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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 時代の変革者たち

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モヤモヤ



 フィリップとの婚約話は、正式に断ることとなった。

 先方は、返事は急がないと言っていたが……


 中途半端な気持ちのまま返事を引き伸ばすのは誠実ではない……レティシアはそう思ったのだ。

 そして今はまだ、鉄道の正式開業に向けて全力を注ぐときであり、そのほかの事を考える余裕はない。

 そういった事や、自分を選んでくれたことに対する感謝、そして謝罪を自ら手紙にしたため、フィリップに送った。


 すぐに返事は来た。


 その手紙には『大事な時期に惑わすような事をしてしまい申し訳ない』という謝罪から始まっていた。

 続いて『今回は残念だが一技術者としてはこれからも交流を図りたい。予定通り視察には伺うから、どうかよろしく』と。

 そして……『イスパルの鉄道が開業した暁には、ぜひ婚約の件も再考してもらえると嬉しい』とも。


 どうやら長期戦を覚悟したようだ。

 ……いや、もともとそのつもりだったのかもしれない。

 そして、手紙の内容からフィリップの真剣な気持ちを察したレティシアは……今回は答えを先延ばしにしてしまったが、自分も真剣に向き合っていこうと思うのだった。







 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 モーリス商会会長室にて。



「ねぇ、リディー?」


「ん?」


「リディーはさ……そろそろ結婚とかしないの?」


 今日も今日とて書類と格闘していた会長(レティシア)だったが……副会長(リディー)が部屋にやってくると手を止めて、唐突にそんな質問をした。



「……どうした、藪から棒に?」


 彼は一瞬だけ固まったものの、すぐに気を取り直して聞き返す。


「いや、なんとなく。恋人とかいないの?」


 自分で聞いておいて、彼女は何だかモヤモヤを感じ始める。



「いや、いない。知ってるだろ?」


「知らないよ。じゃあ、気になる人は?……あ、ほら、エリーシャとか」


 そう言えば前にエリーシャにも似たような質問をしたことがあったな……と彼女は思い出した。

 その時も、リディーが誰かと……と考えて、モヤモヤした気持ちになった。


 そして、もしリディーとエリーシャが……

 そう考えたとき、『そうなったら嬉しい』という気持ちも確かにあるのだが、それで心が晴れることはない。



「エリーシャさんは仕事一筋って感じだからな……。それに、それは俺も同じかな。今はとにかく、鉄道の開業に向けて集中したい」


「……そっか。じゃあ私と同じだね!」


 モヤモヤは晴れた。

 そして彼女は、なぜそんな話をしたのか……その理由を話す。



「実はさ……私に婚約の申込みがあったんだよ」


「!」


 レティシアの言葉を聞いて、リディーはピクリと眉を上げたが、黙って話の続きを聞く。


「ま、断ったんだけど。まだ私、そういうのってよく分かんないし……。それに、リディーと同じで今は鉄道の事しか考えられないから」


「……そうか」


 どこか安堵したように彼は呟いた。






「変な話してごめんね。そう言えば、何か用事があったんじゃないの?」


「あぁ、そうだった。実験線の事で報告があったんだ」


 入室早々に話をふられたが、リディーは本来の用件を思い出す。



「報告?何かあったの?」


「少し予定が遅れるとのことだ。何でも、建設ルート上にある森に厄介な魔物が住み着いてるらしい」


「魔物?イスパルナ近郊で、そんな強い魔物が出るなんて……珍しいね」


 イスパルナは人口が多く、近郊には衛星都市も多い。

 実験線はイスパルナから、衛星都市の一つであるトゥージスまでが予定されている。

 その近辺には小型の魔物はそれなりに出没するものの、高ランクの強力な魔物が出現したなどという話は(少なくともレティシアは)聞いたことがない。


「まあ、強いといってもBランク程度ということだし、既に討伐のため冒険者も向かってるそうだ」


「そう、なら良かったけど。でも…………何か最近、なんとなく不穏な感じがするね……」


 彼女の言葉には何か根拠があるわけではなく……ただ漠然とした空気を感じるだけだ。



 しかし近い将来、彼女のその感覚が正しいことを裏付ける事件が西方の地で起きることになる。


 その事件に彼女が直接関わることは無いが……

 やがて、それぞれの物語は交錯することになるだろう。


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