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宇宙海賊やろう!  作者: 池田 和美
23/51

宇宙海賊やろう! にじゅうさん

 バツゲームのはじまりまじまり。と、フェイントを振って、宇宙海賊船での日常生活をチラッとやります



 フレッドに与えられたバツゲーム「『船内配置図』の写真を新しくせよ」という奴は、意外と厄介な仕事であった。

 ルールはたったの二つ。


一、必ず勤務中の写真であること。ただし当直ではなく非番の時でもいいとする。待機や公休の時は禁止。

一、撮影される本人に撮影許可を得てから撮影する事。


 これだけであった。だが意外とこの二つの条件は厳しい物であった。まずバツゲームは乗組員を四つに分けた舷、A、B、R、Sの各舷の入れ替えが丁度終わった直後に始められた。

 これで、最低でも二十四時間は公休となったA舷の乗組員の写真は撮る事が不可能となった。

 またレディ・ユミルなんかはそうだったのだが、やっと見つけたとしても「写真が嫌いだから」という理由で、なかなか首を縦に振ってくれない人もいるようだ。

 そういう者には拝み倒して撮影の許可を得るしか方法が無い。相手が当直や非番の間中ずっと根気強くお願いを繰り返して、やっと一枚撮影が出来たりした。

 またフレッド自体がまだ<メアリー・テラコッタ>の船内構造に慣れていないのも、大きな足かせとなった。

 例えば「船長なら、いまブリッジに居るよ」と言われても、その肝心のブリッジへの行き方が分からなかったりするのだ。

 ダンゾーに<メアリー・テラコッタ>は建物で言うと四階建てだと教わってはいた。ブリッジなら前の方の一番上の階(甲板)かと思ってうろついても、見つけることはできなかった。

 正解はビルで言う四階に当たる短艇甲板(上甲板)のさらに上にある船橋甲板であった。まさかペントハウスのように屋上(最上甲板)の上に構造物があるとは思わなかった。

 で、この話のオチは、一時間もウロウロとした後にやっとブリッジに上がったところで、夕食のためにコクーンは船長室のある居住甲板(下甲板)に下りた後だったというものだ。

 いちおうブリッジは重要な場所なので、他にも船内配置図に写真を載せる人が複数いて、その人たちの撮影ができたのは幸いであったが。

 夕食後も続けようかと思っていたが、それは「残業」になるから禁止と、レディ・ユミルに止められる始末であった。

 夕食は一八〇〇(ヒトハチマルマル)時という、早い時間に行われた。惑星上で一般的に暮らしていたフレッドにとっては、ちょっと早い時間である。

 だがフレッドが一緒に生活しているレイジー・フェロー組以外には、夜勤に伴う夜食があるので、これぐらいで夕食にしないと変な時間にお腹が減ってしまうのだ。

 ちなみに夕食前には飛行長アリウムは再びエロトークを炸裂させ、ダンゾーから股間に鞘打ちを喰らっていた。

 夕食の献立はメインが豚バラ大根で、お味噌汁の具がトウフとナメコであった。

「よし、今日の課業は終了。あとは自分の時間だ」

 食事が終わると、ブリッジを探し回っている間もフレッドにつきあって歩いてくれたダンゾーが言った。

「明日は〇九〇〇(マルキュウマルマル)時が始業だが、〇六○○(マルロクマルマル)時に朝食だから、三〇分前に起きて用意が終わっているように」

 言外に早起きできるかと訊いていた。

「はい。牛乳配達のバイトをやっていたので、朝は強いんです」

「よし」

 満足そうに頷いたダンゾーは、フレッドと一緒に歩き始めた。

「ついでだ。洗濯のことも教える」

 二人で部屋に戻った。フレッドは風呂場にこもり、一日身に着けていた戦闘服を唯一着ていた私服に着替え、下着類を交換した。

 脱いだ物を丸めて抱えて出ていくと、ダンゾーはどこからか出したバケツのような籠を足元に置いていた。

「戦闘服は自浄能力があるから、普通に生活している分には、洗濯しなくても大丈夫だ」

 フレッドが脱いだ戦闘服を丸めているのを見て教えてくれた。

「ただ返り血を浴びたり、ジャングルで泥沼に潜ったりしたら、さすがに洗濯が必要だがな」

「えー」

 とても平坦な声がフレッドから出た。

「だとすると、洗うのこれだけになっちゃうんですけど」

 丸めた戦闘服の中から下着類を取り出す。綺麗に畳めば合わせても手の中に納まってしまう量だ。

「で、私が貯めていた洗濯物がコレだ」

 何も飾らずにダンゾーは足元の籠を指差した。毎日一回下着を交換したとして、何日分であろうか。さらにTシャツやら運動着やら下着以外の洗濯物も混ざっていた。

「コレを今日いっきに洗うから、一緒に放り込んでしまおう」

「はあ」

 たしかに、フレッドの洗濯物の量では、このままお風呂で手洗いした方が、効率が良さそうだ。しかしダンゾーが大量に洗濯するなら、そこへ混ぜてもらった方が楽は楽である。

 母と暮らしている時は三日に一回ぐらいの割合で洗濯機を使っていたし、孤児院に移ってからは毎日みんなの洗濯物と一緒に洗っていたので抵抗感は無かった。

「それでは、おねがいします」

「ん? 名前を書かなくて大丈夫か?」

「うっ」

 なにげないダンゾーの確認に、敗北感すら抱くフレッドなのであった。

(だって…)

