表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

地元の夏祭りで、昔から変わらない初恋の人に出会った。

作者: てけと

「よっ!久しぶりだな久川!中学卒業以来か?」


そう声をかけてきたのは黒髪の短いくせっ毛をワックスで少し遊ばせた髪型の男性。右手には綿あめとりんご飴を指で挟んで持ち、左手には袋に入ったたこ焼きと焼きそばを持ち、頭には昆虫ヒーローの仮面を斜めに被っていた。


「・・・久しぶりだね健人」


小学生の頃から変わらない無邪気な笑顔に少しドキリとしてしまう。

お互い20代半ばという大人になっているにもかかわらず、彼はあのころと何も変わらないように見えた。


「ママ・・・だぁれこの人?」


身を隠すように私の足にしがみつく最愛の娘。


「ん〜昔の知り合いかな?」

「ははっ!言い得て妙だな。確かに友達という感じじゃないな!」


彼はスっとしゃがむ。娘と目線を合わしてニカッと笑う。


「俺は水無月健人。ママとは学生時代、9年間同じ学校に通ってた仲だ。怖い人じゃないぞー」


娘は彼を拒絶するように私の後ろに隠れ、ジーっと私の顔を見る。


「大丈夫。彼は怖い人じゃないから・・・」


 私がそう言うと娘はひょこっと顔を半分だけ出して彼を見る。


「名前はなんて言うんだ?」

「・・・めい」

「可愛らしいいい名前だな!お兄さんと仲良くするといい事があるんだぞー。なにせ俺は・・・幸せお兄さんと呼ばれているからな」


 目をぱちぱちとさせて彼を見る娘。


「しあわせおじさん?」

「おじっ!?・・・お兄さんな?ほら小玉リンゴ飴だぞー。割とおいしいんだぞー」


 人差し指と薬指に挟んでいたリンゴ飴を娘に差し出す彼。娘はそっと手を差し出してそれを受け取る。


「ふはは!隙を見せたなっ!」

「キャッ!!」


 娘の体をスッと抱き上げると、肩車をする彼。娘はいきなり高いところに乗せられ彼の髪の毛をギュッと掴んでいた。


「今日はお兄さんがめいちゃんの願いを叶えてしんぜよ~」

「ほんと!?」

「おう!魔法少女の仮面でも、綿あめでもくじ引きでもなんでもさせてあげるぞー!」

「わーい!!」

「ちょっと健人!?」

「まぁまぁ。なんか久川暗い顔してるしさ。せっかくの祭りだ楽しまなきゃ損だろ?たこ焼き食う?」

「もう・・・ほんと昔と変わんないね・・・」


 彼が持っていた袋を預かる。彼の頭の上でリンゴ飴をペロペロと舐める娘を微笑ましく見ながら彼の隣を歩く。


「おじちゃん!あのおおきなくまのぬいぐるみ!!」

「おじ!?・・・射的の景品か!!よーし()()()()に不可能がないことをメイちゃんに教えてあげよう!!」


 娘が欲しがったのは、射的の最上段に置かれている100㎝ほどの大きな茶色いクマのぬいぐるみ。

 到底取れるとは思えない。ああいうのは元々取れない様にできている。


 しかし彼は自信満々に射的屋の前に立つ。


「二丁借りるぜ?」とニヒルに笑う彼。

「二回なら1200円ね」と興味なさそうに新聞を読みながら応対する店主。


 彼はテーブルの上にお札一枚と200円を置く。


「釣りはいらねぇ。さてめいちゃん。めいちゃんの願いを込めてこの銃に弾を込めるんだ!」


 肩車している娘にコルクを渡し、銃口を頭の上に持ってくる彼。


「むー!くまさんがたおれますよーに!!」


 ぎゅうぎゅうと力を込めて弾を込める娘にほっこりしつつ、テーブルの上に置かれたお金を見る。


 見間違いではなく、置かれているのはどうみても一万円札と200円。それを何食わぬ顔で回収してこっそりと店の裏に回っていく亭主。


「出来たかーめいちゃん?」

「うん!」

「うっし!!」


 彼は二丁の銃を構え・・・何の躊躇もなく撃つ。

 二発の球はクマのぬいぐるみにパスンと力なく命中し・・・不自然にぐらりと揺れて棚から落ちていった。


「わああ!すごいすごい!」

「ふっ。ざっとこんなもんよ」


 銃口に息を吹きかけきざに笑う彼。店主からぬいぐるみを受け取ると、彼はメイに手渡す。


「ありがとうおじさん!!」

「おじ・・・お・・じ・・・」

「ぷっ・・・くく・・」


