表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜  作者: O.T.I
レティシア15歳 時代の変革者たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/190

出迎え


「……レティ、そんな格好で……お客様の前ですよ」


 作業着姿のレティシアを目にして、そんな苦言を言うリュシアン。

 しかしその目は穏やかに笑っていて、久しぶりに妹に会えたうれしさを隠しきれない様子だった。



「へっ?……ああ!?ご、ごめんなさい…久しぶりに兄さんに会えると思ったら嬉しくてつい…」


 彼女は他の人々を認識してなかったわけではない。

 実際、リュシアンに声をかけられるまで……来客の一人である美しい少女に目を奪われていたのだから。

 そして少女もレティシアの方をじっと見ていた。

 まるでお互いに惹きつけられてるかのように。


 今も……レティシアは兄に向き合って一旦は応えたものの、横目でチラチラと少女を見ている。


 それは、少女の並外れた美貌によるものだけでなく、内面からにじみ出る何か(・・)がそうさせていた。

 他のものであれば、それは王族の『カリスマ』だと感じたことだろう。

 しかし彼女は……それとは別のものを感じ取っていた。

 魂が震えるような何か(・・)を……




 来客は彼女だけでなく、彼女の傍らには他にも何人かいる。

 小さな女の子、整った顔立ちの青年、厳つい風貌の中年男性、そしてレティシアの友人のルシェーラだ。


 そして彼らを迎えているのは、アンリとアデリーヌの公爵夫妻と、公爵家の使用人一同だった。




「……全く、しょうがないですね。皆さん、お見苦しいところを見せて申し訳ありません。彼女が、私の妹のレティシアです」


 と、リュシアンが彼女を来客たちに紹介した。

 その言葉から察するに、既に道中でレティシアの話をしていた事がうかがえる。



「こ、こんな格好で申し訳ありません。私はリュシアンの妹で、レティシアと申します。いつも兄がお世話になっております」


 そしてレティシアも居住まいを正して、丁寧に挨拶をした。

 今更ながら、あちこち汚れが付いている作業着姿のままであることを思い出し、顔を赤らめながら。



 そして、レティシアが目を離せずにいた少女が挨拶を返す。


「はじめましてレティシアさん。私はカティアと申します。ダードレイ一座で歌姫をやっています。よろしくお願いしますね。あ、こっちの子は……私の『養子』で、ミーティアって言います」


「ミーティアです!ママの娘です!」


 レティシアの予想通り、彼女こそがイスパル王国の王女……カティアだった。

 そして一緒に紹介されたミーティアは……カティアと良く似た女の子だった。

 『養女』ということだが、どう見ても血の繋がりがあるようにしか見えない。

 だが、何らかの事情があるのだろう……と、モーリス家の面々は特にそれには触れなかった。



「ふふ、ちゃんと挨拶できて良い子だね。……そうですか、あなたがカティアさんなんですね、こちらこそよろしくお願いします」


 レティシアが頭を撫でると、ミーティアは嬉しそうに目を細めた。


(……かわいい)



 そして、カティア、ミーティアと挨拶を交わしたあと、他の来客たちも紹介される。


 青年の名はカイト。

 どうやらカティアとは恋人同士のようだ。

 落ち着いた物腰と所作から、思慮深い雰囲気が感じられた。


 中年男性はダードレイ。

 旅芸人一座の座長であり、カティアの育ての親らしい。

 筋骨隆々で、芸人というよりは歴戦の戦士ように見える。

 実際に彼は、Aランク冒険者でもあるということだった。




 そして……


「レティシアさん、お久しぶりですわ」


「あ、ルシェーラちゃん!久しぶり!学園楽しみだね」


 レティシアが5歳の頃からの友人であるルシェーラだ。

 現在13歳となった彼女だが、かなり大人びた美少女へと成長していた。

 レティシアと並ぶと、彼女の方が年上に見えるほどだ。


 彼女たちは、時おりブレーゼン侯爵夫妻とともにルシェーラが公爵家に立ち寄った際に友人として交流していたし、これまで手紙のやり取りも頻繁に行っていた。



「リュシアン様から、レティシアさんも学園に入学すると聞いて嬉しかったですわ」


「うんうん!私も、ルシェーラちゃんが一緒だって聞いたから学園に行く気になったんだよ。本当はね……商会もあるし、大事な事業もあるし、あまり乗り気じゃなかったんだ。だけど、父さんが人脈を得るためにも学園は行ったほうがいって言うから……」


「ふふ……例えアクサレナの学園でも、レティシアさんくらいになると退屈かもしれませんものね」


 彼女は、レティシアがモーリス商会の会長として手腕を発揮していることを知っている。

 事業の詳しい内容までは知らなかったが、幼い頃から『神童』と言われるほど聡明だったことも知っていた。

 だから、今さら学園で学ぶことはそれほど多くはないのでは……と思っている。

 とは言っても、一緒に学園生活が送れるのは本当に嬉しいとも思っており、それはレティシアも同様だ。




「そう言えばその格好、何かの作業をされていたみたいですが……」


「あ、そうなんだよ、私の夢の第一歩。それがもう少しで実現しそうなんだ。……そうだ、皆さん少し見ていきません?きっと驚くと思いますよ」


 ルシェーラに話題を振られ、良い機会だから……と、彼女はそんな提案をした。



「レティ、お客様たちは旅の疲れがあるんですよ。それはあとで……」


「あ!私、凄い気になりますっ!……ごめんなさい、リュシアンさん、少しだけお時間頂けませんか?」


「え?ま、まあ、カティアさんがそう仰るなら……」


 リュシアンが来客たちの旅の疲れを慮り、レティシアを窘めようとする。

 しかし、カティアはとても乗り気の様子。

 当の彼女がそう言うのであれば……と、リュシアンも戸惑いながら了承した。



「カティア?何か気になるのか?」


 不自然なくらいに興味を示したカティアに、カイトが問う。 


「だって、『神童』って言われれる人が『夢』って言うほどのものだよ?カイトもそれが何なのか気にならない?」


「まあ、確かに……」


 彼は、理由はそれだけではないように感じたが……カティアの言うことも尤もだと思い、取りあえずは納得した。



 そして、彼らは公爵家の裏手にある車両基地へと向かうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