決戦3
廃坑の魔物との戦いは、いよいよ決着の時を迎えようとしていた。
個々の能力もさることながら、魔物とは思えない程の的確な連携によって、冒険者たちは苦戦を強いられていたが、エリーシャとレティシアの参戦により形勢を逆転。
ついには総大将たるオークエンペラー、ただ一体を残すのみとなった。
「最後まで油断するな!!一体だけでも強力な魔物に違いはないぞ!!」
「前衛三人で囲むぞ!!俺たちの攻撃の合間に魔法を叩き込んでくれ!!」
前衛のフランツ、ジャン、そしてエリーシャが敵を取り囲む。
エリーシャは、冒険者二人の息のあった連携を邪魔しないように立ち回りながら、自らも斬撃を叩き込む。
そして、中衛後衛のメンバーも、前衛の攻撃が途切れるタイミングを補うように弓矢や魔法で牽制。
如何にタフネスを誇る魔物といえど、こうなれば後は時間の問題だ。
反撃に注意を払いながら、確実に追い詰めていく。
そして……
「大きいの撃つよ!!」
レテァシアの掛け声で前衛三人が散開する。
それを見た彼女は、手を前に突き出して最後のトリガを引いた!
「[[虚空槍]]!!!」
物体を消失させる虚無の光が槍となってオークエンペラーに襲いかかる!!
ボッッ!!
『ぶがぁーーーーっっ!??』
それは魔物の腹に大穴を開け、堪らず絶叫が上がった!!
「決まった!!」
「まだだっ!!止めを刺すぞ!!!」
「はいっ!!」
一時後退していた前衛三人が再び間合いを詰め、渾身の斬撃を叩き込む!!
ザンッ!!
ザシュッ!!
ドシュッッ!!
フランツが首を切り裂き、エリーシャが背後から袈裟懸けに、ジャンの斧が胴を薙いだ。
『ブ、ギィ……』
それぞれが致命の威力を持つ攻撃を同時に受け、さしものオークエンペラーも、ついには断末魔の声を上げて動きを止め……
ズズン……
地響きを立てて地面に倒れ伏すのであった。
「ふぅ……どうにか倒したな」
「いやぁ、嬢ちゃんたちの加勢が無かったら……どうなってたか」
「本当ね……護衛対象に助けられるなんて、冒険者失格だわ」
戦いが終わり一息ついたところで、冒険者たちが反省の弁を述べる。
勝利の余韻に浸る余裕も無いようだ。
「そ、そんな事!どう考えてもアレはイレギュラーだったんじゃ……」
「それはそうかも知れんがな……まぁ、ギルドにはありのままを報告して査定は任せるさ」
「ともかく、これで魔物は一掃出来ただろ。さっさと街に帰ろうぜ」
そう、ジャンが話を締めくくった。
レテァシアの初めての冒険はこうして終わりを告げた。
(う〜ん……転生したからには冒険でしょ、なんて軽い気持ちでついて来たけど……現実は厳しいね。今回はたまたま何事もなかったけど。やっぱり私には向かないって事が良く分かったよ)
そう結論づける。
そして、これ以後に彼女が冒険に出ることは無かった。
ただ一度を除いては。




