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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 時代の変革者たち

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英雄姫



 レティシアの、忙しくも充実した日々は過ぎていく。


 鉄道事業はいくつかの問題点は出てくるものの、全体的には概ね順調。

 実験線は予定からやや遅れたが、トゥージスの街まで整備が完了。

 本格的な走行試験が開始された。


 その一方で、彼女は『学園』の試験に向けての勉強もしていた。

 過去問をいくつか解いてみたが、合格ラインの点数は十分取れそうだった。

 これまでのモーリス家の教育のほか、前世の知識がかなり役に立ったらしい。


 そして試験の日を迎え……無事に合格を果たした。

 彼女が『学園』に入学することは既定路線となり、活動拠点の中心を王都に移すことも決まった。




 更に月日が過ぎ……

 ある日、モーリス公爵家に大きなニュースが舞い込んだ。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 公爵家の談話室にて。

 アンリからそれが語られたのは、いつものように家族が集まって団らんを過ごしている時のことだ。




「王女さま?クラーナちゃん……じゃなくて?」


 アンリが始めたのは『イスパル王国の王女』に関する話だ。

 しかし、イスパル王国の王女といえば、ユリウスとカーシャの娘であるクラーナのこと……レティシアはそう思っていたのだが、どうやら彼女が知らない人物の事のようだった。



「『カリーネ様の遺児を見つけた』……リュシアンからそういう報告が来たんだ」


「カリーネ樣?……そう言えば兄さん、何か事件があったとかで、ウチにも寄らずにリッフェル領に向かったんだっけ」


「カリーネ様はユリウス陛下の元婚約者。カーシャ様の姉君だ」


 初めて聞く話に、レティシアは驚きをあらわにする。


 更にアンリが語ったところによると……


 かつてあった戦争の際、ユリウスの婚約者カリーネは身重ということもあり、戦火を避けるため疎開していた。


 しかし、疎開先のアダレット王国でクーデターによる政変が勃発。

 その混乱の中で彼女は行方不明となった。



「じゃあ、その王女様というのは……」


「残念ながらカリーネ様は亡くなられた事が分かったのだが、その御子であるカティア様は生き延びて、これまでずっと旅芸人一座の一員として、市井で過ごされていた……とのことらしい」


「へぇ~…………あれ?『カティア』って名前、どこかで……」


 その話、レティシアは初めて聞くはずなのだが、王女の名前には何故か聞き覚えがあった。

 彼女がそれを思い出す前に、アンリが答えを告げる。


「暫く前にあったブレゼンタムの軍団(レギオン)襲撃事件。その戦いで多大な功績を上げた英雄『星光の歌姫ディーヴァ・アストライア』、その人こそがカティア様だったんだよ」


「はぇ~……」


 ブレゼンタムの英雄の話はレティシアも聞いていた。

 しかし、それよりもルシェーラを心配する気持ちのほうが大きかったので、すぐに英雄の名と同じであることを思い出せなかったのだ。



「行方不明だったお姫様が英雄だったなんて……物語みたい」


「そうね……。カリーネ様が亡くなられていたのは本当に残念なことだけど……お子様が生きてらっしゃったのは喜ばしいことよ」


 アデリーヌの瞳から滲む涙は、悲しみと喜びが混じり合うものだろう。



「それでだね……カティア様の御一行はいま、リッフェル領を出発して王都に向かっている。リュシアンとルシェーラちゃんも一緒だ」


「あ、ルシェーラちゃんは学園の入学準備があるから、早めに王都に行くって手紙が来てた」


 ルシェーラも問題なく入学試験に合格してるということだ。



「それじゃ、途中で公爵家(うち)に寄ってくのかな?」


「そうなるね。ご本人はまだ戸惑われてると思うが……丁重におもてなしするから、君たちもそのつもりで」


「分かったわ」


「は~い」


 これまでユリウスとカーシャの国王夫妻を何度か招いているので、王族を迎えることの気負いは特に無い。

 レティシアも、もう慣れたものだ。



「そう言えば……なんで王女さまだって分かったの?兄さんは断定してるみたいだけど……」


「カティア様がディザール様の(シギル)を発動したところを見たらしい。カリーネ様のものと思われる『王家の守護石』もお持ちだとか」


「ディザール様の……じゃあ間違いないね」


「そうだね。……それだけじゃなくて、エメリール様の(シギル)も発動できるらしいのだけど」


「「ええっ!!?」」


 アンリが明かす事実に、母娘は驚きの声を上げた。


 カルヴァード12神が各国の王族に授けた『(シギル)』は、当代一人のみ、一つだけ継承できる……それは常識である。

 2つの(シギル)を発動できる人物がいるなど……少なくとも、モーリス一家の面々は聞いたことがなかった。


 それだけでなく……エメリール神の(シギル)を受け継いでいたアルマ王国は数百年前に滅んでおり、以降は継承者が途絶えていたはずなのだ。

 その継承者が再び現れた……それも、彼女たちが驚愕する理由なのだ。



(ホントに物語の主人公みたいじゃないの。……もしかして転生チートとかだったりして)



 レティシアは内心でそんなことを思う。

 伝説の力を受け継いだ英雄姫。

 まさに物語の主人公に相応しい人物だと。




 そして運命の出会いは……もう、すぐそこまで迫っているのだった。



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