 おじさんと言われるたびに頬をぴくぴくさせる彼をみて、ついつい笑いが込み上げる。


「やっと笑ったか久川・・・俺に変わらないと言ったけど・・・お前は綺麗になったよな」

「ふぇ!?」

「小さい頃は可愛いと思ってたけどな~さて!次はどこに行こうかめいちゃん!」

「わたーめ!」

「まかせろー!」


 どうやら完全に懐いてしまった娘。嬉しそうに彼の頭をポンポンと叩いている。


「いまさらそんなこと言われても・・・ずるいよ・・・」


 無邪気に笑う彼を見る。その笑顔を見て胸が高鳴る。


 なにせ彼は・・・私の初恋の人だったのだから・・・。



その後はくじ引きで店主さんを脅して目当ての物を手に入れたり、金魚すくいでお椀いっぱい金魚を掬ったり、3人で型抜きをしたり、ひと串2000円の牛串を頬張ったりとお祭り会場の端から端まで遊び尽くした。


楽しい。そんなことを感じたのは何年ぶりだろうか。娘の育児と仕事に追われ、精神的に参ってしまっていた事なんてはるか昔のことのように感じられた。


それほどに、今日は楽しかった。まるで子供の頃に戻ったかのような・・・。


「なぁ久川」

「どうしたの健人?」


娘ははしゃぎ疲れたのか、彼の腕の中で静かに寝息を立てている。


「めいちゃんってやっぱりお前と竹下の子なの?」

「は?」


竹下尚也。健人と同じく小中を共にした同級生だ。いつもニコニコしていて優しそうな顔をしているが、その実女癖が悪いことで有名だった子だ。

特に接点はない竹下君の事が、何故ここで出てくるのか。


「いや。普通に違うけど?」

「あぁ〜まぁ小学生で結ばれて結婚まで行くわけないよな」

「はい?そもそも竹下君とそんなに仲良くない・・・と言うかそもそもあんまり係わりなかったけど?」

「え?」

「え?」


お互い見つめあって首を傾げる。


「だって久川、バレンタインデーに竹下にだけチョコ送ってたじゃん」

「あれは竹下君が欲しいって強請るからコンビニで買って渡したの。ちゃんとお金も貰ったし・・・」

「好きだったから渡したんじゃ?」

「んーん。そもそもあれを渡した日がバレンタインだったって言うのを後から知ったくらいだし」

「マジかよ・・・お前からチョコを貰った竹下がなんて言ってたか知らないのか?」

「なんて言ってたの?」


「『バレンタインに夏海に告られたわ!俺たち付き合うことになったから夏海に手を出すなよ!!』って男子連中の前で叫んでたぞ」

「ええええぇぇーー!?」


あの時竹下君がやけに絡んできたのも、周りの女の子に持て囃されていたのもそういうことが原因だったわけ!?


「久川は人気あったからなぁ〜男子の中でも久川のことが好きなやつは多かった」

「へ、へぇーそうなんだ・・・も・・・もしかして健人も?なんちゃって!」


「ん?俺も久川が好きだったなぁ〜今だから言うけど、よく考えてみると、俺の初恋相手って久川だったと思うわ」

「ふぇぇ・・・」


何それ何それ!?実は両思いだったってこと!?なんであの頃の私はさっさと健人に告らなかったの!?


「まぁでも、こんな可愛い娘さんといい家庭築いてそうで良かった。そんな久川と最後のこの祭りを一緒に回れてよかったよ」

「いい家庭・・・か・・・」

「旦那さんはどんな人なんだ?久川は美人だし、選びたい放題だっただろ?こうダンディでイケメンで、優しくてお金も稼ぐ理想の旦那さんなんだろうな!」


「いないよ」

「は?」


健人の顔が固まる。そして申し訳なさそうな顔をして私の目を見る。


「あ・・・あぁ!別に死んだとか離婚したとかじゃないの!」

「はぁ?めいちゃんはお前の娘じゃないとかそういうオチ?」

「めいは正真正銘私がお腹を痛めて産んだ子だよ・・・ただ・・・その相手が分からないだけ。聞いてくれる健人?」


常におちゃらけた雰囲気のある健人が、真剣な眼差しで私を見る。


「大学に入ってさ、サークルに入ったんだよ、テニスサークルに。私がずっとテニスしてたことは知ってるよね?その歓迎会でどうやら一服盛られたみたいでさ〜気がついた時は妊娠してたの。1発で孕まされるとかどんだけって感じだよね。堕ろすことも考えたんだけど・・・産んでよかったと思ってるよ?こんなに可愛い娘なんだもん・・・後悔なんてあるはずないよね」


