決戦の始まり
廃坑の魔物駆除もいよいよ大詰め。
残すは最も大きな空間を持つ採掘区画のみ。
そこにはオークたちを統率するボスがいるものと推測される。
恐らくはオークキング……脅威度ランクAの強力な魔物だ。
周囲に侍るのも上位種であると思われる。
決して油断できる相手ではないが、こちらもフランツを始めとした歴戦の上位ランク冒険者達だ。
遅れを取ることは無いはずである。
「……いるわね。かなりの数が集まってるわ」
「あぁ、予想通りだな。皆、準備は良いか?」
もう少しで”大部屋”というところで、ウルスラが警告を発し、フランツが突入前の最終確認をする。
パーティーの面々は無言で頷く。
そして、冒険者達は戦いの場へと向かう。
『ブヒィーーッッ!!』
奇襲を警戒しながら進み、大部屋へと到達すると、そこには数多くのオークたちが待ち構えていた。
そして、その中心には一際大きな身体を持つオークが。
「やはりオークキング。取り巻きにハイオークとオークメイジが数体ずつ」
「うしっ!気合い入れて退治するぞ!」
「雑魚も数が多いわ!先ずは取り巻き達を確実に仕留めて!」
「メイジの魔法には注意してください!!発動の予兆を見逃さないように!ライルさん!」
「ああ。『魔壁』!」
それぞれが己の役割を果たすべく行動を開始する。
オークメイジの魔法を警戒したライルが、魔法防御の結界を展開した。
前衛のフランツとジャンは二手に分かれて、立ちふさがる配下たちを排除すべく切り込んでいく。
『ブヒィッッ!!ブヒィーーーッッ!!』
対するオークたちも迎撃の構え。
キングからの指示(?)に応じて行動を開始した。
「ふっ!せいっ!」
「でりゃあーーっっ!!!」
フランツの抜き放ちざまの斬撃で一体、返す刀でもう一体を斬り伏せる。
ジャンは裂帛の気合でポールアクスを振り回して、こちらも二体を纏めて薙ぎ払う。
なお、比較的広い場所での戦闘なので、彼は予めポールアクスに持ち替えている。
前衛二人が瞬く間にオーク4体を撃破するが、敵の数はまだまだ多い。
数に任せて雪崩のように押し寄せてくる。
「『地走雷』!!………『散』!!」
オーク達が前衛二人に辿り着く前に、ロミナの攻撃魔法が発動する。
二人の間を抜けるように地面を走った雷撃が、押し寄せる敵の目前で枝分かれして広範囲に広がった。
バチバチバチッッ!!!
『『『ぐぎゃーーーっっ!!??』』』
最前列を走っていたオーク数体に雷撃が絡みついてその足を止める。
それに阻まれて後続の勢いが落ちたところを、再び前衛二人が飛び出して、確実にオークを屠っていく。
それからも一方的な展開だった。
「……凄い!強い!」
「流石は高ランクの冒険者です。数の差をものともしないですね」
レティシアは一方的に敵を蹂躙する冒険者たちに驚き喜び、エリーシャもしきりに感心する。
「ですが、本番はこれからですね……」
「う、うん……」
雑魚のオークは一掃されたが、まだボスとその取り巻きの上位種は健在である。
エリーシャの言う通りこれからが戦いの本番だろう。
オークキングの周りにはハイオークが5体、オークメイジが3体。
どちらもBランクの強力な魔物。
単体であれば高ランク冒険者なら問題ない相手だ。
しかし、最上位のオークキングが指揮する部隊となれば危険な相手となる。
フランツ達もそれは重々承知している。
雑魚オークをあっさりと蹴散らしても慢心せず身構え……決戦に向けて緊張感が高まっていく。
(ごくっ……皆、頑張って!!)
敵対する者同士の重圧感が漂う中、レティシアは心のなかで冒険者たちを激励するのであった。




