〜焦り〜
あれからいつも通りと言っていい日常を送っている。特に変わり映えしないが、充実した毎日だ。俺も5歳になり、少しだけ背が伸びた。
そんな普通の日々の中、いつもと違うニュースが我が家に届いた。
「グレン、お前に弟か妹ができるぞ」
そんな父の唐突な言葉にびっくりしたが、とても嬉しかった。日頃から欲しいと思っていたわけではないが、兄になると聞かされれば、嬉しくなるというものだ。
「兄として恥ずかしくない男になります!」
そう言うと母は嬉しそうな顔をしてこういった。
「頼りにしてるね、お兄ちゃん」
俺がますます頑張ろうと思うことになった出来事だった。
俺が兄になるのは、6歳になった頃だ。
そして6歳は父が『心魂来臨』を使えるようになった歳だ。
兄になる前に俺もできるようになろう、とそう決意した。
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翌日、家を出た俺は隣の家の親友とも言える、幼馴染の元へと向かった。今日の鍛錬の約束を断ろうと思ったのだ。
俺を出迎えてくれたのは、エメリアの家の執事であった。まだ朝早いということもあり、まだ寝ているとのことだったので、要件だけを伝え、失礼することした。
俺はこのままいつもの鍛錬場へ一人で向かうことにした。
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ーー俺はいつもの子供だけが通れるような穴をくぐってから、しばらく歩いている、それも結構な時間だ。10分で着ける距離を1時間は歩いているか。このことから導き出される答えは一つ。
「迷ったな・・・」
なんだかんだでいつも後ろを歩いていたから迷ってしまったのだろうか。何か嫌な雰囲気だ。後悔しても遅いか。できるだけきた道を戻ってみよう。そう考えた矢先、唸り声が聞こえた。
「グルルルル・・・」と喉から鳴らしたような、不快な音が耳に入ってくる。今日は晴れているといっても、木が生い茂っている森の中だ、視界はそれほど良くはない。
俺は警戒しながら周りに注意を向ける。
そうしていると俺の真後ろから「ガサガサっ」という音と共に咆哮が聞こえた。
「グルルルァァァァ!!」
反応し、焦って振り向いて木剣を振り抜いた俺だったが、その焦りも虚しく。次の瞬間には右腕に鋭い痛みが走った。
こんにちは、今日の夜また更新します。