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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 時代の変革者たち

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かけがえのない日々



 ある日の公爵家。

 再び夕食後の家族の団らんにて……




「レティ、君に話があるんだが……」


「……また婚約の話?」


 前回と同じ流れを感じて、レティシアは身構える。

 だが、アンリは苦笑しながら頭を振って否定した。



「いや、その話は……君の意向を踏まえて、『しばらくは鉄道開業に専念する』と、断りを入れることにしてる」


「うん……ありがと。ごめんなさい」


「謝る必要はないわ。私達の願いはあくまでも、あなたが幸せになること。意に沿わない婚約を強いるつもりなんてないのだから」


 結局のところは、ロアナが言った通りなのだ。

 両親も兄も、レティシアの幸せを一番に考えてる。

 そんなことは彼女も分かっていたのだが……人の心というのは複雑なのだろう。



「じゃあ、話って……?」


「レティ……『学園』に入らないかい?」


「『学園』……ってアクサレナ高等学園のこと?でも……」


 その提案自体は不思議ではない。

 『学園』は、イスパル王国が誇る学術機関。

 レティシアくらいの少年少女が勉学に励み、優秀な人材を多く輩出する。

 由緒正しきモーリス公爵家の姫ともあれば、そのような学校に入学することは、ごく自然なこと。



「婚約の話は鉄道開業を理由に断ってはいるが……今となっては多くの事が、君の手を離れても回るようになっただろう?学生やりながらでも、問題は無いんじゃないかい?」


「まぁ、それはそうだけど……」



 モーリス商会の鉄道事業に従事するスタッフは、末端まで含めれば既に数百人規模となっている。

 優秀な人材も多く育ち、アンリが言う通りレティシアが直接指示する場面は少なくなっている。


「でも、何で今さら学園なの?」


 学業面のことなら家庭教師で十分であるし、そもそも何年も前から自ら会長として商会を切り盛りしている。

 彼女としては『何で今さら』……というのが率直な気持ちだ。



「レティ。私達はね……あなたに、もっと同年代の友人を作って欲しいのよ。学生時代に築いた人脈というのは、大切でかけがえのないものよ」


「うっ……」


 同年代の友人が少ないことを自覚してる彼女に、その言葉は鋭く突き刺さる。


 精神年齢的には、前世から数えれば彼女もいい年になるはずだが……あいにくと、それ相応の大人になったという感覚は無い。

 幼い頃は同年代の子どもたちと精神年齢のギャップを感じたものだが、今となってはそれも無いだろう。



「ルシェーラちゃんも、今年の入学試験を受けるらしいわ」


「あ、そうなんだ……」


 ルシェーラはレティシアよりも年下……13歳になるが、学園に入学できる年齢の下限はクリアしてるし、昔から年齢よりも大人びていたので違和感もない。


 そして彼女は、数少ないレティシアの同年代の友達だ。

 最近は直接会ってないが、手紙のやり取りは頻繁に行っていた。



「う〜ん……ルシェーラちゃんも入学するのかぁ……」


「合格すれば、だけどね」


 それはレティシアは心配していない。

 彼女の聡明さは良く知っているから。




 母の言葉を頭の中で反芻する。

 そして、前世のことを思い出す。

 もう二度と帰ることのない時代を……


 少し切ない気持ちにもなったが……確かにそれは、彼女 (彼)にとってかけがえのない大切な日々だった。


 あの頃の友人たちは、今頃どうしてるのだろうか?

 もう結婚して、家庭を持ったりしてるのだろうか?

 そうやって、久しぶりに過去に思いを馳せた。


 そして。

 もう一度あの日々を……そう思うと、レティシアは自然とそれを口にする。



「……私も、学園に入りたい」


 その言葉を聞いた両親は、嬉しそうに顔を見合わせた。



「そうか。よし、君にその気持があるなら早速手続きしようじゃないか」


「すぐに受験の申込みしないと。イスパルナにも試験会場があるから、良かったわね」


 試験会場は、王都アクサレナの本会場のほか、イスパルナとブレゼンタムにも設けられるとのこと。

 ルシェーラは当然、自領で受験することになるだろう。



「試験っていつなの?」


 入学時期はかなり先……秋口なのは彼女も知っているが、試験がいつ行われているのかは知らなかった。



「一ヶ月後よ」


「ふぁっ!?……え?だって……名門の難関校だよね……?」


 予想外に日程が迫っていることに、彼女は驚きの声を上げる。

 前世の感覚から言えば、ありえないスケジュールだと思ったが……



「君なら大丈夫だろう」


「そうよね」


 両親は事もなげに言う。

 彼らは、娘の能力については全幅の信頼を寄せているのだ。



「本当……?でも、取り敢えず過去問を見てみたい」


「ああ、もちろんだ。早速手配しよう」



 こうして彼女は……

 その日から、鉄道事業のかたわら、試験勉強に勤しむことになるのだった。


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