〜グレンvsヴェルダ〜
ガキンガキンガキン、と空中での剣戟の音が響いている。ヴェルダの大斧の威力は高い。だが・・・
グレンは悪魔公ヴェルダを相手に何一つ焦っていなかった。
現在、奴の『魔装幻界』とやらを相手に『龍紋眼』と純粋に上がった『心魂』の力だけで戦っているのだ。
ヴェルダは確かに強い。半年前の時点の俺なら『龍の心臓』を使わなければ勝てない相手だろう。今は相手に隠されている力がないか確認しながら、互角以上の戦いをしている。
グレンはこの『悪魔公』ヴェルダを相手に実践訓練をしていた。
悪魔公の強さをこの身に焼き付けようと思ったからだ。
戦った結果、違和感を感じられずにはいられなかった。
戦う前、こいつは自分を「戦闘タイプ」と言った。
こいつは『悪魔公』で、自分は『戦闘タイプ』だと言ったのだ。
いくら俺が強くなったとは言っても『あの悪魔』を基準に考えれば、強さがおかしい。
半年前、あの悪魔には『龍の心臓』を使って勝てるか勝てないか、という印象だった。
だが半年前この悪魔公に会っていると仮定したら、『龍の心臓』を使えば勝てるだろう。
悪魔より悪魔公が弱いなんてこと、考えられるのか?
「悪魔公ヴェルダが特別弱い」か、「あの悪魔が特別強い」のどちらかになるか。
剣戟が続くにつれて、ヴェルダの息が上がってきた。
一旦距離を離して質問してみる。
「聞きたいんだが、『悪魔公』より強い『悪魔』っているのか?」
『はぁはぁはぁ・・・。ふぅ・・・。
その質問の答えは、基本的にいない、だ。
上級悪魔と下級悪魔公で戦闘能力だけ見たら、上級悪魔の方が強いってことは稀にあるとは思うが、基本的にはない。
悪魔と悪魔公には生まれからして明確に差があるからな。
例えば俺と上級悪魔が戦った場合ほぼ100%俺が勝つ。よほど相性が悪くない限りはな。
俺は戦闘タイプだからな!』
「・・・わかった。じゃあもう一つ。
今のお前はそれで全力なのか?」
・・・一瞬の静寂。そして
『・・・あ゛ぁ?
まさか悪魔公の俺様が弱えって言いてえのか・・・?』
どうやら怒らせてしまったらしい。純粋な疑問だったんだがな。
「まだなにかあるなら出してくれ。強い相手と戦うのは楽しい。」
『そういう意味かよ!それなら俺も同意だ!全力で行くぜぇ!「肥大化」』
そうするとヴェルダの体がひとまわり大きくなった。そして大斧もそれに合わせてひとまわり大きくなった。
これはパワーが上がったのか?
臆さず打ち込む。ガキンガキンと剣と大斧がぶつかる音がする。確かに先ほどよりパワーは上がった。
だがそれだけだ。多少余裕は無くなったが、対応できない強さじゃあない。そう考えていると、
『岩石結合』
グレンの周りの空中全方向に、人と同じぐらいの岩が大量に形成され、全方位からグレンを中心に勢い良く集まってくる。
・・・これは中々厄介な攻撃だな。
グレンは瞬間的に背中に纏う炎と氷の力を引き出して掌の上で混ぜ合わせる。
『氷炎爆』
グレンの掌を中心として大きな爆発が起こる。飛んできていた岩石が散り散りになっていく。
中々の土系の魔法だ。だが・・・それだけだ。
残念に思う。ヴェルダの顔は唖然としている。これ以上は何もなさそうだ。
それを見た俺は肉薄し、また剣を交える。俺は攻めながらこう言った。
「俺が戦ったことのある中級悪魔はお前より強かったぞ」
『なんだと・・・!!あいつ如きが俺より強いだと・・・!!
そんなふざけたことが・・・あるかっ!!!』
そう言いながらヴェルダは大斧を、両手持ちの最大の力で振り下ろす。
龍紋眼にはもう全てが見えている。・・・はっきり言って鈍すぎるな。
「終わりだ」
俺は大斧の振り下ろしよりも速く黒剣を横に振り抜きながらヴェルダの後ろに回り込んだ。
次の瞬間、ヴェルダの上半身と下半身はお別れした。
『・・・がはっ・・・・!!・・・み、みごとだ・・・・!!』
その言葉を残し、下に落下していった。
俺はこの『悪魔公』よりも強かった『悪魔』を思い出しながら、その光景目に納め、また街へと急ぐのだった。
今日はここまでにします。また明日更新します。




