず、我が国で神が人を攫う事……一般的に『神隠し』と呼ばれる行為を行うのは禁じられています。そして、異世界転生も、人の魂を神が己の異世界領域へと攫う。……つまり『神隠し』と同様の行為として、同じく禁じられています」



 異世界対策課に呼び出されて言われた事に、あたしは驚いた。

 


 え、どうして?

 異世界転生って、今流行ってるんじゃないの? 皆やってるんじゃないの?


 

 混乱するあたしに、彼ら──異世界対策課の人達はひとつひとつ丁寧に教えてくれた。

 


 何が悪かったか。

 何でそれが禁止となったのか。

 そして、それが言ってしまえば、ただの『人攫い』であるという事実。



 それを知ったあたしは、愕然とした。

 


 ……ごめんね、リオンちゃん。


 あたし、そんなに悪い事をしていただなんて知らなかったの。

 そんなに皆に迷惑を掛けるような事だなんて、知らなかったの。

 本当にごめん。……ごめんね。



 あたしはただ自分の楽しみの為に、異世界対策課を含めて色々な神様に迷惑をかけて、ごく普通に常世(とこよ)で次の転生を待つ筈だったリオンちゃんを巻き込んだ。

  

 確かにあたしは神様だけど、何をしても良い訳じゃないんだ。

 その時初めてそう理解した事が情けなくて……無性に恥ずかしかった。 




「でも、それは悪い事を教えた先輩が悪いと思いますよ」




 子供のように大泣きしてしまったあたしを、異世界対策課の神田さんはそう慰めてくれた。



「ここは神が生まれやすい国だからあちらこちらで神が生まれるし、現状ではその全てを把握出来るような仕組みが作られていない。……まあ、一応新神さんを見掛けたら管理局へ案内するようにとは言っていますが、あなたが出会った方のように守ってくれない方も時にはいますからねぇ」

「えっ、もしかして新神って常世管理局に来なきゃいけないの!?」

「強制ではないですけど、一応新神さん達の為の学校のような施設があるので」



 話によれば、新神達は神の力についての知識には何の問題も無いけれど、神様として守るべきルールなどの常識については学んでおいた方が良いらしい。

 時代によって常識は徐々に変化していくものだ。常世管理局でなら、ちゃんと時代に合った常識を教えてくれるのだという。


 そんなの知らなかったし、先輩も教えてくれなかった。

 そう驚けば、見守さんが苦笑いをして教えてくれる。

 

 

「まあ、神もそれぞれなんですよ。品行方正な神もいれば、邪神・悪神と呼ばれる類の神もいたりします。特に神はプライドが高い者が多いから、自分の失敗を認められずに他の神にも同じ事をさせて溜飲を下げようと考える者も時にはいるんですよ」



 あたしの先輩も、前に異世界召喚して異世界対策課に呼び出された経験がある神様だったと聞いて、本当にびっくりした。先輩は本当に悪い神様だったらしい。


 何だか怖くなって「あたしも学校に行きたい」とお願いしたら、神田さんが紹介状を書いてくれた。

 頑張って勉強しよう。そして、ちゃんとした神様になるんだ。




 リオンちゃんにもちゃんと謝った。


 無理矢理攫って、転生させてしまった事。そして、元の世界に還すには『リンプリ』の世界で一生を終えるまで待たなきゃいけない事。



「そんなに謝らなくて大丈夫ですよ! 私『リンプリ』のファンだったんです。だから、今すっごく楽しいです。感謝してます」



 夢の中に呼び出して土下座する勢いで謝ったら、リオンちゃんは笑って許してくれた。

 

 ……リオンちゃん、本当に良い子だなぁ。

 良い子すぎて申し訳ないから、色々と身を守るための加護を付けてあげた。

 

 これでどうか幸せな生活が送れますように。

 いつかこっちの世界に戻ってくる日まで、ちゃんと見守っててあげるからね。リオンちゃん!

 

 


***



 それからのあたしは常世管理局にある学校で色々と教えてもらいながら、時々異世界対策課に力を貸している。



 夢は立派な神様になって、いつか新しく生まれた神様を格好良く手助けしてあげる事!


 そして、もうひとつ。 

 最近はあたしが力になれるなら、異世界対策課に入るのもちょっと良いかなぁと思っている。



 ……まだ、神田さん達には内緒だけどね。 

 異世界転生で迷惑をかけちゃった罪滅ぼしが終わって、胸を張って『立派な神様』だって言えるようになったら、お願いしてみようかなと思ってる。 



 いつかその夢が叶うように、頑張るぞ!!




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