 自分とは比べ物にならないほどの豊かなバストをチラ見するフレッド。あれだけサイズに差があったら、どうやっても二人の下着を取り違えるということはないだろう。あるとすればフリーサイズの靴下ぐらいか。<メアリー・テラコッタ>の売店で扱っている不愛想な量産品をダンゾーも使っているようだ。

「それと、こっちも洗濯したいので待ってくれますか?」

 戦闘服に洗濯が必要ないなら、いま着ている私服の方を洗ってしまっておきたかった。着ているトレーナーを引っ張るとダンゾーは了承したとばかりに頷いた。

「待つぞ」

 さっそく腕組みをして仁王立ちという姿勢になった。いちおう上司でもあるし、あまり待たせてはいけないと、慌てて風呂場に戻り着替えた。戦闘服の下には売店で購入したTシャツを身に着けた。

 ペンを借りて靴下に名前を入れる。他の衣類には孤児院で纏めて洗濯していたので、すでに名前が入っていた。

「洗濯場はこっちだ」

 同じ籠に汚れ物を入れさせてもらって、フレッドはダンゾーの後ろについて部屋を出た。飛行科から借りっぱなしのカメラはベッドの枕元に置いて来た。

 荷物を持とうと手を出したが「私の方が、量が多いから」と断られてしまった。

 通路は夜間になったことを示すように、幾分か照明が落とされていた。だが当直や非番、待機などで人通りはそれなりにあった。

「オッス! オッス!」

「はよ~ん」

「おはようございます」

「見える! 見えるぞよ。キミの後ろによからぬモノが。これは誓約の腕輪。これを購入すれば…」

「お前はそればかりだな」

「おはよう」

「おはよ!」

 挨拶を交わしながら通路を進み、食堂の近くへとやってきた。シャワールームの隣に細い行き止まりの通路があると思ったら、そこが洗濯機の置いてある部屋だった。

 まるでカプセルホテルの如く、右側の壁へ二段で機械が並んでいた。

 どれもドラム式の洗濯乾燥機である。端末をかざすと料金が自動引き落としなのは、惑星上のコインランドリーと変わらない。だがサイズが全然違った。どれも布団洗いができるような大きさの洗濯乾燥機なのだ。その気になればフレッドが中に入れる大きさである。

「大きいですね」

「大は小を兼ねるってな」

 ダンゾーは空いていた一基の扉を確認しつつ開いて言った。

「布団はさすがに自浄能力じゃ追いつかないからな。月に一回洗濯しないと、サド先生に怒られる」

「え、怒られるんですか?」

「そうだ」

 大きく頷いたダンゾーは、持ってきた洗濯物を放り込みながら教えてくれた。

「布団は、洗うたびにサド先生から判子を貰わないといけない」

「なんでです?」

 訊き返すと逆に不思議そうな顔をされてしまった。

「寄生虫やらノミやダニが湧くからな。船内の衛生状態を管理する衛生科としては当たり前だろ?」

「あ~」

 昼食時にダンゾーがサドをフレッドに改めて紹介した時を思い出した。あの時は「船医」でなく「衛生長」と呼んでいた。その理由を知って頷くことができた。

「さてと、これでよし」

 全ての洗濯物を放り込み、標準コースを選択すると、ダンゾーが端末をかざして決算した。

「あ」

 上司に当たり前のように払わせるのはいかがな物かと、慌ててフレッドは端末を取り出した。

「ワリカンに…」

「いい」

 必要ないと手を振るダンゾー。フレッドもいちおう端末は出したが、ほとんど一グンマ・ドル程度の金額である。それに重量割にするのか体積割にするのかでも揉めそうだった。

 ここは有難く奢ってもらうのが正しい選択であろう。

「三〇分ぐらいで終わる」

 クイクイっと指で招かれた。

「その間、茶でもどうだ?」

「はい、いただきます」




 解説の続き


コインランドリー:洗濯も船持ちでタダでもいいかも。でも毎日洗濯しないと気が済まない人と、限界まで洗濯するのをサボる人が同列というのも、おかしいかと思って有料と設定しました

布団は…:寄生虫などは現在地球に存在する種だけでなく、宇宙生物でもいるかもしれない


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