めいの頭を撫でながらそう言う。私の中では終わっている話だ。

もちろんうちの親が大激怒し、その大学のテニスサークルの男性全てが刑務所行き。マスコミにも大々的に報道され、大学の築き上げてきた信用は地に落ちるまでとなった。


彼はグッと何か言いたいことを飲み込み、へらっと笑う・・・。


「わかる!分かるぞー久川!俺も子供が好きだからさ〜嫁さんはいらないけど子供は欲しいんだよな〜!俺も女に生まれていればっ!」

「はははっ!なによそれ!酷くない?」

「めいちゃんを俺にくれない?」

「だ〜め!羨ましいか〜!」

「めっちゃ羨ましい!!お義母さん!娘さんを俺にください!!」

「それ意味違うじゃない!あはははは!」


きっと彼は気を使ってくれているのだろう。その事を嬉しく思いつつ・・・馬鹿な会話をしながら歩く。


楽しい時間はあっという間にすぎ、いつの間にか私は自分の家の前にたどり着いていた。


「ほーらめいちゃん?お家ついたよ〜」

「んー?」


眠い目をこすりながら彼の腕の中で目を覚ます娘。


「お布団でおねんねしようね?おじちゃんにさようならして?」

「んーパパ・・・」


娘はギュッと彼のシャツを掴み彼の目を見る。


「またあえるよねパパ」

「パパじゃないけど・・・めいちゃんがいい子にしてたらまた会えるかもな」


彼はそう言って微笑む。そして娘を私に渡す。


「めい・・・いい子にしてるから・・・また会いに来てね・・・パパ・・・」


それだけ言うと娘は私の腕の中で眠った。


「それじゃあ俺は帰るわ。今日は楽しかった。ありがとうな久川」

「ねぇ・・・最後のこの祭りに来たって、どういう事?」


彼は言った。最後のこの祭りを一緒に回れてよかったと・・・。


「割と人の話聞いてんのな」

「教えてよ・・・」


彼は気まずそうに口を開く。


「今日あの祭りに来た理由ってさ・・・童心に帰って遊んで・・・そんで決別・・・気持に整理をつけに来たんだよ」

「どういう事?」

「久川は俺の事を変わらないって言ったけど、俺は変わったよ。人生ってつまんねぇよな〜いい事なんて何にもなくてさ。毎日心をすり減らして・・・辛い目にあってさ・・・誰も助けてくれないどころか、嬉々として蹴落とそうとしやがる。あの頃は何しても楽しかったのに・・・今はその逆だよ」


具体的なことは何も言ってくれない。でも彼の目が語っていた。


「・・・生きてればきっといいことあるよ」


自分を殺そうとしている彼にそんな陳腐な言葉しか思い浮かばない。


「いい事はあったさ・・・久川に会えてよかった」

「私も・・・健人に会えて嬉しかった。だって健人は私のーーー」

「めいちゃんと幸せに生きろよな」


彼は拒絶するように私の言葉を切った。

きっともう私の言葉は彼には届かないのだろう。

背を向ける彼に力なく手を伸ばす。


(めい・・・いい子にしてるから・・・また会いに来てね・・・パパ・・・)


ふと脳裏に浮かんだ娘の言葉。


「待って!!」


彼は背を向けたまま足を止める。


「ずっと!ずっと健人のことが好きだったの!男の人に告白されても健人のことが頭に過って誰とも付き合えなかった!!」


10年以上前に言いたかったこと・・・ここで言わなければまた後悔するから・・・。


「責任取ってよ!健人のせいで私は未だに恋愛した事ないんだから!!だから・・・私と・・・」


「・・・久川って運命って信じる?」

「え?」

「もしさ、俺と久川が結ばれるのが運命ならさ・・・もう一度会えると思うんだよ」


涙で目の前が朧気にしか見えない。しかし彼の声はしっかりと聞こえている。


「1年以内にもし俺と久川が出逢えたなら・・・その時は俺も覚悟を決めるよ・・・」


それだけを言い残し、彼は帰っていった。


「運命?馬鹿じゃないの・・・そんなのある訳・・・ないよ・・」


運命なんて不確かなものに、私はこの気持ちを委ねたくはなかった。





翌日から小学生の頃の友達と連絡を取ることにした。

私はずっと地元に住んでいるから、割と昔なじみの友達とよく連絡を取り合う。


「なっつん?なっつんから私に連絡してくるなんて珍しいじゃん?」

「ごめんね〜忙しいのに。ちょっと聞きたい事があってさ。あっこって確か坂上くんと連絡取れるよね?」

「まぁ連絡先は知ってるけど・・・」


あっこ・・・敦子は小学生時代からの親友だ。そして度々同窓会を開き、毎回幹事をやっている。同窓会メンバーの連絡先は全員知っているはずだった。

坂上くんは健人と同じ高校に行った唯一の同中の人だ。ならば健人の就職先とか連絡先を知っているかもしれない。


「健人の連絡先とか住所とかを知りたいんだ。坂上くんなら何か知ってると思って・・・」

「健人って水無月健人?中学卒業からあまりに連絡が取れないから行方不明扱いされてた健人?」

「そうそう」

「へぇー!なっつんが健人の居場所を知りたいとか・・・殺しに行くとかじゃないよね?」

「へ?・・・いやいや!なんでそんな物騒な発想になるの!?」


「だってなっつん健人の事死ぬほど嫌ってたじゃん?」


「は?」

「だから女子の間ではなっつんと健人を近づけさせない様にしてたし、男子は男子で直接健人に言ったらしいよ?『久川は健人が大嫌いだからあんまり関わってやるなよ』って。健人はわかったって言ってなるべく避けてたみたいだね〜」


