伊加利雄也の場合2
ゲドルリヒが言ってた言葉の意味は、そう長くかからずに分かった。
イシュミールたんは、エルフの美女。下品になりすぎないくらいのナイスバディなエロフであり、クールビューティー系。制作陣が過去最高傑作として送り出したエロゲ神作品シリーズの最新作ヒロインとのやり取りや絡みやシチュの数々を何ヶ月にもわたって想像して生きる燃料にさせてもらいましたさ。おかずとしてはもちろんとして、主食ですよ主食。魂の。
で、神様とか出店のおっちゃんとかに聞いた話だと、西大陸のおよそ北半分の東部をドワーフが、西部をエルフが治めてて、エルフの森林資源をドワーフが求めてきた歴史もあって伝統的に仲が悪いそうな。
んだけれどここしばらく(百、二百年単位)は小康状態にあって、エルフ達との国境にあるドワーフの鉱山都市にも、エルフ達の姿はそう珍しくなくて、その半分近くは女性だったりして、もう俺としては辛抱溜まらんな訳ですよ!
実在と非実在の区別はつけるというのは、オタクとしての鉄則だった。元の世界では。
でも、非実在が実在の世界に来てしまったら?そりゃあもう突撃するしかないでしょ?いつ死んじゃったり殺されるかわからないデスゲームなんてものに巻き込まれちゃってるんだし。
「鏡を見て出直してこい。いや、生まれ直してこい」
てのは、まだマシな方の反応だった。
「オークの方が美男だと感じる人間の男には初めて会ったな」
「近づくな話しかけるな息をするな、死にたくなければ」
くらいはほとんど挨拶代わり。
凍えるような眼差しで睨みつけてきて何かの属性に目覚めそうになったり、無反応なまま立ち去られたり、なんとか食い下がろうとしたら武器に手をかけられたり、魔法を発動されかけたり、命の危険にさらされる事も珍しくなく。弓や剣の鞘や杖なんかで叩かれたりぶっ飛ばされたのも二桁以上。
ついには複数人に囲まれてボコられてHPが半分以下にまで減ったりしたのを、ドワーフの巡回警備兵に助けられたりとか。
事情を説明しても、エルフ女性達にはお咎め無し。その理由はまあ言われるまでもないからまだいいとしても、そんなに美男とは言えないおっさんドワーフ達に言われた。
「あいつらの外見がドワーフ以外の男受けするのは知ってるが、あいつらは極度の面食いだ。あきらめろ」
「お前に望みは無い」
「せめて同じ種族に求愛したらどうだ?」
「えっと、助けてくれたのはありがとうございますなんですが、みなさんひどくないですか?」
警備兵の皆さんは視線を交わしあうと、やれやれと互いに肩をすくめたりした。
「あきらめたら、そこで試合終了なんですよ!」
「何を言ってるかほとんどわからんが、さっきも言った通り、あいつらの判断基準のほとんどは美醜のみだ。つがいに選ぶのは、自分と釣り合う外見の相手のみ。極々例外がいないでもないが、そういったのも、エルフには生み出せない美しい工芸品などを生み出せたり、エルフ達の愛する森林を豊かに出来るような特殊なスキル持ちとか、そんな生まれついての才能を持ち合わせてるようなのでないと相手にされない」
「あるのか、お前にそんな才能が?」
「・・・無いと思う」
「とんでもない金持ち連中なら金の力でとか考えるだろうが、さっきぼこられてたり話聞いた限りだと、金もそんなに持ち合わせがないんだろう?」
「それは、そうですけど・・・」
「あいつらが求める美しさも、特殊さも、金も無い。それでどうして相手にしてもらえると考えた?」
「・・・・・」
「まあそう落ち込むな。お前みたいな奴は時折このメレディトに現れては、あいつらにろくに相手にされず泣きながら帰っていくんだ」
「あまりしつこくしたり、暴力や金でなんとかしようとした連中はたいがい殺されて死体も残らないから、下手な事を考えるなよ?」
「女だけが人生じゃない。他に生きる道もあるだろうさ」
「いや、ぼくは、女が、エルフ女性が、いいんです!」
きりっと決め顔で言ってみたが、
「死なない、いや殺されない程度にしとけ」
「あまり目に余るようなら留置場にしょっぴくからな」
「女以外も悪くはないぞ?」
最後の一言には思い切り左右に首を振り、同時に出来るだけ後ずさって距離を取った。その発言者はちょっと傷ついたような表情を浮かべていたが、許してほしい。差別がいけないのはわかってるんだけどさ・・・。
二時間ほど警備兵達に留め置かれた後に釈放してもらったけど、その間、ゲドルリヒには文句たらたらだった。
――どうして教えてくれなかったのさ?
