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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 輝く未来へ

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一つの物語の終わり



 今、アクサレナから遠く離れた地ではグラナ帝国との戦いが行われ、カティアたちも黒神教の本拠に向かっていた。

 そんな状況下であっても……直接の戦闘地域ではないイスパル王国においては、住民たちは隠しきれない不安を抱きつつも日常生活を送っていた。


 それはレティシアも同様であり、友人たちが不在であることに寂しさを感じながら、しかし普段通りに学園で授業を受けていた。



 そんなとき、それは起こった。



 最初に気が付いたのは、窓際の席の男子生徒。

 彼は授業を真面目に受けていたのだが……ふと、何となく気になって窓の外の宇宙を見上げた。


「……!な、何だ……あれ……?」


「どうした?授業に集中しろ。……外に何かあるのか?」


 呆然とした男子生徒の呟きに教師は一度は注意するが、あまりにも不自然な生徒の様子に自身も外を確認しようとする。



「……な、なんだ!?あれは!?」


 やはり驚愕の声を上げる教師に、今度は生徒たちも一斉に窓際に集まってきた。


 レティシアも彼らと同じように窓の外を見上げると……



「あれは……島……?」


 見上げた空に見えたもの。

 それは、空に浮かぶ島のようなものだった。

 その空飛ぶ島の周りの景色は歪んで見える。


 他のクラスでも気がついた者がいたらしく、校内はにわかに騒がしくなった。



 そして誰もが空を見上げたその時。

 突然何者かの声が響き渡る。



『人間たち諸君。今日はめでたき日。邪神が完全なる復活を果たし、人類すべてが変革を果たし、世界が変革を果たす……記念すべき日だ』



「邪神!?黒神教の……復活したの!?じゃあ、カティアたちは……?」


 そのレティシアの疑問に答えるように、島の上の光景らしきものが空に映し出される。


 そこには銀髪金眼の青年と対峙するカティアたちの姿が。




『まず手始めに……人間たちの勇者であるこの者たちを贄と捧げ、我の最初の眷属としてやろうではないか』


 その邪神の宣言によって、カティアたちの最後の戦いが始まった。




「カティアっ!!!負けないで!!!」


 レティシアは天に届けと大声を張り上げる。


 いや、彼女だけでなく、学園中、王都中……世界中の者たちが、勇者たちに声援を届けようする。



 人々の希望を託された勇者たちと、悠久の時を経て現世に現れた邪神の戦いは苛烈を極める。


 カティアたちの力は神々の加護の力もあって遥かな高みへと至っていたが……邪神の力は想像を絶するものだった。


 あまりにも強大な力を持つ邪神の前に、カティアたちの力が尽きるのは時間の問題……そう思われたとき。

 対グラナ戦線の各地に降臨し、カルヴァードの勝利に力を尽くした神々がカティアたちのもとに集結する。


 そして神々は自らの力を全てカティアに託し……

 十二神すべての(シギル)をその身に宿した彼女は邪神に最後の戦いを挑む。



 そして……





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 いつの間にか茜に染まりつつあった空に、激しい光が何度も閃き、轟音が鳴り響く。


 黒神教に絡んだ数々の事件や、異界の魂が原因となった強力な魔物の出没……これらのことから、世界中の人々に漠然と広がっていた不安。

 それはグラナ帝国の侵攻という形で現実のものとなり、そして今……人知を超えた邪神の復活によって、世界そのものの危機が迫っている事が誰の目にも突きつけられていた。


 しかし、人々は今……希望の光を目の当たりにしている。

 イスパルの英雄姫、その名も轟く星光の歌姫ディーヴァ・アストライアが神々から力を授かり、世界中の人々の想いをも力に変えて邪神と戦っているのだ。


 遥か天空の戦いを見上げる全ての人が、カティアの勝利を願って祈りを捧げる。

 彼女が世界の英雄となるその瞬間を待ちわびていた。


 やがて夕日に染まった茜色の空に、一足早く夜空が訪れる。

 満天の星空が広がり、その煌めきが流星となって、ただ一点に降り注いだ。


 その余りにも美しく壮大な光景に、人々は英雄の勝利を確信するのだった。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「カティア……勝った……んだよね?」


 夢でも見ていたのか……

 あまりにも壮大過ぎる光景に、レティシアはそれが現実のことだったのか、自信が持てなかった。



 しかし。



 崩壊を始めた天空の島から黄金の竜が飛び立つのを見たとき、彼女はカティアと仲間たちの勝利を確信する。

 黄金の竜は夕日を浴びて輝きながら、ぐんぐんと近づいてきて王城に向かっていくのが見えた。



 そしてレティシアはいても立ってもいられずに、学園を抜け出し、王城に向かって走り始めた。

 親友たちの凱旋を、一番で迎えるために。






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「カティアっ!!!」


「レティ!!勝ったよ!!!私達が!!!」


 王城の中庭に降り立つ黄金の竜から跳び下りたカティアは、ちょうど駆けつけたレティシアに抱きついた。


「うわっ!!?」


 あまりの勢いにレティシアは受け止めきれず、二人抱き合ったまま芝生に転がってしまう。

 二人は顔を見合わせると笑顔を弾けさせた。


 そして、他の仲間たちも二人のもとに集まる。

 さらに王城中から……街中から多くの人々が集まってきて、歓喜の輪がどこまでも広がっていくのだった。



 





 転生歌姫が主役の物語は、こうして幕をおろす。

 しかし、レティシアの物語はまだ続く。


 新たな時代の幕開けを告げるために、彼女も最後まで力を尽くすことだろう。



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