〜エメリアvsラスティ〜
キィン・・・キィン・・・キィン・・・『風の心魂使い』と『中級悪魔』は激しく剣の交差を繰り返していた。
エメリアはラスティに対して後手に回らなかった。スピードを活かし、一撃ごとに距離を取っている。
『魔装幻界』を纏って爪が凶器と化している悪魔に対して常にスピードで常に後手に回らせているのだ。あの時は『転移』からの一撃でやられている。
今も攻勢に出てはいるが、常に『転移』には警戒しているのだ。
付かず離れずの距離保って戦っている分には、自分に危険は少ない。
だが相手に傷を負わせるためには、もう一歩踏み込まなくてはならない。
自分が傷つく覚悟で、もう一歩相手の懐に入らなければ深手は負わせられない。
ここまでの攻防で、わかったことは2つ。
スピードではおそらく勝っている。こちらが攻めてばかりのため、正確にはわからないが、斬撃に対応するのがなかなか大変そうに見える。
そして単純な膂力は向こうが上。おそらく剣の切れ味込みの攻撃力では最高に都合よく見積もって互角。だがこれに関しては向こうが上だと思った方がいい。しかも向こうは鎧を纏っているため、防御力が高い。
こちらは大した防御もない。一撃いいのを貰えば終わりだ。
逆に向こうには攻撃は何度か入っているが、現状全て浅い。切り傷程度だ。
結論、スピードを生かしたインファイトで、防御を崩すしかない。
相応の危険が伴うが、仕方ない。
今までの攻撃の応酬をエメリアから一度止める。
『おや?もうお仕舞いですか?』
「そんなわけないでしょう、この戦い方では埒が明かないと思っただけです」
『・・・私としてはこのままゆったりやって貰えばよかったんですがねぇ』
「それでは私がダメなのです。あなたに勝つために半年間努力をしたのですから」
『それはそれは光栄でございます、では私も受けて立つとしましょうか。「漆黒の剣」』
今までのラスティの武器であった黒く鋭い爪が消え、真っ黒な二剣が彼の手に現れた。
黒く美しく輝く剣からはそれ自体が魂を持つようなオーラが漂っている。
あの剣はやばそうだ。エメリアはそう確信した。
「・・・ここにきて奥の手があるなんてね。聞いてないわよ」
『奥の手とはとっておくものなのですよ。すぐに見せてはならない。それでこそ奥の手と呼べるのです』
言葉遊びをする余裕が相手にはある。自分にはない。あの剣が現れてからとてつもなく嫌な予感がする。
が、ここで引くわけにはいかない。私がここで中級悪魔を止める。
「いきますわ!『風雅絶高』」
風王剣を前に突き出し、最高スピードで突撃する、二代目白狐龍相手に磨いた、今のエメリアの最高の攻撃力の技。
「はあああぁぁぁぁぁーー!!!!!」
掛け声とともにエメリアのみが動く。ラスティはその場で右手の剣を上にあげ、迎撃の構えを見せる。
それを振り下ろした瞬間ーー衝突。
エメリアの全力の刺突に、ラスティの片手で振り下した黒剣がぶつかるギィイイインという激しい音が辺りに響く。
ぶつかり合いは互角。
が、互いにここからのプランがあった。
片手で勢いを殺したラスティは左手の黒剣を振り抜く。
それに対しエメリアはぶつかって押し切れないのを瞬時に判断し、剣をいなして、相手の振り下ろしている右手側に潜り込む。
結果ラスティの左手の黒剣の振り抜きは空振りに終わる。
そのままエメリアはラスティの後ろへ抜けて、そのまま振りかぶって上段からの振り下ろし。
ラスティは先程振り下ろした右手を、体勢を低くし、振り向きながらの横一文字。
剣が二回目の衝突。今度ははっきりと優劣がついた。
エメリアが衝撃に耐えられず吹き飛ばされた。やはりスピードを乗せない膂力勝負だと分が悪い。
吹き飛ばされ、地面に手をつき、一回転して体勢を立て直す。
視線を上げた先にはもうラスティはいなかった。
転移!!
後ろから腹を貫かれた記憶が蘇る。
確認する暇もなく即座に振り向き様に剣を振るった。
・・・が、それは空振りに終わる。
ーー瞬間、真後ろに殺気。
エメリアは体を強引にひねって剣を回避する。
そこまでで2人の『一合』が終わった。
『まさか今のを避けられるとは思いませんでしたよ』
「・・・前回と同じ、と見せかけてのさらに裏をかいてくるなんてね、驚いたわ」
エメリアはできる限り取り繕う。
今の『一合』でわかった。こっちにはもう全く余裕がない。
全力を出した。スピードはおそらく勝っている。だがそれだけだ。
力を全てのせた限界の刺突で、ただの片手の振り下ろしと互角。相手が剣一つならそれでもまだやりようはあるかもしれないが、相手は二剣。スピードを殺された瞬間にもう一撃飛んでくる。
さらに相手には『転移』という搦手がある。しかもこれで全力を出している素振りがない。
余裕がある相手を崩すのはさらに難しい。
悔しいがこの悪魔は想定より数倍は強い・・・!!
嫌な冷や汗が彼女の顔を流れていった。