<止めたところで止まらなかったし、納得もしなかったろうに>
――まあ、それはその通りなんだけどさ
<それに、醜くて相手にされないというのは、君の力の根本に成りうるからね。敵の駒が近寄ってきてるというなら、警告は発しただろうけど>
――あーあ、転生ならもうちょっとマシな外見でやり直せたのかもな。もしくはキャラエディット機能の実装きぼんぬ
<この大戦を勝ち抜けば、君が希望するような力は手に入るだろうし、最終的な勝者になって叶えられる望みならなおさらだ。もうちょっと前向きになったらどうだ?君の夢に近づく為にやれる事はいくらでもある>
――神様が言ってる事は正論なのは、わかっちゃいるんだけどね。誰かを殺してまでとか、それも何百人もとか、ちょっと、やりきれる気がしない・・・
<それでも、抱きたいのだろう?ヤりたいのだろう?>
――それはそうなんだけど、誰かを殺さないでもヤれるのなら、そっちのがいいし。無理矢理とか、相手の意志をねじ曲げてとかより、やっぱね、愛され、たいじゃん・・・?
<まぁ、なんといっても転移してきた初日だ。今のところさしあたって危険は無いようだから、泊まる宿や、武器防具の類でも見繕っておくべきではないのか?>
――せっかく異世界に来て、イシュミールたんみたいなエルフが闊歩してるのに、真面目ムーブするのもなぁ
<なら、目の前でお預けくらって何もできずヤれもしないまま、誰かがさくっとお前を殺しても文句は言わないと?>
――ヤりたいけど、殺されたくはないよ
<でも殺したくもないと。それは元の世界に居たままならともかく、叶わない子供のわがままだとわかっているだろうに>
わかってるよ。これがわがままだって事くらいは。
リアル女性達にキモオタデブと蔑まれるのは元からだし、相手に望まれる事なんて無いのもわかってた。
相手が望んでる何かを何一つ差し出せないのに、相手がその体や心を差し出してくれる筈が無いのも。
望んでいる何かを手に入れる為に努力しろ、足掻けってのが正論だよ。でもさ・・・・・
煮え切らないままぶらぶらと歩いていた自分の目の前を、女性二人組が横切った。
「イシュミール、たん?」
思わずつぶやいてしまったくらい、似ていた。俺の声に反応して振り向いた彼女の切れ長の目、氷の様な薄い青色の瞳、淡い緑色の腰まで流れる長髪、柔らかそうなピンク色の唇。全体としてキツそうな印象を受けるのだけど、この女性がデレてくれるのなら、なんだってする、なんだって出来る!と思えた。
胸の大きさだけはエロゲのイシュミールたんの方がふた周りくらいは大きかったけど、そこまで贅沢は言わない。服装の詳細とか違う部分は多かったけど、姿や容姿から言えばほとんどイシュミールたんの生き写しな彼女に、俺は見惚れた。すでにイシュミールたんに恋していたと言えば言えたけど、これは二度目の一目惚れだった。リアルでは、ほとんど初の。
「人違いです」
言い捨てて立ち去ろうとした彼女に、そのまま置いていかれたくなくて、苦し紛れに尋ねていた。
「あ、あのあの、お、お名前を、教えて、ください!」
再び連れの女性、少女と言った方がいいのかな。耳は人間のより尖ってたけど、エルフの長耳の半分くらいの長さしかなかったから、いわゆるハーフエルフなのかも知れない。彼女と歩きだそうとしてたイシュミールたんのそっくりさんは、立ち止まらずに言った。