衝撃の事実に頭が真っ白になる。私が健人を嫌ってた?誰がそんなことを・・・。


「ねぇ。それって誰から・・・」

「あっ!坂上くんから返信きたよ〜『連絡先は知らねぇ。高校卒業後大手企業に就職したはず。全国に支部があるけど、どこに入社するか分からないって本人が言ってたぞー』だそうだよ」

「そっか・・・ありがとうあっこ」

「健人かぁ〜懐かしいね。元気に・・・してそうだなぁあいつは。もしなっつんが探してて会えたら連絡先くらい聞いといてね!同窓会呼びたいし!早まっちゃダメだよ!!」

「だから何もしないって!あと・・・私健人のこと嫌ってなんかなかったよ。寧ろ初恋相手だからね」

「はい!?」

「じゃあまた連絡するね」

「ちょいまち!!その話詳しくーー」


プチッと電話を切る。結局収穫はなかった。


あまりやりたくはなかったけど・・・次の休みに健人の実家に行ってみようかな・・・。

 





私は実家暮らしだ。娘の面倒は両親に任せていることが多い。芽衣(めい)を産んだ頃は複雑そうな感じで接していた両親だが、今では孫の魅力にメロメロになっている。

そして今日はめいの世話を両親に任せ、健人の実家へと足を運んでいる。

健人の実家は私の家から徒歩10分の場所にあるマンション。集団登校の際の集合場所がここだったので健人の実家のマンションだけはわかる。

あとは1階のエントランスに貼られている表札を見れば何号室かもすぐに特定出来た。


若干の緊張と躊躇いがあったが、ここまで来て後に引ける訳もなく、恐る恐る呼び鈴を鳴らす。


「はい?どちら様で?」

「健人さんの昔の・・・友達です。健人さんに話したいことがあってきました」


ガチャリっとインターホンから音がするとすぐにドアが開かれる。


「健人は10年ほど前に出ていったけど・・・もしかしてパン屋さんの娘さん?」

「はい。久川夏海です」

「あらあら懐かしいわね〜こんなに綺麗になって!昔は健人と夏海ちゃんが結婚する夢まで見たんだから〜こんなに綺麗ならもう結婚してるわよね〜健人ったらまだ独身でね〜彼女は出来るみたいなんだけど続いたことがなくって〜・・・」


すごい勢いで話し出す健人のママ。こういう時はどうすれば・・・。


「誰?」


そう隣から顔立ちが健人に似ている人が声を上げる。


「あら透。お帰りなさい」

「ただいま。で?誰この人」

「あそこのパン屋さんの娘さんで健人の同級生の久川夏海さんよ?」

「あぁ。あの兄ちゃんを影でイジメてた根暗女か。残念ながら兄ちゃんは行方不明だよ。イジメで優越感に浸りたいなら違う人にしなよ」


え?私が健人をイジメてた・・・?突然の訳の分からない情報に混乱して頭が真っ白になる。


「こら透!夏海ちゃんがそんなことするはずないでしょ」

「母さんは何も知らないからね。当人の兄ちゃんさえイジメだと認識してなかったっぽいし・・・校舎裏で複数人に袋叩きにされるのがイジメじゃないならただの暴行罪かな?」

「わ・・・私そんなことしてない!!」

「でもあんたが指示したんだろ?夏海に頼まれてとか何とかリーダーっぽいやつが言ってたし。兄ちゃんが気にしてなかったから俺も気にしてなかったけど・・・兄ちゃん次第ではあんた今頃前科者だよ」

「そんな・・・一体誰が・・・」


私は何も知らずにのうのうと学生時代を送っていたの?その癖健人が初恋の人とか厚かましいことを?


「俺と妹は何があっても兄ちゃんの味方だよ。兄ちゃんの敵は俺たち兄妹の敵でもある。妹が帰ってくる前にここから去った方がいいよ。あいつは兄ちゃんの事となると・・・」


「透兄ちゃん?だァれこの人?」


透と呼ばれる健人の弟さんの後ろに立っているのは健人とはあまりにていない女性。学生服を着ていることからまだ学生だとわかる。よく見ると健人のママと顔立ちが似ていて可愛らしい印象がある。


