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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 輝く未来へ

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鉄橋を渡る



 アクサレナを出発した一番列車は順調に鉄路を走り抜け、ちょうど中間地点となるアレイスト駅に到着した。

 列車はこの駅で、暫くの間停車することになっている。


 乗客たちはそのまま車内に留まる者、長い間揺られていた身体をほぐすために一旦ホームに降りる者……それぞれが思い思いの行動を取っていた。


 中には、最近王都で売り出された写像魔道具(カメラ)で記念撮影する者の姿もちらほらと見られる。

 カティアもその一人で、友人たちを集めて機関車をバックに撮影していた。

 他の撮影者の多くも、車両をバックに人物中心で撮影しているが、中には列車だけを被写体にしている者も見られる。


(撮り鉄の第一号……ってことかな?今はまだ大丈夫だけど、将来的には何か対策考える必要があるのかなぁ……?)


 自身が転生するきっかけとなった、撮り鉄の迷惑行為を思い浮かべるレティシア。

 彼女にとってはトラウマにもなりそうな記憶だが、今となっては過去の思い出。

 彼らに感謝することなどもちろんあり得ないが、今この世界でこうして生きているのは、幸せなことだと思っている。




 そして数分後、反対ホームにはイスパルナ発の一番列車も到着する。




「父さん!!母さん!!」


「やあ、レティ。そちらも問題なかったようだね」


「レティ、お疲れ様」


 イスパルナ発の列車からホームに降り立ったのは、レティシアの両親だ。

 彼らはイスパルナでの開業式典に主催者として出席したあと列車に乗込み、ここアレイスト駅でレティシアたちが乗ってきた列車で一緒に折り返す予定となっていた。



「イスパルナの式典はどうだった?」


「いやあ、凄い盛り上がりだったよ。王都もそうだったんだろう?」


「うん!王都も凄かったよ!」


「アレシア大河を渡るときもね、すごい歓声が上がったのよ」


 そういうアデリーヌ自身、とても興奮した様子だ。


「うわぁ……楽しみだなぁ……」


 そしてレティシアは、これから先に訪れるであろう車窓の素晴らしさを想像して目を輝かせた。


 アクサレナ〜イスパルナ間は比較的平坦な地形なので、景色の変化はあまり大きくはない。

 それでも車窓に飽きることはなかったのだが、ハイライトとも言える場所を通るのは期待も大きいだろう。



 そして双方の一番列車同士がすれ違い、アレイスト駅を出発する。

 すぐに大河に架かる鉄橋を渡ることになるだろう。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 ドドン、ドドン……と、地上よりも重たい音を立てて列車はアレシア大河の大鉄橋を渡っていく。


 最新の橋梁工学の粋を結集して架けられたこの橋は、黄金街道の六連橋と並行して川を渡る。

 その構造は、川岸から河川敷部を渡る部分はガーダー橋、川面を渡る部分はトラス橋となっている。


(前世で『鉄橋』って言ったらトラス橋のイメージだよね)


 鉄骨を三角になるように組み合わせて強度を得るというもので、レティシアの前世ではごくありふれたものだが、この世界ではこれほど大規模なものは他に例がない。


 ガーダー橋というのは、トラス橋よりもシンプルで特別な構造は持たないが、橋桁の間隔を短くとる必要がある。


 この二つの組み合わせは、レティシアの前世でも割と一般的なものだ。




「うわ〜……凄い橋だね」


「よく数ヶ月程度でこんな橋を作れたわね」


 メリエルは窓に張り付いて夢中になって窓の外を眺め、シフィルは感嘆の呟きを漏らす。



「アレイストの町に工場を作って、そこで鉄骨とかの部材を生産したんだけど。両岸まで線路が繋がったあとは、試験も兼ねて貨物列車を走らせて……他の街で生産した部材も運び込んだんだよ。架橋工事には魔導力機関を搭載したクレーンなんかも導入したんだ。世界最先端の工事現場だったのは間違いないね」


 と、レティシアは自慢げに解説する。


 その間にも列車はゆっくりと鉄橋を渡っていく。

 スピードを落としているのは、開業から当面の間は徐行運転する事になっているからだ。

 試験運転によって安全性は確認されているが、念には念を入れて日々の点検を重点的に行い、段階的に制限解除していくのである。


 そういった事情があるのだが、景色の良いところで徐行運転というのは、ある意味ではサービスのようなものだ。


 雄大な大河の流れに誰もが目を奪われ、車窓に釘付けとなっている事だろう。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 ほどなくアレシア大河を渡りきった列車は、再びスピードを上げて走り始める。


 そして、リンデブルック駅、トゥージス駅に停車したあと、終点のイスパルナはあともう少し。

 黄金色が目にも眩しい収穫間際の穀倉地帯を列車は走り抜けていく。



 やがて、まばらだった人家が密集し始め大都市の郊外という雰囲気になり……遠くにイスパルナの街影も見えてくるのだった。



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