「教える必要性を感じません」
そしてハーフエルフの少女を連れて歩き出したので、俺は彼女達の前に回り込んで土下座して、イシュミールたんのそっくりさんに頼み込ー
<他のエルフ達にそうしてた様に、ヤらせてくれ、とか言うなよ。この相手には殺されるぞ>
ーもうとして、神様の一言で思い留まった。
でも、つきあってくれてのも違うよな。
だとしたら、いつまで生きてられるかわからないならなおさら、この一言しか無かった。
「けけけ」
「けけけ?」
「け、けっこん、してください、俺と!」
彼女の目が点になった。
固まって反応が無くなった彼女の隣にいたハーフエルフの少女がからかうように言った。
「あれあれ、ミシェラってば、求婚されたの、もしかして初めてだったの?」
急激に、周囲の温度が冷えて、ていうか物理的に凍える温度に下がったっていうか寒い痛い息ががが、
「ミシェラ、待って、こんな街中で切れたらダメだって!ほら、そこの求婚してきた彼も凍り付きかけてるって!」
「誰が誰の彼ですか!?」
「今は誰のでもない彼だけど、いきなり殺したらダメだってば!」
気が付いたらもう身動きが取れなかった。肌の表面まで氷に覆われてというか、ほとんど土下座態勢の氷の彫刻になりつつあった。
あ、これマジ死んだかも?初手プロポーズはバッドエンドかぁ。じゃあセーブポイントからリロードして、次は別のやり方でアプローチしないとか・・・、とかぼんやりと思ってる内に意識が途切れた。
それからどれくらい時間が経ったか、すぐにはわからなかった。
気が付けば、見覚えの無い食堂らしき場所の、暖炉のそばの床に寝転がされていた。
傍らの椅子には、イシュミールたんと一緒にいたハーフエルフの少女がいて、声をかけてきてくれた。
「気が付いたみたいね。良かったよ。ミシェラが殺した事にならなくて」
「えっと、イシュミールたんの真名はミシェラたんなのですか?」
「たん、てのはよくわからないけど、真名ってのが本当の名前っていう意味なら、ミシェラはあだ名みたいなものかな。でも命知らずだねぇ」
「もしかして、今まで何人も?」
「あの隙の無い感じ見たでしょ?少なくとも、私が知る限りでは、言い寄られて、それだけで殺しちゃったのは無いかな。他に殺す理由があれば躊躇うようなタイプじゃないけど」
冷や汗が、つー、っていうよりは、だらだらと流れてきた気がした。まだ冬じゃないけど火を入れられてる暖炉のせいではなく。
「いきなりプロポーズはまずかったというか、地雷だったんでしょうか?」
「さあね。そういうのは人にもよるだろうし、本人に聞いてあげた方が良いよ」
「聞いたらまた氷漬けにされませんか?」
「いまさらそこで立ち止まるような人なの、君?」
「・・・・・さあ?」
「あはは、やっぱ面白いね、君」
「どうもです?」
「ただ、忠告しておくけど、言い寄られたら無条件でうれしいって訳じゃないからね」
「まあ、それはたくさんの人から学びました・・・」
ハーフエルフの彼女は目を丸くして、また大笑いすると立ち上がって去り際に言った。
「君の想い人を呼んできてあげるよ」
「あ、ありがとう、ございます」
一人になって、体のあちこちを点検してみたけど、どこも凍傷になったりもげてしまったりはしてなかった。良かった。本当に良かったとしみじみと神様に感謝した。(ゲドルリヒではない誰か?)
