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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 輝く未来へ

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起工式(前編)



 新年を迎え、学園の冬休みも明けてから数日が経ったある日のこと。



 王都西大門を出て外壁に沿って北に向かうと、広大な空き地が現れる。

 アクサレナは外壁の外側にも多くの民家などが建っており、もともとはこの辺りもそうだったのだが、ここにイスパル邦有鉄道のアクサレナ駅を建設するため、国が土地を買い上げて更地にしたのである。



 レティシアはエリーシャを伴い、早朝からその場所を訪れていた。



「いや〜、さっぱり何も無くなっちゃったねぇ……でも、これだけの土地があれば王都側のターミナルとして立派な駅が建てられるね」


 空き地を見渡しながら、ここに現れる王都の玄関口の姿を思い浮かべるレティシア。

 そして視線を巡らせれば、すでに起工式に先駆けて工事準備が既に始まっている様子。

 地面は平らに(なら)され、所々に建築資材の山が出来ていた。



「予定通り年明けから着工してるみたいです。楽しみですね、会長」


「うん!……線路が伸びてくるのはあの辺かな?最後の難所、アクサレナ丘陵を登りきって……あのあたりに駅舎が出来るはずだから、ホームはあそこら辺で……」


 あちらこちらを指差しながら、彼女は楽しそうに言う。

 もう彼女の目には、列車が行き交う様子が見えているのかもしれない。

 彼女が嬉しそうに未来の駅の姿を語る様子を見て、エリーシャも嬉しそうに微笑む。



 そして、暫く想像を楽しんだあと。


「あの建物だね。それじゃ、行こうか」


「はい」


 見渡す限りの空き地だが、ポツン……と一つだけ建物が建っているのが遠目に見える。

 二階建てのレンガ造りで、小さいながらも立派なものだ。

 彼女たちは、そこにに向かって歩き始めた。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「来たか、レティ」


「お先にお邪魔してるよ」


「リディーお疲れ〜。フィリップさんも来てたんだ。二人とも早いね〜」


 レティシアたちが建物の中に入ると、中にいた先客……リディーとフィリップが彼女を迎えた。


 二人はテーブルを囲んで何やら図面を覗き込みながら話をしていたようだ。



「あ、それ……アクサレナ駅の設計図?」


「ああ。いまフィリップに駅建設工事の概要を説明していたところだ」


「これも将来の参考になるから。やっぱり王都の代表駅ともなれば、国の威信がかかってるし……アクサレナにも負けないものを造りたいね」


 フィリップは学園の臨時教師を務める傍らで、本来の目的である鉄道事業関係のノウハウ吸収にも精力的に動いている。


 そして、もう一つの目的も……

 学園の教師であれば、学園生となったレティシアと接する機会も多くなる。

 それも彼が教師を引き受けた理由の一つだ。

 実際に学園内では、授業やクラブ活動などを通じて彼女と会話することも多い。

 もちろん他の生徒たちの目があるので、積極的なアプローチなどはできないのだが……以前にも増して親しくなったのは間違いないだろう。


 そして彼はモーリス商会にも頻繁に顔を見せるようになったので、リディーとも気安い関係になっている。


 レティシアは、二人の間に身分を超えた友情が生まれたと思って純粋に喜んでいるが……

 その実、水面下では自分を巡ってライバル心を燃やしてるなどとは思ってもみない事だろう。



「まあ、俺もレティも建築は専門外なんで、詳しい話は建築士や工事責任者の方たちに聞いたほうがいいと思う」


「うん、もちろんそうするつもりだけど……専門外と言いつつ要点は押さえてるから分かりやすかったよ。流石だよね」


「それなら良かった。今日は他にも各方面の専門家が何人か来るから……フィリップにはいい機会かもしれない」






 さて、彼らがいま集まっている建物だが……

 元々はある商会の所有物で、本来であれば整地の際に取り壊されるはずだった。

 しかし、まだ建てられてからそれほど経ってなかったことから、工事事務所として有効活用することになったのである。

 そして開業時にはそのまま駅の関連施設の一つとなる事も決まっていた。


 そして今日は、そのアクサレナ駅の起工式が行われる。

 今はまだ朝早いので静かなものだが、これから多くの人々が訪れ賑わうことになるだろう。


 人々はアクサレナ駅のみならず、鉄道建設工事が無事に終わることを祈願し、開業の日を待ち焦がれるに違いない。

 レティシアの夢はモーリス商会の仲間たちの夢となり、国を動かし……今となっては多くの人々の夢となったのだから。



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