〜フッキ=アールスタン〜
ユーリとフッキ、そして集合した戦力は、迎え撃つはずの方向に急に現れた土壁を見て、話し合いをしていた。
フッキとユーリの選択は同じだった。
誰かしらの妨害という悪意によってこの壁は建てられたと考えられるので、壁のすぐ先には今逃げてきた人間がいるはず。真っ直ぐ壁までいって声をかけ、そこまで民がきていれば自分たちが指示を出し、迎えにいく。
魔物に背を負われているはずなので、向こう側は一刻を争う可能性もある。今から壁に向かって行き、できるだけ向こう側とコミュニケーションを取って民を保護する。
魔物の数を考えると、護衛だけで全部倒すのは難しいはず。
なのですでに左右どちらかに民を逃がしているパターンを考えてこちらも左右へと戦力を分けて迎えにいく。ユーリとフッキは中央まっすぐ向かい声をかけにいく。
その意見に異論はないようでそう決まった。
そうして中央、真っ直ぐへと向かうユーリとフッキは声をかけたのだ。
結果そこには護衛の人間と民がまだいて、なんとか接触に成功。
民を逃がす指示を与え、指示した壁の端へと迎えに走ったのだった。
土壁の端まではかなりの距離があった。30分ほど走らなければならないかなりの距離だ。
これが今作られたものなんて思えない。
その途中、ユーリは考えを巡らせていた。
こんなに大きくて広い壁を作れるのは相当な魔力がないと無理だ。相当に高位の魔法を使える人間が何かしらの目的のために出した。または・・・
『悪魔』
そんなワードが頭の中をよぎる。今は全く情報はないが、その可能性ももしかしたらあるかもしれない。
今のところは仮説でしかないので口には出さないようにしよう。
それでも駆けていくと、ようやく、壁の端が見えた。
壁の端へと先に送り出した人間達の姿はない。壁の向こう側まで行っているのだろう。
やっとのことで辿り着いたユーリとフッキたちは壁の向こう側を見て絶句した。
先に送り出した人たちが必死の思いで魔物と戦っている。
が、異常なほどの魔物の数が見えている。そして逃げてきた人々の顔には恐怖が浮かんでいる。
それも仕方ないことだろう。彼らの後ろには血だらけの人間の死体が多く転がっている。
中々グロテスクな光景になっている。
ユーリは考える。もう亡くなってしまった人も多い。
全ては助けられなかった。ここから犠牲をださないようにするにはどうしたらいいのか。
明らかにみんな恐怖に駆られ、冷静さを失っている。自分こそ先頭を走ろうとパニック状態だ。
自分たちのいうことを聞いてくれるとは思えない。
そうした考えはフッキが出した大声でかき消された。
「我が名はフッキ=アールスタン!!
前王ハック=アールスタンの息子である!!
一度王位を蹴って自分の夢に走った私には大層なことをいう資格はない。ここまでに亡くなってしまった人も多いだろう。
だがクーデターで即位した現王はこの危機に何もしなかった!それが間違っていることだけはわかる!
私は王家の生活に嫌気がさしてから、冒険者として腕を磨いてきた!
故にここからの民の命は私が預かろう!民も護衛もここまでよく頑張った!
ここから魔物は私が体を張って止める!もう誰も死なせない。
護衛の者は私とここに残ってもらう!生き残った民はベルーガの街まで走れ!!」
ユーリは驚きだった。元冒険者と聞いていたが、そんな過去があったとは。
両腕になった彼は相当に腕が立つ。ここであの魔物の群れを止めるつもりだろう。今生き残っている護衛と合流してここで食い止めようとしている。ユーリもここに参戦することにした。
「『剛力』のおっさん、王子だったのかよ!」
そんな声をあげたのは『雷光の槌』のクラネルだった。
後で聞いた話によると、彼は単身で冒険者Sランク、異名は『剛力』だそうだ。もちろん『心魂』使い。
同じSランク同士、面識があったらしい。
「わはは!もはや昔に捨てた地位よ!
だがそなたらがここにいるとは心強い!協力を頼むぞ!」
そうして、護衛の指揮は上がったのだった。
こんにちは。
今日も5話ほど更新します。