「お・・・おう!おかえり美奈子!この人は俺の学生時代の部活の先輩だよ。ってわけだからちょっと近くの喫茶店で話してくるわ!」

「そうなんだ~行ってらっしゃい透兄ちゃん」

「ほら!行くぞ」

「あ・・・うん」


「透兄ちゃん浮気はだめだからねー!」

「するかボケ!!」


 そんな兄妹のやり取りを聞きつつ、私は健人の弟さんの後について行った。





「兄ちゃんの行方は俺たちでも分からない。電話は出ねぇし、おかしいと思って勤務先に電話をかけたら会社は辞めてるし・・・とは言えあの兄ちゃんのことだ、どうせいつも通りフラフラしてんだろ」


私が健人を探している経緯を話すと割とあっさり弟さんは自分の知ってる情報を話した。


「まぁ何となく地元の近くに住んでることはわかるけどな」

「え?なんでそう思うの?」

「あの兄ちゃんがいちいち地元の祭りの日にちなんて覚えてるわけないだろ?たまたまチラシでも目にして何となく行ったんだろうな」

「確かに・・・昔から思い立ったら即行動だよね」


「だから兄ちゃんを探すなんて無駄なことはやめた方がいいよ。会えたらラッキーくらいでいいじゃん。自分の兄ながら全く行動が読めないし」

「でも・・・私は健人ともう一度会ってーー」

「兄ちゃんの嫁になる・・・という事は俺の義姉になるということか〜・・・なら1個だけ助言をするよ。


兄ちゃんはなんだかんだ言って優しいからね。運命とかカッコつけながら多分、あんたに会うタイミングを見計らってるはず。

だからあんたは何もしなくてもいい。勝手に兄ちゃんが近寄ってきてくれるさ」

「そんな・・・確証ないよね」


「あるよ。俺も美奈子も兄ちゃんがいなかったら多分死んでたし。


兄ちゃんは昔から俺と妹にとって最高で最強のヒーローだからね」







結局、健人に自ら逢いに行くことは断念することになった。透くんの言うことが本当なら、きっと会えるよね。


あの日からほとんどわがままも言わず、自分で遊んだおもちゃはちゃんと片付けるようになった娘。


「いい子にしてたら、パパに会えるから!!」


こんなに無邪気で可愛い娘の期待を裏切ったら許さないんだからね!!








時はあっという間に過ぎ、去年健人と会った夏祭りの日がやってきた。

祭りは前夜祭、本祭、後夜祭の3日間開催される。

前夜祭では神輿を担いだ人達が街中を駆け回り、太鼓と鐘の音が鳴り響いている。

しかし健人の姿は見なかった。

本祭は祭り本番だけあって迫力のある喧嘩神輿やかけ回しと言った見所があり、人がすし詰めのようになっていた。健人を探す所ではない。人の波に酔ってフラフラしながら家に帰った。


そして今日が後夜祭。本祭も終わり、人の数もまばらで、ゆっくりと祭りを楽しみたい人はちょうどいい。


「パパどこかなー!」

「いるといいね」


 去年も健人と出会ったのは後夜祭だった。もし今日健人に会えないならば・・・諦めるしかない。

 まぁ透君の言った通り、会えればラッキー程度に思うことにしている。そもそも昔の初恋を引きづってる時点でかなり私は重い女なのだろう。

 健人に会えればラッキー。もし会えないのであれば、新たな恋を探すのも悪くないのかもしれない。


 娘には申し訳ないが・・・それは時間が解決してくれると願うばかりである。


 娘と手を繋いで人のまばらな神社の境内を歩く。いつもなら色とりどりの屋台を見て、あれ買ってこれ買ってと騒ぐ娘が、おとなしく周りをきょろきょろと見渡しながら歩いていた。


「芽衣。綿あめ買ってあげようか?」

「んーん。いらない」

「リンゴ飴とか?金魚すくいでもやる?」

「まだいいー」

「そ・・・そう?」


 神社の境内はかなり広く、娘と歩ききるにはかなりの時間がかかる。そしてたどり着いたのは本殿の大きな賽銭箱の前。

 私は財布から5円玉を二枚取り出す。


「芽衣もお願い事する?」

「するー!」


 五円玉を賽銭箱に投げて、芽衣が紐を揺らしてガランガランと鈴がなる。パンパンっと手を叩き、目を閉じて願い事をする。


(今日健人に出会えますように・・・)


 願い事を済ませて目を開けると、芽衣が私の手を引っ張る。


「いこーママ!」

「うん。・・・ってどこに行くの?」

「パパのとこー!今お願いしたから会えるよママ!」

「だといいね!」





 娘に手を引かれて歩いていると、いつの間にか人気のない場所に来てしまった。いつの間にか祭りの会場から出てしまっていたようだ。


「芽衣?お祭りの場所から離れちゃってるよ?戻ろう?」


 手を引く娘の体を抱き上げようとした瞬間。


「あれ?もしかして夏海?」


 と声をかけられる。健人の声とは違う事だけはわかる。

 テレビで流行っているようなマッシュルームカットを明るい茶色に染めた髪。左耳からは大きなピアスが二個ぶら下がっている。そんな今はやりの恰好をした男性が、目を細めて優しそうに笑う。