魔法のある世界だし、HP自動回復スキルも仕事してくれたのだと思っておこう。うん。
そんな風にしばらく待っていると、二人が戻ってきた。ミシェラたんは渋々引っ張られてきた感じで、床に座り直してる自分を見て安堵したように表情を少し緩めたけど、近くに寄るにつれてまた眼差しとかも厳しくなってきた。心なしか温度もまた下がってきたような、と思ったら、ハーフエルフの少女が注意してくれた。
「こおら、ミシェラってば、またここで氷漬けにするつもり?」
「すみません、アラシェ様。しかし元はと言えばこの男のやらかしが原因なので、私が謝るのは筋違いなのではないかとふつふつと怒りがわいてきてですね」
「だとしても、いきなり凍らせて殺しちゃうのはやりすぎでしょ?」
「・・・・まぁ、確かに、そう言えなくもないですが」
こほん、と咳払いしてから、ミシェラたんは仕切り直した。
「あなたを一昼夜かけて自然解凍するまでの間に、この鉱山都市にいるエルフ女性達の話を聞き集めました。あなたには情状酌量の余地がほとんど無い事も明らかなのですが」
「あ、ハイ。それはまぁ認めます。すみませんでした!」
がばっ、と土下座してみせて、いったん話し声は途切れた。
「不特定多数の、初対面のエルフの女性達に、やらせろと迫る不審者。いや大罪人と言ってもさしつかえないでしょう」
「ミシェラ、気持ちはわからないでもないけど、断られてしつこくつきまとってないなら、殺すまでは無いんじゃないの?」
「・・・お嬢様の慈悲に免じて酌量しますが、あきらめなさい。私を含め、あなたが声をかけた他の女性達も、あなたの相手をする事はありません」
「それは、ぼくの外見が、醜男だからですか?」
「大半の理由は、もしかしたらそうでしょうね」
「大半ていうのは?あとイケメンなら違ったのですか?」
はあ、とため息をついてから、ミシェラたんは続けた。
「エルフの女性達は面食いだと言われていますが、逆に問いましょう。なぜあなた方は同族の女性ではなく、エルフの女性達を求めるのです?その理由の大半は外見なのでは?」
「・・・・・・・・・・ですね」
否定しようがないし、しても話は始まらなかった。だって、その通りなんだもの。
「他に何か言いたい事は?」
「さっき、大半て言いましたよね。その、大半じゃない部分ていうのは?」
「下半身でしか考えられない者達は気にしないでしょうけど、人間性や関係性とか、普通に、相手を対等に見て、互いに惹かれあうものがあれば、互いに築いていける何か、とかでしょうか」
「特殊な才能とかスキルとかではなく?」
「そういったものだけを必要とするなら、恋愛とかではなく、もっと割り切った関係で済まされるでしょうね」
ミシェラたんが言ってる事は、反論がむずかしかった。ただ、自分みたいに、築いていけるだけの何かの土台が最初から望めないのは、どうしようもないだけで。
「他のエルフの女性達の事はいったん脇に置いておいて、あなたは、人間の男性を忌避しますか?」
「人間というだけで忌避はしませんよ。エルフの女王の配偶者の一人にも人間の男性はいますし、ここにいらっしゃるアラシェ様はそのお二人の間の御子です」
「そうだったんですね。じゃあ、どうしたら、あなたはぼくの、いえ、ぼくの配偶者になってくれますか?」
「は?今までの話を忘れてしまったのですか?」
「いいえ。大半のエルフ女性の理由は聞きましたが、あなたがぼくの求婚を断る理由は、まだはっきりと聞いていないと思いますけど」
「・・・」
「きもいからですか。デブだからですか。オタだからですか。その全部ですか」
「オタというのが何かはわからないですが、全部ではないでしょうね」
「じゃあ、ひとかけらほどでもぼくにも希望はあるんですね?!」
「・・・存在すると言えないくらいの僅かな希望でしょうけどね」
「ゼロじゃないなら、希望はあるんです!生きていけます!で、どうやったら、その希望は大きくできますか?あなたをぼくのお嫁さんにできますか?!」
