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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア8歳 転機

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出会い

遅くなりました…

 マティスの言った通り、直ぐに論文の著者…リディーとの約束を取り付ける事ができた。


 そして約束の日、朝からレティシアはそわそわしながら来客を待っていた。

 これまで頭を悩ませていた問題が解決するかもしれないとあっては無理もないことだろう。



 約束の時間が近くなると、先に到着したマティスと一緒に待つことに。


 そして…


「レティシアお嬢様、お客様がいらっしゃいました」


「は〜い!お通しして!」


 レティシアが入室を許可すると、エリーシャが扉を開けて来客を招き入れる。

 そして部屋に入って来たのは、まだ少年と言って良いくらいの男性だった。

 銀の髪と青い瞳を持ち、端正な顔立ちはともすれば女性的ですらある。



(ふぁ〜……凄いイケメンだねぇ……それにしても思ったより随分若いんだ。まだ14〜5歳くらいに見えるけど)


 アスティカントの学院を卒業したと聞いていたので、レティシアはもう少し上の年齢を想像していたのだ。


(…っと。とにかく、先ずは挨拶しないと)



「ようこそお越し下さいました。私はレティシア=モーリスと申します。本来であればこちらからお伺いするところですが…かえってご迷惑になるかと思いまして。突然お呼び立てしてしまって申し訳ありませんでした」


 レティシアが丁寧に挨拶をすると、彼の瞳には僅かに驚きの色が見えた。


 彼は貴族令嬢の我儘で突然呼ばれた事に対して少し不機嫌になっていた。

 だが、モーリス領の奨学金制度のおかげで学院に入学できたということもあり、無下に断ることも憚られた。


 だが、実際に令嬢…レティシアに会ってみれば、思いの外丁寧な挨拶をされて面食らったのだ。

 適当に相手してさっさと切り上げるつもりだったのだが……少なくとも平民を見下すような態度は見られなかったので、多少は付き合っても良いかと考え直すのだった。


「いえ、こちらこそご配慮頂き感謝いたします。私はリディーと申します。この度は、私ごとき平民が、モーリス公爵家の方にお招き頂いたこと、まことに光栄の至りにございます」


(ん〜……何だか、貴族に対してあまり良い感情を持っていないのかなぁ?うちの領って割と善政敷いてると思うんだけど…)


 レティシアは、リディーの言葉の端に透けて見える感情を察知してそう思うが…実際のところ彼は貴族に対して良い感情を持っていない。

 だが、それはモーリス領の政治に対する不満からではなく、彼が学院で相手をしてきた同級生の貴族に起因するものだった。


(…ま、誠意を持って話をすれば、きっと打ち解けてくれるよね)


 そう、レティシアは前向きに考えるのであった。



 そして、今度はマティスをリディーに紹介する。


「あ、こちらはマティスさんです。私の魔法学の先生で、以前はアスティカントで教鞭を執られてたんですよ」


「お初にお目にかかる。私はマティスと言う。君の事はグレイルから聞いておるぞ。弱冠15歳で学院を卒業した天才児、とな」


(へぇ〜…やっぱり見た目通りの若さなんだ。学院って前世の大学みたいなものだし、そこを15歳で卒業って凄いなぁ…)


「…いえ、それ程でも。私もマティス先生の事はお聞きしております。わかり易い授業だけでなく、生徒の悩みなども親身に相談に乗って下さる良い先生だったと」


「ですよね!先生の教え方、凄くわかり易いですから!…でも、そんな人を独占しちゃって、学院の生徒さんには何だか悪いですね」


「ははは、今は楽隠居の身だからな。レティに教えてるのも楽しいからやっておる。まぁ、老後の道楽みたいなものだ」


 平民と貴族、あるいは師匠と弟子というよりは、祖父と孫娘のような雰囲気にリディーは感じた。

 そのやり取りを見て彼は更に態度を軟化させる。


 学院のマティス教諭と言えば、アスティカントの次期学長とも目されていたほどの人物だ。

 それほどの人から教えを受け、信頼関係も築いている。

 幼い我儘令嬢の道楽と切って捨てるのは早計…先ずはちゃんと話を聞いてみようと、リディーは思うのだった。




















「それで……私の論文に興味がお有りとの事ですが…」


 一通り挨拶も終わったので、リディーは早速本題を切り出した。


「私は学院在学中に幾つか論文を書いているのですが…お嬢様が気にされているのは、どの論文の事でしょうか?」


「あ、はい。え〜と…『異属性魔力間における物理的相互作用に関する考察』ですね」


「ああ、あれですか……」


 リディーは複雑そうな表情で応える。


(あれ?何かビミョーな反応…どうしたんだろ?)


「…どうされました?」


「あ、いえ…確かにあれは私が書いた論文ではあるのですが……正直なところ、あまり役に立つものでは無いかと思いまして」


「?…それは何故です?」


「異る属性間に働く物理的な相互作用は確かに存在しますが、その力は距離が極めて近くなければ働かないのです。魔力量にも依りますが、数センチも離れると殆ど影響がありません。それで…応用方法が何も思いつかなかったのです。…まぁ、私は基礎研究の方が好きなので、あまり応用には力を入れてなかったと言うのもありますが」


 それでも、可能な限りは何らかの方向性くらいは示していたのだが、その論文に関しては全く何も思いつかなかったのだ。

 彼が言う通り、他の研究も抱えていたのでそれ程気にしていなかったと言うのもある。



「そうですか…それなら、私にアイディアがあります。……と言うかですね、私には実現したいものがあって、そのために論文に書かれていたような性質が使えないものか…それを相談したかったのです」


 そう言って、レティシアは彼女が考えたその論文の可能性……魔導力モーターのコンセプトを語り始めるのだった。


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