表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/35

1-1、初めまして、課長の神田です

新連載です。

よろしくお願いします!



 ──私は、神だ。



 名を神田という。

 

 適当な名付けだと笑う事(なか)れ。

 我が国の神は『八百万(やおよろず)の神』と呼ばれる程沢山存在するし、名前の流行り廃りというものもある。

 天照大御神(アマテラスオオミカミ)レベルのネームバリューがある大神もいれば、私のようにごく普通の人間と変わらないような名前の神々もいるのだ。

 

 実際のところ、神々ですら全部で何柱くらい存在するのかを把握しているかどうかは怪しいものだ。

 何故なら、我が国では神々は案外気軽に誕生する。神格化する敷居が低いのだ。


 日本は様々なものに神が宿る国である。

 物を大切に扱えば付喪神が生まれるし、人間が死後に祀られた結果、新たな神が生まれる可能性だってある。

 

 今この瞬間にも、何処ぞで何かしらの神が爆誕している可能性すらあるのだ。

 そんな調子で生まれた神の名前が若干適当になっても、致し方ない事である。そう思いたい。



 ……話を戻そう。



 そんな適当な名付けをされた私だが、現在とても困っている。

 神だって万能ではないのだ。そりゃあ、困る事もある。




「神田課長……異世界転生が起こりました」




 長い髪をポニーテールにしたスーツ姿の女性神──見守(みかみ)くんが沈痛な面持ちで話し掛けてくる。


 ちなみに、スーツ姿なのは「その方が仕事している気分が出る」と神々の間で好評だからだ。

 日本人は形から入るのが好きな民族であり、神々もまた同じなのである。



 ……現実逃避をしている場合ではない。今は仕事に集中しなければ。



「状況は?」

「被害状況は『借りパク』、相手は数年前に物語が元となって神格化した神です」



『借りパク』とは、初犯かつ被害者が二人までに限定されている時に使われる呼称である。


 若い神でそれならば、まだやりようはある。

 私は質問を重ねた。



「物語、ね……。乙女ゲーム? 漫画? 小説?」

「小説です。作者は鬼小折(おにこおり)まゆり、『菩提樹(リンデン)のプリンセス』という名の人気作です」

「ああ、『リンプリ』ね。……とうとう来ちゃったかぁ……」

「……近年稀に見る大ヒット作でしたもんね……」



 異世界転生や召喚をされそうな人気のある創作物に敏感になってしまうのは、最早職業病のようなものだ。

 つい数ヶ月前に読了した『リンプリ』の物語を頭に思い描きながら、見守くんに指示を出す。



「直ぐに水鏡通信を繋いでくれる?」



 直ぐにでもその付喪神を呼び出して、話をしなければならない。



「既に招喚を要請しています。第二面談室も確保済みです」

「流石、見守くん」



 指示をする前にこの動き。

 流石は出来る課長補佐見守、略して『さすミカ』である。

 


「直ぐに向かおう。……行こう、見守くん」

「はい、室長」



 私と見守くんは、足早に第二通信室へと向かった。



 私の名前は、神田。

 『常世(とこよ)管理局、異世界対策課課長』という肩書きを持つ、ごく普通の神の一柱である。





 

よろしければ、こちらもどうぞ!


【長編】

『呪いで服がハジけ飛ぶ王様の話』 https://ncode.syosetu.com/n0435if/


【中編】

『「どの男性を選ぶの?」と彼女は言うけれど、僕は君とキスがしたい』 https://ncode.syosetu.com/n4363ij/


【短編】

『公爵令嬢はアホ係を卒業する』 https://ncode.syosetu.com/n6615ie/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