「なんであなたのような人たちは、すぐにやらせろとか、結婚してくれから始まるんですか?順序が逆でしょうに」
「えーと、エロゲじゃなくてギャルゲなら」
「意味がわかりません」
「すみません。日常パートがメインなら、つまり平和な時ならそうしたかも知れませんけど、俺はほら、神々の主神を決める戦いとかってのに巻き込まれてて、いつ死ぬかもわからない身の上なんで」
「ちょっと待ちなさい。今なんと言いました?」
「日常パートについてですか?導入部はやっぱり出会いからですよね。一時期は食パンくわえたヒロインと交差点でぶつかるところから」
「違います、そこではありません!」
「いつ死ぬかもわからない身の上?殺されるかも知れない身の上って方が正しいかもですけど」
「その前の、神々の主神を決める戦いと言いましたね。それは確かなのですか?」
「ですよ」
これまでの気だるげで面倒くさそうな雰囲気から、がらりと積極的に変わって、がつっと両肩を捕まれていた。うれしいというより痛かった。
「どうしたの、ミシェラ?」
「・・・アラシェお嬢様はご存じ無いのですね。世界を震撼させる一大事が始まったのです」
「どういう事?」
「この者が言った通り、異世界から駒を召還し、次の主神を決める大戦が始まったようなのです。エルフの王国にとっても他人事ではありません」
「えっと、でもさ、この男の子見てる限りだと、大した事無さそうだけど?」
「数百の神々の加護を与えられた駒達が生死を賭けて競い合い、勝った者は負けた者に与えられていた加護を奪い、自らを強化していけるのです」
「なるほど。今は虫けらくらいでも、末は要注意人物くらいにはなると」
「おいこら待てそこなんつった今?」
「この者が勝ち抜いていけるかはともかくとして、確率として無いと同じくらいの皆無さでしょうけど」
「ちょい待てやお前等好き勝手言ってるんじゃねぇ!」
「ゴミが何か言ってますが無視するのは当然として、七大神、特に火の大神の加護を受けた者は、レイキア工国に高確率で現れます」
「そっか。それは確かに大事になりそうだね」
「あなたの御母上でもあられる今の女王様も、その被害の復興には苦慮されましたから、前回ははっきりと不干渉以上の排除策を打ち出されました」
「え、それってもしかして」
「はい。自領で見つかった駒が居れば、自領外へと追放するか殺害するか」
「なんでそこまで?」
「大神の加護を受けた駒は最終的な有力者にまで残る可能性が高く、中でも火の大神の加護は強力で、エルフ達の母なる森への天敵と言えます。火の大神の加護を受けた者の敵対する駒を支援しようとして、喪われた森を復元するまでに数百年以上かかる事が数度。だからこそ、女王様は決断されたのです」
なんとなく、そこまで聞いて初めて、自分の中の歯車っていうか、役割みたいなものが、腑に落ちた。状況と自分の望みが合致したとでも言うのかな。
「あのー、ミシェラさん?もし、自分が火の大神の加護を受けた駒を倒せたら、俺と結婚してくれますか?」
「火の大神の加護を受けた者をたやすく倒せるくらいなら、エルフの女王様が苦渋の決断をされたりはしません。あまりなめないように」
「なめてなんかいませんよ。どうせ俺より顔面含めた全てのスペックが高い奴が加護受けてるんでしょうけど、最終的な勝者になれるかどうかは別として、自分がもし火の大神の加護を受けた駒を倒せたら、自分と結婚してもらえますか!?」
いやもうダメもとだし。全部が。良い意味で全てが吹っ切れていたせいか、ミシェラたんを初めて押せていた、と思う。
「・・・・もし何かの間違いででもあなたが倒せたのであれば、考えてあげても良いですよ」
「その言い方はずるいですよ。せめて、俺の彼女になって下さい。つきあって下さい。お願いします!この通りですから!」
俺が土下座して頼み込むのと、ゲドルリヒが他プレイヤーの接近を告げてくるのは、ほとんど同時だったけど、俺はミシェラたんへの土下座攻勢の継続の方を優先させて継続したのだった。