 

「えっと・・・どちら様でしょうか?」


 そもそも異性で私を下の名前で呼ぶ人は数少ない。多分昔の知り合いなのだろう。


「えー元恋人の顔を忘れるなんてひどいじゃん!俺だよ俺。竹下尚也だよ!」

「恋人なんていた覚えないけど?」

「つれないなぁ~。あれ?それ夏海の娘さん?結婚してんの?」


 娘は既に人見知りモードになっており、私の後ろに隠れていた。


「結婚はしてないよ。用がないならもう行っていいかな?」

「ええーせっかく会ったんだからさ一緒に祭り回ろうよ!」

「お断りよ。竹下君が昔、健人にしてた事・・・知ってるんだからね」


 小学生の頃の裏話をあっこから事細かに聞いた。もちろん健人に暴行を加えていた同級生からも話を聞いた。


 すべてはこの男の嫉妬と独占欲から始まったのだ。

 

 健人はいつも楽しそうに遊んでいた。スポーツだったり、虫取りだったり、魚釣りだったり、ただ走り回るだけだったり、ただただ自分のやりたいことを全力で楽しむ子供だった。

 そんな楽しそうな健人を見て、興味を示して子供が集まる。いつも健人の周りには人がいっぱいいた。

 そのくせ健人は子供のくせに周りに気を遣う。輪に入りたいけど入れない子の手を引っ張って仲間の輪に入れる。そんなことが当たり前のようにできる子供だったのだ。


 そんな人気者の健人が気に入らず、裏で健人をいじめていたのがこの竹下君だった。

 優しそうな見た目に反してかなり女癖が悪くて、自分が一番偉いと常に威張っていたい人だったらしい。親が地元で一番大きな会社の社長さんで、友達というより金で手下を複数雇っていたらしい。

 

 勝手に私と付き合っているという噂を垂れ流し、それを私には聞かれない様に裏で手を引いていて・・・私の名前を使って健人に暴力を働いていたらしい。


「ふーん。そうだ!夏海とその子を俺が養ってあげようか?」

「は?」

「母子家庭って大変でしょ?俺実は、先日親から会社を継いでさ~割と金持ちってわけ。だから愛人とその子を数人養うくらい余裕だし、夏海は美人だから俺の眼鏡に適うからさ~不自由はさせないよ?」


 こいつは一体何を言ってるのだろうか?理解が全くできず、少し思考がショートしてしまう。


「君も何でも欲しいもの買ってあげるよー。おもちゃも美味しい食べ物も、可愛い服だってなんでもね」


 私の後ろに隠れている娘に話しかける竹下君。


「・・・いらない」

「えー!欲がないんだね~えらいねー君は」


 そう言って竹下君が娘の頭に触れようとした瞬間。


「や!!」


 そう言って娘はどこかに走り出す。


「あっ!芽衣!待って!!」

「夏海」


 娘を追って走りだそうとした私の腕を掴む竹下君。


「離して!!芽衣を追いかけないと!」

「あんなガキの事どうでもいいじゃん。それより俺の愛人になってよ。不自由はさせないからさ」

「嫌よ!あなたみたいな人と関係を持つくらいなら一生独身でもいい!」

「はぁ~ショックだなー。まあいいや。どうせ一晩調教したらすぐに俺にケツを振る従順なメスになるし」

「何を言って・・・」

「今からお前を調教するって言ってんだよ。近くに俺のヤリ部屋があるし、そこで一晩ゆっくり話し合いでもしようか」

「嫌!!誰かー!!離して!!」

「無駄だよ。もう部下を呼んだから。すぐに迎えの車が来るし・・・」


 何とかしてもがくも、竹下君の力が思いのほか強く、ズルズルと少しずつ引きづられて行く。

 これから行われることに恐怖し、逃げられないことに絶望しかけた瞬間・・・




「パパ!!はやく!!」

「痛い痛い!!あぁ・・・俺の約束された敗北(ハゲ)の髪の毛がー!!」


 暗がりから聞こえるのは娘の声と・・・相も変わらず緊張感のかけらもない大好きな人の声。


「健人!!」


 私は叫んだ。その愛しい人の名前を。


「んあ?久川?」

「パパはやく!!」

「痛い痛い!!それは俺の髪の毛であってコントロールレバーでもなんでもない・・・わかった!走るから!走りますから!!」


 暗がりから輪郭が見えてくる。去年見た時はスーツ姿だったが、今はジーンズにでかでかと文字が書かれた白いTシャツ。あいも変わらず髪はくせっけが跳ね返っていて、その髪の毛を娘が必死に引っ張っていた。


