表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア12歳 飛躍

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/190

大河


 アレシア大河。

 カルヴァード大陸の脊梁山脈……その中でも最高峰のスオージ山に源流があると言われ、数多の支流が流れ込むイスパル王国最長の大河だ。

 イスパル王国はこの川によって大きく東西に分けられる。


 かつて、この川を渡るためには渡し船を使うか、狭小部で橋がかけられてる上流まで大きく迂回するしかない難所であったと言う。

 しかし、およそ300年前に黄金街道の整備が行われた際に頑強で長大な橋が掛けられた。


 それが……



「う〜ん……いつ見ても凄いよねぇ、この『アレシアの六連橋』は」


「そうですね。この橋があるおかげで、イスパルナと王都の旅程はそれまでに比べてかなり短縮されたとか」


「だね。その時と同じように、鉄道が通って更に便利になると良いのだけど」



 イスパルナから王都アクサレナに至る道は比較的平坦で、鉄道を敷設するにあたって難所と呼ぶべき場所はほとんど無い。

 しかし、このアレシア大河だけは別だ。

 幅が2km以上にも及ぶ大河に架橋するのは、多大な困難を伴うに違いない。



(この六連アーチ橋も見るからに頑丈そうな石橋だけど、300年前の建造物に頼るのもねぇ……。魔導力機関車の重量は相当なものになるだろうし、それに耐えうる構造と材質をしっかり検討しないと)


 内心でそう考えるレティシアであるが、ここが難所となるのは分かりきっていた事だ。

 なので、既に彼女は『学院』の土木工学・橋梁工学の専門家に協力を要請していたりする。


(鉄道橋といえば、トラス橋、アーチ橋、ガーダー橋なんかが代表的だけど……この世界の技術水準で実現可能、かつ、この川に掛けるのに適切な構造は何だろう?景観にも配慮したいところだけど、とにかく安全性は最優先で)



 レティシアは前世の知識はあっても専門家ではない。

 だから、アレシアの架橋に関わらず、そういった協力要請は多岐にわたって行われているのだ。

 その点については、魔法の師で学院出身のマティスや、公爵家の様々な伝手が大いに役立ったのは言うまでもないだろう。


(ほんと、私一人だけの力じゃどうにもならなかったし……感謝感謝だね!)


 常日頃から感謝の念を忘れることは無い彼女ではあるが、改めてそう思う。





 さて、レティシア一行は六連橋を渡り始め、イスパル王国東部地域へと足を踏み入れようとしていた。

 ここを渡れば、その先は特に変わり映えしない幾つかの宿場を経て数日後には王都に到着するだろう。



「エリーシャとリディーはもう王都に着いてる頃かな〜?」


「私達より一週間早く出立したので、もう到着している頃でしょうね」


「それよりも更に前に父さんと母さんも行ってるし……それに、久しぶりに兄さんにも会えるね〜」


 社交界シーズンと言えば農閑期となる冬場がメインではあるが、今回はレティシアの王都訪問に合わせて彼女の社交界デビューが予定されているため、両親共に王都入りしている。

 そして兄リュシアンは『学園』を既に卒業し、正式にイスパル王国騎士団の一員となっている。


 レティシアは社交界デビューは憂鬱に感じているが、久々に兄に会えるのはとても楽しみにしていた。



「エリーシャさんとリディーさんは、品評会の準備と……」


「あとは、モーリス商会王都店の開店準備だね!」



 そう。

 実は、今回を期に王都にもモーリス商会の支店を立ち上げる事になっているのだ。

 正確に言えば、今でも販売店舗はあるのだが……

 レティシアは以前より、鉄道開発が本格化して敷設工事が始まった際には王都側にも開発拠点が必要になると考えていた。


 そして、品評会にて鉄道関連の技術発表が行われたあと……様々な問い合わせが予想される事と、将来的な鉄道事業への参入に興味を示す団体が現れる事も期待し、王都における受付窓口も兼ねるために立ち上げる事になったのである。


 そういった経緯もあり、エリーシャとリディー、副会長のアデリーヌは、オープニングスタッフへの教育や指示を行うと言う目的もあったのだ。



「私も一緒に行ければ良かったんだけど、どうしても本店の方で終わらせておきたい仕事があったからね。早鳥で指示を出しても良いんだけど、どうしてもタイムラグがあるから……」


 と、そこまで言ってから彼女は考え込む。


(そう言えば……保安装置絡みで通信手段も検討しなきゃだっけ。ホントに、まだまだ検討事項が山積みだなぁ……)


 技術開発はかなり前進したとは思うものの、それでも未だに解決しなければならない課題が多いことを思うと、レティシアは目眩すら覚える。


 しかし彼女が歩みを止める事はないだろう。

 もう既に自分だけの夢ではないのだから。

 多くの人の力を借りて突き進むのだから、最後まで責任を持ってやり遂げる。


(きっと、この六連橋を築き上げた人たちも……自分たちの仕事に責任と誇りをもってやり遂げたんだよね)


 馬車の窓から雄大なアレシア大河の流れを眺めながら、かつて大きな仕事を成し遂げた人々に思いを馳せ……レティシアは決意を新たにするのだった。




〜〜 レティシア12歳 飛躍 完 〜〜

ここで一区切りですが、次も12歳編が続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