宇宙海賊やろう! よんじゅうろく
宇宙海賊船が強制接舷したら、やる事はひとつ
海賊どもが集まっている格納庫で歓声が湧いた。フレッドが出入り口の方を振り返ると、ヘルメットを小脇に、あいかわらず黒い簡易宇宙服の上に黒いコートを羽織っている姿のキャプテン・コクーンが入って来たところだった。
「親分の登場だ」
それまで海賊どもの盛り上げ役であったダンゾーが、舞台としていたオイル缶の山から飛んで、コクーンに場所を譲った。
一瞬だけ血まみれの彼女を気にするような素振りをしたコクーンだったが、まるでマントのようにキャプテンコートを翻してダンゾーの代わりにオイル缶の上へと立った。
「だいたいの説明は終わっているな? なにか質問は?」
「おおー」
無いという意味だろうか、詰めている海賊たちは声を上げた。
「よし。じゃあ行くぞ!」
コクーンの声に合わせたのか、遠くから金具同士がぶつかるようなゴツンという音が響いて来た。どうやら乗り込むためのフォースト・ボーディング・ブリッジが向こうの艦体に届いたようだ。
コクーンは身軽にオイル缶から飛んだ。行く先にはレバーアクションライフルを抱えている補給長レディ・ユミルが立っていた。
ちょっと戸惑っているような表情を見せるレディ・ユミル。それに対して小学生レベルのイタズラを思いついたような顔のコクーンは、そのままぶつかるように抱き着いた。
いささかのためらいもなく唇を重ねる二人。
「ひゅーひゅー!」
「ごちそうさま」
「おほほ~」
「見える! 見えるぞよ。ふたりの後ろに素晴らしき未来が。これは誓約の腕輪。これを購入すれば…」
「船長にまで変な物を売るな」
「うらやま」
「ひーはー!」
近くの海賊どもが囃し立てるように声を上げたり、口笛を吹いたりした。
「ええ?」
そんな二人を見て困惑するフレッド。
「どうした?」
装甲宇宙服に装備されている回転灯をわざわざ灯してみせたリーブスが、驚いているフレッドに訊いた。
「船長って、レディとそういう関係なんですか?」
「なんでえ、知らなかったのか? いっつも殴り込みに行く時は、景気づけにこうすんだ」
「え、だって…」
チラリとダンゾーの方へ視線を走らせる。彼女は呆れたような顔をして、抱き合う二人を見ていた。
「じゃあ隊長は、船長の?」
「姉ちゃんだろ。いっつもそう呼んでるじゃねえか」
「ねえちゃ…、姉弟?」
「なんだよ、そんなことも知らなかったのか? まあ、俺が教えなきゃ、誰も教えないか? じゃあフレッドは、なんだと思ってたんだよ」
「いっつも夜は一緒だから、てっきり…」
「ああ~」
語尾をゴニョゴニョと濁らせるフレッドの前で、器用にもポンと装甲宇宙服で手を打ってみせたリーブスは、笑いながら教えてくれた。
「ありゃあ、前に船長が寝込んだ頃を見計らって、反乱を起こそうとしたヤツがいてな。それから夜も守ろうと、一緒の部屋で寝てるだけだ。まあ広い銀河じゃ、そういった関係の姉弟がいないわけじゃないが…。ウチの隊長のアレは、単に過保護なだけだよ」
リーブスの説明が終わる頃、やっとコクーンはレディ・ユミルを解放した。
顔を真っ赤にしたレディ・ユミルが、コクーンの腕の中から彼の顔を見上げながら口を開いた。
「も、もう止めません?」
「なんでだ?」
「は、恥ずかしいから」
乙女っぽい発言に、コクーンはニヤリと笑った。
「入る気合が違うのさ。いってくる」
「はい、いってらっしゃい」
離れる時は意外にあっさりと別れ、二人は簡易宇宙服のヘルメットを被った。
「よし! 行くぞ! てめえら!」
「おう!」
海賊どもの威勢のいい返事が重なった。キャプテン・コクーンを先頭に、陸戦隊が隣室のエアロック区画へと押し寄せる。そこから強制接舷した船へと続くチューブ状のボーディング・ブリッジへと移れるようになっていた。
解説の続き
困惑するフレッド:いちおう乗組む時にリーブスから「合意の上でもエロいことは惑星の上で」という説明があったはずなんだけどね。だから毎夜通っている事を変だと思わないと。まあ船長は別格と考えていたということかな
姉弟:本当なら「してい」と読むのかな?分かりように「きょうだい」とフリガナを振ってみました
「よし! 行くぞ! てめえら!」:ヘルメットを被っていない時は肉声。被っている時は格納庫の壁にあるスピーカと、共通回線から声が通るという設定ですが、わずわらしいので本文では省略しました