「ぷっくく・・・何よそのTシャツの文字・・・」


 でかでかと書かれた文字は、I love summer festivals。


「夏祭りにぴったりなTシャツだろ?かっけーだろーって・・・もしかして逢瀬の最中だった?俺としたことがぬかった!芽衣ちゃんのことは俺に任せて・・・」

「違う!!助けて!!攫われそうなの!!」

「へ?」


 健人のマヌケな登場に呆けていたのか、竹下君の力が緩まった隙を見て、掴まれていた腕を振りほどいて健人の後ろに回り込んだ。


「健人・・・てめぇ・・・」

「ふぇ?何このイケメン。やだっ!?惚れちゃう」

「ふざけんな!!いつもいつもお前は俺の邪魔をする!!」


 眉間にしわを寄せて怒りをあらわにする竹下君。


(おい!誰だよあれ。お前のいい人じゃねえの?)

(違うよ!あれは竹下君だよ!竹下尚也君!)

(マジで!?なんで怒ってんの?俺まだ会ったばかりなんだけど?)

(それを説明するにはいろいろと時間がかかるから・・・)


「無視してんじゃねえぞ!!健人!!」

「あ~・・・久しぶりだな竹下!元気にしてたか!」

「そうじゃねえだろ!!・・・はぁ・・・お前のペースに付き合ってたら疲れるだけだな」


 竹下君の後ろに黒いバンが止まる。そしてその中から数人の男性が下りてくる。その男性たちは私たちを取り囲うように走り出す。


「昔のようにボコボコにして、夏海を奪い取ってやるよ」


 そう言ってニヤリと笑う竹下君。ジリジリと私たちを囲う人たちの距離が縮まっていく。


(ちょっと健人!どうするの!?このままだとバットエンドだよ!!)

(ふっ!俺はもうあの頃の俺じゃないのさ)

(え?)


