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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 輝く未来へ

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捜索



「誘拐!?レティが!?」


 その報告を聞いたカティアは、驚愕の声を上げた。


 彼女が自室で寛いでいたとき、突然会議室の一つに呼び出され……今しがたその話を聞かされたところである。



「まだ誘拐されたと決まったわけではありません。ですが……騎士団を動員して街の捜索に当ったのですが、未だ見つけることが出来ないのです」


 リュシアンが努めて冷静に言うが、その表情には隠しきれない苦渋がにじみ出ていた。

 妹が行方不明なのだから、それも仕方がない事だろう。



「何か手がかりは?」


 親友たるカティアも、取り乱してもなんの解決にもならないと感情を抑えて冷静に聞く。


「まだ何も……ですが、邸から王城までのルートを中心に聞き込みを行っております。あの娘は目立つから……」


 おそらくは目撃情報があるはず、と彼は考えている。



「でも、何でレティを……って、そう言えば公爵令嬢なんだから、身代金目的とか?」


 今更ながら、レティシアは高位貴族の娘だったことを思い出してカティアは言う。

 しかし。


「それなら何らかの声明や接触があるはずです。しかし、邸にも、私や父のところにも……特に何もありません」


「う〜ん……じゃあ、鉄道関連の事で?モーリス商会の方は?」


 カティアは視線をリュシアンから、会議室にいたもう一人の人物……リディーに向ける。


「エリーシャさんがそちらに向いましたが……今のところ何の連絡も来てません。フィリップ様も学園の方へ確認に向かわれてますが……。それに、鉄道事業関連に関してですが、我々モーリス商会で開発したものは広く公開してますので……誘拐の目的としては考えにくいかと」


 リディーも、あくまでも冷静に言う。

 しかし、彼の両膝に組んだ手が細かく震えていることにカティアは気づいた。



(リディーさん……)


 カティアはリディーの心情を察して、いたたまれない気分になる。

 当然、彼女も親友を想う気持ちは変わらない。

 リュシアンも、この場にいないアンリやアデリーヌ……今、捜索に関わってる多くの者が同じ気持ちのはずだ。



「……大まかな場所さえ分かれば、私の(シギル)の力が使えるんだけど。今は目撃情報を待つしかないか……」


 かつて彼女は、義娘のミーティアが黒神教に誘拐された時にエメリールの(シギル)の力……『魂結(たまむすび)』によって居場所を突き止めたことがある。

 しかし、その効果範囲は限られるため、ある程度は場所を絞り込む必要があるのだ。



 と、カティアのその呟きに答えるかのように、伝令の騎士が会議室に入ってきた。


「失礼します!」


「!何か分かりましたか?」


「はっ!レティシア様が最後に目撃された場所が判明しました!」


「本当!?」


 待ちわびた情報に、カティアたちは思わず椅子から腰を浮かせ色めき立つ。



「8番街の目抜き通りで、貴族家の使用人らしき人物に声をかけられ、その者と一緒に裏路地に入っていった……と」


「もう!知らない人について行っちゃダメでしょ!」


 完全に子供扱いだが、現に攫われてるのだからそう言いたくもなるだろう。



「それと、こんなものが……近くの路地裏に落ちていました。何か関わりがあるのかは分かりませんが」


「これは……メモ書き?アドレアン邸……ユーグ(んち)か。なんだろ?」


「ちょっと見せてもらえますか?」


 カティアから紙片を受け取ったリディーはそれを受け取ると……


「……[明査]」


 リディーが魔法を行使すると、紙片が光りだした。


「それは……魔力反応?」


 それはカティアも知っている魔法で、魔力の痕跡を調べるためのものだ。


「はい。レティは強力な魔導士です。ただ攫われるだけの娘じゃない。だから、きっと魔法で反撃を試みたはず……」


 つまり、その紙片に魔力の痕跡が残っていたということは……


「じゃあ、それが落ちていたところにも同じ痕跡があるなら、何かが分かるかも。……よし!行こう!!」


「……すみません、私は一度モーリス商会に戻ります」


「え?」


 リディーの言葉を、カティアは意外だと感じた。

 彼のレティシアに対する想いを考えれば、すぐにでも現場に向かいたいはず……と、思ったのだ。


 しかし、リディーは凄みを感じるほどの冷静さで続ける。


「この筆跡……見覚えがあります。おそらく、モーリス商会の顧客の中の誰か。書類を洗ってみます」


 その怜悧な眼差しに、英雄姫と呼ばれるカティアでさえも気圧される。


「わ、分かりました。あ、そうだ一応アドレアン邸の方も確認した方がいいかな……」


「今日の会議の議長がアドレアン伯爵だったので……おそらく、急遽会議の場所が変わったとか言って誘い出したのではないでしょうか。念のため確認はした方が良いとは思いますが」


 やはり冷静に、理路整然と推論を述べるリディー。

 カティアは自分の婚約者とは別種の頼もしさを彼に覚えた。



「分かりました。では手分けして捜索にあたりましょう。リュシアンさん!」


「ええ。ここは部下に任せて、私も現場で指揮をとります」


 リュシアンは、もしかしたら妹婿になるかもしれない男の気迫を頼もしく思いながら、自らも捜索に向かうべく部下にこの場を託す。



 そしてそれぞれが、レティシアを見つけ出そうと動き出すのだった。




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