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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア12歳 鉄の公爵令嬢

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レティシアの社交界デビュー


 そこは別世界だった。


 豪華なシャンデリアや燭台に灯された魔法の光が夜の闇を追い払い、光り輝くパーティー会場。

 ダンスホールでは王城付きの管弦楽団が奏でる音楽に合わせ、着飾った男女が優雅に踊る。

 そして、様々な料理が並べられたテーブルの周りにも多くの人々が集まり、楽しそうに談笑していた。



 アンリとアデリーヌ、そしてリュシアンにエスコートされて会場入りしたレティシアは、目の前の光景に圧倒される。



(うわぁ〜…………想像してたのよりも凄いなぁ〜)


 前世でアニメや漫画に触れていた彼女にとって、貴族の夜会にはある程度のイメージがあった。

 それは概ね合っていたようだが、実際に目にした光景は想像以上に華やかだ……と、彼女は思わずため息をつきながら思うのだった。





 さて。

 メイドたちが、あーでもないこーでもないと議論を交わしながら(ときに拳を交えながら)選んだパーティードレスを纏うレティシア。

 比較的シンプルなデザインながら、上質で上品な鮮やかな赤いドレスは、彼女に良く似合っていた。

 うっすらと化粧を施し、アップに髪をまとめた彼女の美貌は輝くばかりである。


 普段は、どちらかといえば可愛い系の彼女だが、今は少女らしい可憐さの中に大人の女性らしさも感じさせる……その年齢でしか醸し出せない特別な魅力を放っていた。

 最終的には荒ぶるメイド隊の全員が納得したほどの、彼女たち渾身の力作であった。



(結局……ギリギリまでかかったなぁ〜……。まあでも、凄く頑張ってくれたよね。感謝感謝!)


 準備の時のアレコレを思いだし、レティシアは少しばかりげんなりするが、最後に鏡を見た時には自分自身でも見惚れるくらいの出来栄えに仕上げてくれたことに対して感謝の気持ちも忘れなかった。



 なお、魂を削ってやりきったエリーシャやメイド隊がレティシアを見送ったあと……力尽きて倒れた事をレティシアは知らない。

 残されたパーシャが、今も介抱に忙しくしていることだろう。






 モーリス公爵家一家が入場する際にはそれぞれの名が告げらた。

 イスパル王国の貴族家の中でも王家に次ぐ家格の由緒ある一族の登場に、その場の注目が集まるのは当然の事だろう。

 特に注目が集まったのが、今回が社交界デビューとなる可憐な姫君だったのも当然なのかもしれない。



(うひゃあ……みんなこっち見てるぅ……お腹痛い……)

 

 視線が自分に集まるのを感じたレティシアは、緊張のあまり身を固くする。



「大丈夫だよレティ。堂々としてるだけで良いんだ」


 繋がった手から妹の緊張を察したリュシアンが、優しく言う。

 すると、レティシアはとたんに緊張が和らいでいくのを感じた。


「うん。ありがとう、兄さん」


 今は離れて暮らす兄だが、その優しい声に安心するのは昔から変わらない。


 ぎゅっと、兄の手を握ってから顔を上げ、背筋を伸ばして歩き始めるレティシア。

 その様子を見ていた両親は、嬉しそうに顔を見合わせて微笑んだ。







「おお、皆よく来てくれたな」


「皆さん、今日はゆっくり楽しんでいって下さいね」


「陛下、王妃様、ご機嫌麗しゅうございます。本日はこのような素晴らしき催しにお招きくださり、モーリス家一同感謝申し上げます」





 会場入りしてからしばらくは、アンリと親交のある貴族や富豪たちに、(レティシア)の紹介がてら挨拶回りに時間を費やした。

 公爵家ともなれば、ドン!と待ち構えて挨拶を受けるのが普通であるが……その点、アンリはフットワークが軽いらしい。


 そして、国王夫妻が登場してから、タイミングを見計らって挨拶に訪れたのだった。



「レティシアは今回が初めての社交界だったか?」


「は、はい。その……すごく綺羅びやかで、目がチカチカしてます」


「はははっ!!確かにな!!しかし……今日の夜会で一番輝いているのは、そなたであろう。なあ、カーシャ?」


「ええ、本当に。とっても素敵よレティ。ユリウスの言う通り、殿方は皆あなたのことを見ているわよ」


「あ、ありがとうございます。でも、私が一番ということはないと思いますが……」


 その言葉は謙遜などではなく本心からのものだ。

 確かにメイド隊の魂の力作には彼女自身も見惚れたものであるが……会場には自分などよりも綺麗な女性がたくさんいると思っている。


 だが、実際のところ男たちの注目を最も集めているのはレティシアだった。

 それは幼くも美しい容姿が目を惹くという事もあるが、公爵家の姫君という点も理由の一つだろう。



「これからが大変だな、公爵殿。父親としては複雑であろう?」


「いやあ……むしろ、早く婚約者が決まってくれると、私の心配事も一つ減るのですがね」


 ユリウスとアンリの会話に、レティシアは思わず顔を顰めそうになるが、なんとか我慢した。



(……はぁ、やっぱりそう言う話になるのか。挨拶回りした時も『うちの息子の嫁にどうです?』なんて言われてたし。父さんははぐらかしてくれたけど、ホントは早く婚約者を決めてもらいたいんだよね……)


 彼女は、自分の性自認について答えが出せていない。

 ……否。

 答えが出ていないと思い込んでいる。

 その手の話になったとき、決まってある人物が頭に浮かぶのを、彼女は自覚していない。



(リディーは今頃何してるのかな……)



 今もまた、その人物を想い……憂鬱な気持ちが少しだけ晴れるのだった。



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