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【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 輝く未来へ

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祭りの時期



 モーリス商会王都本店の会議室にて。


 会長(レティシア)副会長(リディー)を筆頭に、商会の幹部たちによる定例会議が行われていた。

 その議題は多岐にわたる。


 収支報告、商品開発、鉄道関連の進捗状況……これらは特に大きな問題もなく、順調に会議は進む。

 そして最後に残った議題は……普段には無いものだった。




「さて、そろそろ『武神祭』の時期なんだけど……これまでは特にモーリス商会として何かやることはなかったんだけど、そろそろ鉄道開業も見えてきたことだし、アピールのために何かやりたいと思うんだ」


 会長のその言葉に、一同は同意して頷く。


 彼女の言う『武神祭』とは、アクサレナで大々的に行われる大きな祭りの事である。

 イスパル王国の守護神であるディザールに感謝を捧げ、さらなる発展と安寧を願うものだ。


 祭りの期間は王都の各所で、個人団体を問わず様々な催しが行われ、多くの観光客で賑わう。


 特に大きな目玉となる催しものは、『武神杯』という武闘大会だ。

 国内外から腕に覚えのある猛者が集結し、白熱した戦いが繰り広げられる。

 まさに武の神に奉納するのに相応しいイベントだろう。



「何かやるとして……場所はモーリス商会内ですか?」


 幹部の一人がそんな質問を挙げる。


「う〜ん……それだとちょっと手狭だよね。まあ、何をやるのかにもよるんだけどさ。店舗前の広場を使わせてもらえないかな?」


「許可をもらえば大丈夫だ。ただ、急がないと取り合いになるぞ」


 レティシアの疑問にはリディーが答える。

 祭りともなれば当然、大きな通りや広場には多くの露店がひしめき合うだろう。

 多くの人が集まるような人気の場所は争奪戦になること必至である。


 だが、その言葉を聞いた若手幹部の一人が、得意げな顔で言う。


「ふふふ、それなら……今回の議題になると聞いて、すでに仮押さえしてます!」


「「「おぉ〜!」」」


「やるじゃない!……そんじゃあ、そこを使ってなにしよっか?」


 順番が逆のような気もするが、案外どこも実態はそんなものなのかもしれない……






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 その夜、モーリス公爵家王都邸にて。

 アンリがその話を始めたのは、モーリス家一同揃って団らんのひとときを過ごしていたときのことだ。



「お披露目の夜会?カティアの?」


「ああ。この間の劇場でのお披露目はサプライズ的なイベントだったのだけど、今度は国内の有力諸侯や国外からも来賓を招いて大々的にやる……ってことだね」


「そっか〜……やっばり王女様ともなると、いろいろ大変だね〜」


 レティシアの言葉にアンリは苦笑するが、最近まで平民だった娘がそのような場に出るのは、苦労も多いのは確かだろう……とも思った。



「まあ、カティア様はもともと礼儀作法の基本は出来ているらしく、教師役の者もそれほど苦労はしてないと聞いてるけどね」


「旅芸人時代から貴族家に招待されることもあったから……ということらしいです。本邸に寄って頂いたときも、テーブルマナーなどは違和感ありませんでしたしね」


 アンリの言葉に続けてリュシアンも頷きながら言う。

 彼はカティアが王都に向う際に同行していたので、彼女の人となり……そのカリスマ性や博識ぶりにも触れ、既に王族としての資質を認めていた。



(そのへんは前世の記憶とかも役に立ってるのかもね)


 カティアの前世は別に上流階級だったというわけではないが、より文化的文明的に進んだ世界で過ごした感覚が影響しているというのはあるのかもしれない。



「じゃあ、私も出席するって事でいいんだよね?」


「もちろん。君がいれば、カティア様も心強いだろうからね」


「レティ……今回、僕はルシェーラのエスコートをするから、君は父様たちと一緒に入場だよ」


「あ、そっか……もしかして、ルシェーラちゃんは今回が社交界デビューになるのかな?」


「そうなりますね」


 ルシェーラが出席するのであれば、そのエスコート役は婚約者であるリュシアンが務めるのは当然だろう。

 デビュタントということであれば尚更だ。



「ルシェーラちゃんのデビュー、楽しみよね。あとは結婚をいつにするかしらね?」


「……母様、まだ彼女は成人してませんし、学園もあるから……まだ先の話ですよ」


「何を言ってるの。モーリス家の次期当主ともなれば、しっかり計画を……」



 兄と母の会話を聞きながら、レティシアは複雑な気分になる。


(……たぶん気を使って話題にしないでくれてるんだと思うけど。みんな私のことも気になってるよね……)


 問題を先送りにしてることを、彼女は申し訳なく思う。


 将来、誰かにエスコートされることになるのだろうか……

 その姿を彼女は想像しようとするが……それは結局、上手くはいかなかった。



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