 スゥっと健人は息を吸い込んだかと思うと・・・。


「おまわりさーん!!犯罪現場はこちらですー!!」


 と大声をあげる健人。因みに娘は健人の大声に反応して肩の上で楽しそうに笑っていた。


「祭りの喧騒でその程度の声が聞こえるわけないだろ。やれお前ら」


 グッっと周りにいた人たちが足で地面を踏み込もうとした瞬間。




「はーい!そこまでー。これ以上やるなら俺も手錠を使わざるを得なくなるぞー」


 竹下君の背後からそんな気の抜けた声がする。


「なっ!?お前は・・・」

「お前も変わらないな竹下。あの頃はイタズラ程度で済んだが・・・今やったらシャレにならんぞ?」

「風間君・・・?」


 健人と一番仲が良くて、いつも馬鹿コンビとして健人と一緒に暴れまわっていた風間君。

 現在は警官で、あっこの夫でもある。


「おお!!まさかこんなところに偶然警官で、俺の大親友の風太がいるとは!?」

「いるとは!?じゃねえよ!さっきまで一緒に祭りではしゃいでただろうが・・・さて、この状況を見て見過ごせるほど腐ってねえぞ俺は」

「お前も殺せば・・・」

「おいおい。俺を殺すとか本気で言ってる?公務執行妨害も付いちゃうけど?おとなしく署について来るなら、昔馴染みと言う事でお説教程度で済ましといてやるぞ?」

「ここまで来て引けるかよ!!お前ら!あいつから先に――」


 ぴ――――と風間君が笛を吹く。その音が鳴り響くと同時に、祭り会場の方から私服の警察官たちが飛び込んでくる。


「確保ーー!」

「いやいや!?俺じゃないから!!」

「幼女誘拐の疑いで――」

「ああ犯罪者顔をしてるけどそいつじゃないです」

「このイケメンフェイスの何処が犯罪者顔だ!!」


 健人が捕まりそうになりつつも、竹下君とその一味は警察官たちに抑えられ、どこかに連れ去られていた。


「わりぃな久川。ちょっと健人を借りてたわ。いろいろと話したいこともあったしな」

「ううん。別に健人が私の物ってわけじゃないから」

「そうだよな。これから久川の物になるんだもんな。結婚式は呼んでくれよ」


 そうニヤリと笑うと、健人の元に歩いて行き、お互い無言で拳と拳を合わせて・・・風間君は去っていった。


「あーそのー・・・ぐ・・偶然だな久川!」


 少し顔を赤くして、目線も合わせずにそう言う健人。


 そんな健人を見た瞬間。ふと昔の事を思い出した。




 幼い頃、人ごみに流されて両親とはぐれてしまい、人気のない暗闇でただ泣くことしかできなかった自分。

 そんな私に声をかけてくれたのが・・・健人だった。


『ぐ・・・偶然だな久川!!』

『ふぇぇぇ・・・健・・・人・・・?』

『俺も親とはぐれちゃってさ!それにせっかくの祭りなのに泣いてたらもったいないだろ?』

『でも・・・パパとママが・・・うぅぅ・・・』

『ほ・・・ほら!リンゴ飴買ってやるからさ!それに・・・俺が一緒に探してやるから!行こう!』


 そう言って健人が私の手を取り、リンゴ飴の屋台のおじさんにお金が足りないと言われたけど、小さいリンゴ飴をせびって私に渡してくれた。


 そんな優しい彼と馬鹿なやり取りで盛り上がったあの日の夏祭り。


 そっか・・・あの日私は・・・健人のことが好きになったんだな。




「そうだね健人。これって運命かもね」


 私はあざとくそう言う。


「ああ。そうだな・・・神様にこんなことされたら仕方ねぇよなー」

「そうだねー・・・」


 そして健人は、何気なく言った。



「俺達結婚するか」



 その言葉に、色々抱えてきた思いが涙となって溢れてきて・・・。


「ああ~!!ママを泣かせた!!」

「痛い痛い!!めいちゃん!?若ハゲになっちゃう!俺、若くして死滅した毛根の悩み抱えちゃうから!!」

「ママにゴメンナサイして!!」

「はい!!ひさ・・・夏海!!泣くなよ!リンゴ飴買ってあげるからさ」

「ぷっ・・・ふふふ。一番大きいのじゃないと許さないから」

「任せとけ!!めいちゃんもいる?」

「いるー!わたーめも!!」

「任せとけー!それじゃあ行こうか」


 そう言って健人が手を私に差し出す。私はその手を取り、健人と手を繋いで歩く。


「健人」

「ん?」

「不束者ですが、末永くよろしくお願いします」

「おう。絶対幸せにしてやるから覚悟しとけ」


 そう言って健人は朗らかに笑った。







 後日譚。

 健人は大企業に就職したものの、かなり労働環境がブラックだったようで、仕事を続けるか死ぬかの二択まで精神的に追い込まれたそうだ。しかしあの祭りで気持ちを切り替えた健人は、その後会社を辞めて行政書士の資格を取り、個人事業を開始。地元近くに事務所兼自宅を借りて、下積みを開始。

 私はやっていた仕事を辞めて、健人の秘書として一緒に働くこととなった。


 竹下君はあの一件以来社長の座を降ろされるどころか、会社自体を首になり、今どうなっているのかは知らない。というか興味がなかった。


 一番問題なのは・・・芽衣の事だ。

 娘は小学生に上がったころから健人の事をパパと呼ぶのを止めた。そのことに涙を流して転がり回って嘆いていた健人だったが、私は別の不安があった。


 なにせ芽衣は、健人さんと呼ぶようになり、事あるごとに健人に抱き着き、中学に上がってもなお一緒に風呂に入ろうとする。

 一応健人とは夜の営みはしつつも、子供を作るのは芽衣が高校を卒業してからにしようと約束した。血縁がうんぬんで芽衣に嫌な思いをしてほしくないと健人が考えたからだった。





 事件は芽衣の16歳の誕生日の日に起きた。


「ねぇ健人さん!私大きくなった?」

「ん?大きくなったな!芽衣ちゃんが俺と出会った時はこんくらい小さかったからな!!」


 そう言って人差し指と親指で大きさを表す。


「なにそれ~!生まれたばかりでもそんなに小さくないよ!」

「はっはっは!」

「じゃあ健人さん!約束守ってね!」

「約束?」

「うん!『大きくなったらパパのお嫁さんになる!』って言った時、『芽衣ちゃんが大きくなってもパパの事が好きだったらな!』って約束したよね!」

「「え?」」

「ママと別れて私と結婚してね健人さん!!これ離婚届と婚姻届け!!」


 そういって二枚の紙を取り出す娘。健人は冷や汗をかき、私は・・・。


「何言ってるの!!健人は私の・・・ママの物なんだから!!他の子にしなさい!!」

「やだやだ!!ママばっかりズルイ!!私も健人さんとイチャイチャしたいもん!!」

「駄目!!娘といえどこれだけは譲れないから!」

「ママはもう健人さんを堪能したでしょ!!次は私の番!!」

「芽衣の番なんてありません~その辺の男の子で我慢しなさい!」

「ガキに興味ないもん!!」

「貴方もまだまだガキでしょ!!」


「はは・・・は・・・よーしパパは唐突に仕事したくなったぞー!さすがに親子丼はパパもドン引きだし・・・」

「健人?」

「健人さん?」


 娘と二人でガシッ健人の腕をつかむ。


「「どっちを愛してるの!!」」



「勘弁してくれー!!」


 

           

―――――――――――――――――――――完―――――――――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 現実恋愛ジャンルの女で、驚いたときにふぇぇとか言うのはキモすぎるw
[一言] フィクションなんや、、美味しく頂いてもええんやで?
[良い点] 心がホッこりとするような良いお話でした! アフター読んで見たい [一言] 法律とか気にせず好きに書いていいと思う! そういうのも小説の醍醐味です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